スラッグス
<SLUGS, THE MOVIE>
87年 アメリカ・スペイン合作映画 91分

監督・製作・脚本:J・P・サイモン
原作:ショーン・ハトスン
出演:マイケル・ガーフィールド(マイク・ブレイディ)
   キム・テリー(キム・ブレイディ)
   フィリップ・マクヘイル(ドン・パーマー)
   コンチャ・キュートス(マリア)
   ジョン・バッタグリア(シェリフ)
   アンディ・アルサップ(ドブス保安官)
   エミリオ・リンダー(デイブ・ワトソン)
   アリシア・モロ(モーリーン・ワトソン)
   スタン・シュワルツ(ロン・ベル)
   サンティアゴ・アルバレス(ジョン・フォリー先生)
   クリス・マン(ボビー)
   マニュエル・デ・ブラス(市長)

(あらすじ)
アメリカはウェイン郡で、有毒廃棄物が原因で巨大化&凶暴化したナメクジが大量発生した。ナメクジ軍団は次々殺人を行うが、食べ尽くして損壊した死体は残すものの、その証拠を一切残さずに立ち去っている為、町のシェリフはこの謎の連続殺人事件にお手上げ状態だった。
だが、衛生局員のマイクと清掃監視員のドンが事件の真相にいち早く気付いた。すでに下水もナメクジに汚染されてる状況になりつつあるため、市長に下水の封鎖をお願いに行くが、頭がおかしくなったと思われ、相手にされないのだった。
そこで、生物教師のジョンが開発した「ナメクジを爆破させる化学薬品」を下水に撒きに行くのだった。

(感想)
ナメクジの大群が人を襲う映画です。内容は、襲ってくる対象がナメックという点以外は、よくある動物パニック物の展開とほとんど変わりません。
ナメクジですから、当然、動きは遅いです。なので「逃げても逃げても追ってくる」というタイプの恐怖は無いんですが、その見た目の気持ち悪さは、もう、見てて嫌な気分になってくるぐらいですね。一匹でも充分気持ち悪いのに、それが何十、何百といっぺんに出てくるんですから。

さて。見た目は気持ち悪いものの、なんでそんな動きのトロい奴に人が何人も殺されたりするんだろう?と疑問に思う方もいるかもしれません。では、どうやって人を殺しているのかと言いますと、「気づいたらナメクジに集られていた」という状況となり、そのまま食い殺される事となるんです。
・・・まあ、この辺は深く突っ込まないでやるのが礼儀でしょう(笑)。

ちなみに、映画の前半では、主人公が「一連の事件の犯人はナメクジなのでは?」というのに気付いていく描写と平行して、人々がそのナメクジに犠牲になっていく様が描かれていきます。で、ここで犠牲になる人達の「殺害描写」が結構、凝ってて面白かったです。
まず、家の温室に入った爺さんが、手袋をはめた所、その手袋の中に潜んでいたナメクジに噛まれるという事態が起こります。その後爺さんは、自ら倒した棚の下敷きになったり、手斧で手首を切り落としたりと、孤軍奮闘をおっ始めてしまいます。いやぁ、ここは凄いシーンでしたねぇ。ナメクジ入り手袋をはめただけでここまで騒ぎが大きくなるなんて(笑)。しかも最終的には温室が大爆発しますからね。いや、冗談じゃなしに。とりあえず、このシーンを見て、私は「素晴らしい映画だ!」と、この映画を認めましたよ。

次は、『13金』シリーズなどでよく見かけるエロカップルが犠牲になるんですが、ベッド上で行われるそのエロ行為でモザイクがかかってました。ポルノ映画じゃないんで、そういうモザイクが必要な箇所はもともと映さないようにする映画が多いと思うんですが、「やり過ぎる」のが好きな監督なんだろうか。
で、エロ行為が終わって、女がベッドから降りたら、何と、辺り一面がナメクジだらけになっていて、すっぽんぽんのままナメクジに集られて死にます。ちょっと、『怒霊界エニグマ』を思い出してしまいました。ちなみに、男の方もすっぽんぽんのまま窓から逃走しようとしますが、失敗して床に落ちて(この間、モザイクが大活躍します)、ナメクジの餌食となります。
このシーンを見てると、“ナメクジに食い殺される2人が可哀相”というより、“こんなシーンを演じてる2人が気の毒”という気分になってきますね。
ちなみに、「何でナメクジ達はベッドの上まで上がってこなかったんだろう」という疑問も湧いてきますが、多分、二人に遠慮しての事なんでしょう。ナメクジ的にも「せっかく楽しんでるんだから、邪魔しちゃ悪い」というのがあったに違いない。

また、「もし、このナメクジを誤って食べてしまったら、果たしてどうなるのか?」という誰しもが疑問に思う点に、この映画はしっかり応えてくれます。何と、ナメクジに寄生している虫が体内で大量発生し、半日ほどで「体内で爆発したかのように飛び出してくる」という事態となります。
高級そうなレストランで食事中の男が、顔面から寄生虫をほとばしらせながら絶命するというシーンが出て来るんですが、当人はもとより、付近で食事をしていた方々も不運としか言いようがないですな。

こういった、かなり力の入ったシーンを挟みつつ、“衛生局員が「水道管がナメクジに汚染されてる」と言ってるのに、「休暇をとれ」とのたまう水道局局長”などの愉快なキャラも出しつつ、最終的には下水に「水に反応して爆発する薬品」を流してナメクジ一掃作戦を始めます。
どう考えても無茶な作戦ですが、予想通り、そこかしこで大爆発が発生。町中のマンホールのフタが大爆破で吹っ飛んだり、中には建物が吹っ飛んだりと、いわゆる「爆破オチ」という締め。どう見ても死人が出てそうな大惨事ですが、映画は「これでナメクジは全滅だ。めでたしめでたし」的に終了します。
まあ、「ナメクジの大群が人を襲う映画」なんてものを撮るのなら、やっぱりこれぐらいはやってくれないと、ねえ。

ちなみに、もはや言うまでもない事かもしれないですが、ラストショットは「一匹生き残ったナメクジのアップ」です。