キラー・シャーク 殺人鮫
<SHARKMAN>
05年 アメリカ映画(TV用) 93分

監督:マイケル・オブロウィッツ
製作総指揮:アヴィ・ラーナー
      他数名
出演:ウィリアム・フォーサイス(トム)
   ハンター・タイロ(アメリア)
   ジェフリー・コムズ(キング博士)
   アーサー・ロバーツ(ホイットニー社長)
   ヴェリザール・ビネヴ(ドクター・クラウス)
   エリゼ・ミューラー(ジェーン)
   G.R.ジョンソン(バーニー)
   アタナス・スレブレフ(エリック)
   リディ・デニアー(ドクター・メデベンコ)

(ストーリー)
息子を癌で亡くしたキング博士は、孤島の研究所で抗癌剤の研究に精を出していた。
ある日、製薬会社のメンバーが博士から新薬のプレゼンテーションを受ける為に、島に招待された。だが、そこで見せられたのは、サメと人間のハイブリット、シャークマンだった。「病気にかからない」と言われる、シュモクザメの遺伝子を人間に組み込み、癌にかからない新種の人間を誕生させたと言うのだ。
しかも、そのシャークマンは、元は博士の息子のポールなのだ。招待されたメンバーの一人である、科学者のアメリアはかつてポールと婚約していた事があり、これにはビックリするのだった。
「マッドサイエンティストに付き合っていられるか」と帰ろうとする一行だが、キング博士は傭兵部隊を使ってみんなを部屋に閉じ込めてしまう。そして、息子のポールに食わせようとするのだった。
同行していたIT部門の主任のトムがヒーロー志向のある男だった為、この窮地から脱出出来た一行。果たして、傭兵部隊やシャークマンがうろつく島から脱出する事が出来るのだろうか!

(感想)
いまだに粗製濫造されまくるサメ映画ですが、これは中々イカした一品でした。
今回は、リゾート地が舞台となる『ジョーズ』系ではなく、「サメの遺伝子がどうのこうの」といった話が絡み、特定の場所からの脱出行を描くという『ディープ・ブルー』系のストーリーです。
さらに、映画全般に、満遍なく突っ込みどころが入っているという、それは愉快な内容になっているんですよ。
まず、原題は『シャークマン』で、「人間とサメのハイブリッドが襲ってくる」というこの映画の内容をよく現していますし、その胡散臭いタイトルはジャンル映画ファンの興味を惹かずにはいられません。なのに、邦題は『キラー・シャーク』という、見る人に「もうサメ映画のバッタ物はいいよ」と思わせずにはいられないタイトルを採用しているという点にまずは乾杯したい(何故?・笑)。
そして、製作総指揮にヌー・イメージの重鎮アヴィ・ラーナーが名を連ねていたり、監督が『撃鉄』『沈黙の標的』でお馴染みのマイケル・オブロウィッツであり、悪役であるマッド・サイエンティストを演じるのがジェフリー・コムズです。
もう、この時点で「映画を見る前から満足」みたいなものなんですが、本編もまたいいんですよ。まるでコメディ映画みたいな展開が普通に出てきたりしますし、しかもそれをいたって真面目に撮ってるんですよね。もう、こういうのが好きな人にはたまらない演出ですね。「ジス・イズ・Bムービー!」と叫びたくなってきます。
例えば、「カメラがサメの視点で、犠牲者となるカップルに近づく」という、この手の映画でお馴染みのシーンが出て来るんですけど、このシャークマンは孤島にある研究所で飼育されてるもので、海に出たりはしないはずなんですけど、じゃあ、ここで食われてるカップルは何者なんだと。もしかしたら、ここは本編とは全く関係の無い、ただのサメにカップルが襲われてるシーンじゃないのだろうかと。しかもこれが劇中2回出て来る所が凄い。
あと、一行が島から逃げる為に、ボートやヘリなどの乗り物を奪おうとするんですが、敵を倒さずに強引に乗って行こうとする為に、敵に銃撃されて出発する前に破壊されたりするんですよ。文章で書くと別に面白く無いですけど、これがオブロウィッツの演出にかかると、かなり奇天烈なシーンになるんですよね。
また、仲間の一人がジープを奪うのに成功するんですけど、他の仲間に呼び止められて、よそ見した隙に、木に激突しておしゃかにしたシーンにはたまげましたね。もう、こいつらが劇中で乗り物に乗ると、それは例外なくぶっ壊れるんですよ。徹底してますなぁ。

映画の内容的に、登場人物がどんどんシャークマンに殺されていく事になるんですが、「どういう状況で死ぬか」というのも中々愉快でしたね。
突如として全身の痒みを訴え出した仲間が、みんなの制止を振り切って川に飛び込んで食われたりだとか、「傷の手当てをしよう」という事で研究所までみんなで戻っておいて、その仲間を外に放っぽっておいたものだから追いついてきたシャークマンに食われたりだとか。何なんだ、この適当さは(笑)。

そんな中、この映画で最も凄い所は、ヒーロー的活躍をして一行をリードする主人公が、「IT部門主任」という役職の、極めてメタボリックな体型の中年オヤジだという所ですよ。どう見ても強そうに見えないのに、敵を次々と葬って行くという、歴戦の勇士みたいな活躍っぷりをするんですけど、どんなに活躍しようが、決してカッコ良く見えないという、この絶妙な味。
でも、「こんな見た目のオヤジでも主人公になれるかもしれない!」というファンタジックさがあっていいじゃないですか。この映画の世界では「銃撃」もITの事業に含まれてるのかもしれないと脳内補完すれば、戦闘力の高さにも納得出来るというものですし。

と言う訳で、くだらなくも楽しい映画でした。こういう、清く正しいB級映画というのはいいですね。