監督:ブライアン・クライド
製作総指揮:ロジャー・コーマン
出演:ブラッド・ジョンソン(スコット・ケンジー教授)
ビアンカ・ローソン(カーラ)
ジョン・コルトン(ジェイク)
メアリー・アレクサンドラ・スティーフヴェイター(アレクサンドラ・スティーブンス)
ジョシュ・ケリー(ライアン)
ケリー・マクギリス(ティム・タフト)
(感想)
ワニの怪物が人々を食いまくるという映画です。そして、このワニは、また例によって遺伝子操作云々が元で誕生した、その名も“スーパーゲーター”という、見るからに怪物といった感じの、恐ろしげな奴です。その造形は、恐竜、もしくはドラゴンっぽい感じで、もはや全くワニに見えません。
そして、ワニ映画だとだいたい水辺が舞台になるんですが、こちらはスーパーゲーターだからという事なのか、基本的には陸上を走り回ってるんですよね。それも、かなりのスピードで(時々水中にいる事もありますが)。
原題の『スーパーゲーター』というタイトルも、何か珍しくて面白いと思うんですけど、こんな奴が出てくるんじゃ、『ダイナソーフィールド』という、恐竜が出てくる事を連想させる邦題で正解だったなと思えてきます。
ちなみにこの邦題、“SATURIKUSHA”とかいう変なサブタイトルが付けられてて何だろうと思ったら、『クローバーフィールド』をもじったタイトルだったんですね。
さて。この映画で主人公達に襲い掛かる危機が「スーパーゲーターの襲撃」というモンスターパニックの面だけではなく、「今にも火山が噴火するかもしれない!」という、災害パニックの要素も入れてきているんです。まさに、パニック映画のハイブリッドですよ。「きっと後半では、溶岩とスーパーゲーターの2段攻撃が出てきて、登場人物達をそれはそれは苦しめるに違いない」と期待させてくれます。そして、「もしかしたら、スーパーゲーターを溶岩で倒すなんて事になるのかも!」と、色々と想像させてくれるんですが、結局、「噴火するかと思ったが、土壇場で沈静化して、噴火しなかった」という、壮絶なオチを放ってきました。
いやぁ、これは驚きましたね。これこそ本当のどんでん返しですよ。「何の為に火山のエピソードが入れられてるんだよ」と突っ込まずにはいられません。
一応、ラストショットが溶岩の資料映像だったんで、もしかしたら、最終的に噴火はしたという事なのかもしれないんですが、映画本編が終わってから噴火しても何の意味もないですからね。
でも、こんな、どう考えても変としか思えない設定がそのまま生きて映画になっているというのが、もう面白くてしょうがないですね。もし、実際に劇中で噴火シーンがあった場合よりも、むしろこっちのパターンの方が面白いんじゃないかと思うぐらいです(どうせ、噴火したところで、予算的に『ダンテズピーク』辺りから流用してきた場面が出てくる事になるんでしょうし)。
そして、主人公が火山学者なんですが、噴火が無しになったおかげで、コイツの存在意義も微妙な立場になっている、というのもまた面白い点でした。そもそも、この人は劇中、仕事らしい仕事をしてない気がするんですよね。あれだけ「いつ噴火してもおかしくない!」と言っておきながら噴火しないし、助手が食われたというのにリアクションが妙に薄いしと、何かやっつけ仕事で主役を張ってるみたいです。
結局、映画本編はスーパーゲーターだけで引っ張っていかなきゃならない状況だったわけですが、コイツが結構頑張って喰ってくれてたんですよね。きっと、「噴火も無いし、主役は役立たずだから、お前だけで頑張ってくれ」という指示がなされていたに違いない(誰からだ)。
中でも、主要登場人物のうち、「コイツは絶対生還するタイプだな」と思っていた奴を、結構な時間をかけて、足から腕からむしゃむしゃ喰っていった時は、思わず「WOW!」と叫んでしまうところでした。
ですが、役立たずの火山学者も、最後は、ハンターと一緒に銃火器でスーパーゲーターに向かっていくという活躍シーンが用意されていて、ちょっとカッコよかったです。とどめの一発担当という、おいしいところも持っていきましたしね。
ところで、この映画を見ていて、ふと『ディノクロコ』という、ワニだか恐竜だかの怪物が人を襲う映画を思い出したんですが、実は、どちらもロジャー・コーマンが製作に関わってる映画なんですよね。この人、こういう映画好きですよねぇ。いや、この人の好みと言うより、我々がこういう映画を好んで見るんで、金になるから作ってるという事なんですかね。まあ何にしてもありがたいことですよ。