エア スコーピオン
<TAIL STING>
01年 アメリカ映画 93分

監督・共同製作:ポール・ウィン
出演:クリスチャン・スコット(ジャック・ラッセル機長)
   ローラ・パトニー(ジェニファー・レイン)
   リック・ケリー(スコット)
   タラ・プライス(コートニー)
   ガルシャン・グローヴァー(ヤッフィー)
   ガイ・ブラッカ(サダン)
   コンロイ・ブルックス(オマール)
   ジョージ・ホス(スチュアート博士)
   デイブ・マックラッケン(マッカーレン)
   トーマス・ダン(グンター)
   ジョー・ボンニー(フレッド)
   パトリック・オーサリバン(ジャック副長)
   レイ・デイビス(カーティス・バーナム)
   セス・マーストランド(ハイボール)
   ティモシー・グリフィン(ブリック)
   トニー・ダイヤモンド(ボブ・キャンベル)

(あらすじ)
ロサンゼルス行き1443便旅客機に大トラブルが起こった!何と、機内に巨大サソリが現われたのだ!次々と犠牲になっていく乗員・乗客達!
ジャック機長を始めとする、生き残った乗客達の運命はいかに!?

(感想)
B級モンスター映画ですが、舞台を飛行機内と限定し、狭い空間で怪物に襲われる恐怖を出そうとした野心作です。が、その内容は「これは、コメディ映画なのか?」と思ってしまうようなものとなっていました。
まず、敵となる巨大サソリが、昨今のCG製モンスター流行の中にあって、何とハリボテ製です。しかも「キューン!」とかわいい声で鳴き、「カサカサカサ」と変な音を立てて移動します。このチープさがまた実にいい味を出していましたねぇ。
このサソリは乗客の科学者の一団(科学者3人と護衛が一人)によって機内に持ち込まれたものですが、元々は、溶液の入ったビンに詰められた、普通のサイズのサソリでした。それが、科学者の一人の裏切り行為により、サソリの入ったビンが他のケースに移し替えられるという展開になります。
で、その移した方のケースというのが、元々用意していたものではなく、荷物室にたまたま置いてあった、他の乗客が持ち込んだ棺桶だったりします。この、わけの分からないストーリー展開は何なんでしょう(笑)。
そんな、不安定な箱に入れたものだから、飛行機が揺れた拍子に倒れてしまい、ビンが割れて中のサソリが出てきてしまったわけです。ちなみに、ビンから出たサソリがなぜ巨大化したのか、原因は科学者達にも不明で、結局「突然変異」という事で片付けられました。
問題なのは、このサソリが、何と総勢20匹もいるらしいということです。あ、ちなみに巨大と言っても、大型犬よりももうちょっと大きいぐらいのサイズです。

生き残りの乗客達は、こんな大勢の巨大サソリと、機内にあった有り合わせの武器で対決する事になります。が、この巨大サソリのハリボテ、アクションシーンが出来る程精巧に出来てない為、まともな戦闘シーンは起こりません。結局、中盤過ぎあたりで、機内のドアを開けたら全部外に飛ばされたという、大変効率の良い(または手抜きな)展開となります。ついでに、乗客も一人、ここで消えます(笑)。
終盤は、敵はサソリではなく、裏切り者の科学者がハイジャック犯と化して襲って来る事となります。ただコイツ、当初はメガネにスーツ、ネクタイ着用という、割と真面目な小心者っぽいキャラクターだったのが、ここに来てキレたサイコ犯みたいに変わり、演技も壊れていきます。
そうそう、コイツは科学者ということもあり、「モンスターの生け捕りを主張して事態をややこしくする」という、この手の映画の科学者キャラのお約束をキッチリ守った言動をしてくれていました。まったく、なんて律儀なんでしょう。

ハイジャックと言えば、この機には、見るからに怪しいアラブ人の兄弟が不法に乗り込んでいます。こいつらがハイジャック行動を起こして、事態がさらにややこしくなるのかな、と思ったら、実はお金がなくてビザが発行できない為にタダ乗りをしていて、アメリカにはテロではなく、技師として働きに行く為だったという事が判明します。見ている人の先読みをうまく外した、ナイスなキャラ設定ですね。
他にも、乗客は割とクセのある連中が多いんですが、中には活躍する間もなく殺される奴とかもいます。何かのスポーツをやってるらしき学生の団体(ほとんど女子)も、サソリの最初の襲撃であっさり全滅してしまいました(ほとんどは、殺されるシーンすら無しで消えます)。

そんな中、乗客の中で一番の活躍を見せるのが、映画のヒロインである、科学者のジェニファーです。ラスト、実はクイーン・サソリが生き残っていた事が判明し(他のサソリよりももう一回りデカい)、一人でコイツを殺しに行くという展開になります。
そしてこの時、アラブ人兄弟が即席で作り上げた、ウェットスーツと電気心臓マッサージ機を組み合わせて出来た、ヘンテコな戦闘服を着て戦いに赴くんです。しかも、暗いところでも大丈夫なように、頭に豆電球が付いてます(笑)。格好もマヌケなら、使う武器も心臓マッサージ機ですから、その構えもかなりマヌケです。
ですが、その姿を見たアラブ人兄弟は「美しい・・・!」とか言ってました。さすが製作者です。

映画のラストショットは、滑走路をヨチヨチ歩くサソリを映して終わりという、またこの手の映画のお約束にキレイに則った画で終わりです。
この手の映画のお約束事にはことごとく則ってますが、肝心のモンスターには迫力なんて全く無く、チープさしか感じられません。この映画、モンスターよりも、登場人物の愉快な行動(変な行動とは違う)の方がメインという感じでしたね。