スネークヘッドテラー
<SNEAKHEAD TERROR>
04年 カナダ映画 92分

監督・製作:ポール・ジラー
出演:ブルース・ボックスライトナー(パトリック・ジェームズ保安官)
   キャロル・アルト(ロリ・デール)
   ケラン・シモンズ(アンバー・ジェームズ)
   ウィリアム・B・デイビス(ジェンキンス博士)
   ジュリアナ・ウィンブレス(ジャガー)
   ライアン・マクドネル(ルーク)
   チャド・クロウチャック(クレイグ)
   マシュー・マッコール(ジェームズ)
   ブロ・ギルバート(リース巡査)
   アリステア・エイベル(新聞記者サミー)
   ゲイリー・ジョーンズ(コリン・ジェンキンス)

(あらすじ)
豊かな自然に囲まれた風光明媚なリゾート地だったカルタス湖だが、2年前のある事件以来、海水浴客も釣り人も訪れない、寂れた町になってしまった。その事件とは、大量発生した雷魚を駆除する為に政府が毒薬を湖に流し、結果として湖の生物が死に絶えてしまった事だった。

だが、最近ようやく客足の戻りつつある兆しを見せ始めていた。
そんな折り、湖周辺で何かの生き物に襲われたと思しき死体が見つかった。どうやら、湖に何か凶暴な生き物が現れたらしいのだ。
保安官のパトリックは、淡水に棲む生き物に詳しい生物学者の協力を仰ぎ、謎の生き物の正体を探ろうとする。そして、湖には何らかの理由で巨大化した雷魚が再び生息している事が判明するのだった。

一方、パトリックの巨乳の娘のアンバーの恋人が雷魚に食い殺される事件が起き、アンバーは友人達とボートで雷魚狩りに出発する。だが、飢えた巨大雷魚の群れは、イキがった若者ではどうする事も出来ない程の驚異的存在だった。友人や、巻き添えのハンター2名といった犠牲を出しながら、何とか離れ小島に逃げ着いたアンバーと生き残った友人達。だが、陸上を移動出来る能力のある雷魚は、アンバー達を追って次々と上陸してくる。
パトリックと生物学者のロリは、ショットガンや放電銃を持ち、アンバーの後を追って島にやってくるのだった。

(感想)
『スネークヘッドテラー』というタイトルから、ヘビが襲ってくる映画なのかと思ったら、雷魚が襲ってくる映画でした。どうやら、雷魚の事をスネークヘッドと向こうでは呼ぶらしいですね。

観光地だった湖の町に雷魚騒ぎが起こる、というストーリーで、前半は『ジョーズ』のサメを雷魚に、舞台を海から湖に変えただけという、何のオリジナリティも無い展開を見せてきます。当然、「危険だから湖を閉鎖したい」という主人公の保安官の主張は、「町の財政状況を考えろ」という町長に退けられる事となります。
もう、21世紀なんですから、そろそろこのパターンは終わりにしたらどうなんだろうかと思うんですけどね。せっかく、「襲ってくるのが雷魚」という、今までに無いパターンを持って来たのに、ストーリー自体が今までと一緒では意味が無いではないか。
なので、序盤のストーリーの興味は「雷魚学者はいつ出てくるんだ?」という点ぐらいでしたね(でも、現れたのは雷魚専門ではなく、湖の生き物全般に詳しい生物学者で、しかも、最後まで「生け捕り」を主張しませんでした)。

ですがこの映画、次第に『ジョーズ』他、水辺を舞台とした動物パニック映画群とは全然違う展開を見せていく事となるんです。
まず、この雷魚という奴らは、なんと陸上に上がる事が可能なんです。『殺人魚フライングキラー』みたいに空を飛んでくるわけではなく、地面をヒレを使って這い進んでくるんです。
これは、映画オリジナルの設定ではなく、もともと雷魚とはそういうものらしいんですが、その能力にプラスして、映画の雷魚には「巨大化&凶暴化している」という要素が加わっています。攻撃力も相当なもので、一噛みで人間の腕や足を食いちぎったりもするんです。
そして、そんな恐ろしい連中が群れをなして、水中だけでなく、陸上でも襲ってくるわけですよ。これはなかなか恐ろしかったですね。サメ映画では陸上は安全地帯となりますが、この映画では陸も危険なんです(まあ、サメも後に陸上どころか空にも進出する事になるんですが)。
そして、この雷魚の造形がやたら不気味なんですよね。ゴツゴツとしていながらもヌメヌメとした感じで、元のサイズでも十分不気味なんじゃないかと思わせるような外見です。そんなのが巨大化した姿は、生理的嫌悪感もたっぷり。夜中の道路に群れで上がって来たりする姿はまさに悪夢的でしたね(ヘッドライトに浮かび上がる姿の不気味だったこと)。
デカいと言っても、ワニなんかと比べれば十分小型ですし、陸上での移動スピードは肥えた豚よりも遅そうなほどスローリーです。なので、一見すると簡単に逃げ切れそうな感じがするんですが、そう簡単にはいかないんですよね。「気付いたら囲まれていた!」なんて状況になったりとかするわけです。
終盤は離れ小島にて、地上に上がって来た雷魚の群れから森の中を逃げる!家の中に閉じこもる!という展開になるんですが、この地上雷魚の、「ゆっくり」「大量」「人をとって食らう」という性質、まるでゾンビみたいなんですよね。
途中までは『ジョーズ』っぽかったり、『ピラニア』のようだったりした映画ですが、次第にその凶暴さと食欲から『デッドリー・スポーン』を思い出させ、最後にはゾンビ映画風味になってくるとは。これは、動物パニック映画よりも、ホラー映画に近いような雰囲気を感じさせる映画ですね。

その雰囲気はいいんですが、雷魚に襲われる人々にムカつく奴が多いというのはちょっと困ってしまいました。特に、主人公の娘なんて、襲われて死にそうになってるのが完全に自業自得なものだから、「むしろ食われろ」とか思ってしまい、「襲われる恐怖感」というのが見てて半減してるように感じてしまうんですよね。
さらに、コイツは雷魚に腕を噛まれるシーンがあるんですが、この手の映画では、クリーチャーだろうが猛獣だろうが関係なく、「相手が主役級の女性の場合は手加減をしなければならない」という決まりがある為、ちょこっと傷をつけただけで終わりですよ。さっきは釣り人の足を豪快に食いちぎってたのに。 まあ、コイツが死なないのは分かりきってますが、一緒にいる友人達は手加減の対象外なので、終盤の雷魚の群れの襲撃シーンに恐怖感を出す事には成功していましたね。

ちなみに、犠牲者の死因を教えてくれる検視官が出てくるんですが、演じてる役者が「どこかで見たような顔だな」と思っていたら、『X−ファイル』の肺ガン男でお馴染みのウィリアム・B・デイビスでした。タバコを吸ってなかったんで気づかなかったです。ついに禁煙したんだろうか(笑)。もちろん、この人が演じるからにはただの検視官では終わりません。当然のように事件に関わりをもってた事が後に判明する事となります。