監督:ロン・アンダーウッド
製作総指揮:ゲイル・アン・ハード
出演:ケビン・ベーコン(バレンタイン・マッキー)
フレッド・ウォード(アール・バセット)
フィン・カーター(ロンダ・レベック)
マイケル・グロス(バート・ガンマー)
リバ・マッケンタイア(ヘザー・ガンマー)
ボビー・ジャコビー(メルビン)
シャルロッテ・スチュワート(ナンシー)
アリアナ・リチャーズ(ミンディ)
トニー・ジェナーロ(ミゲル)
リチャード・マーカス(ネスター)
ヴィクター・ウォン(ウォルター・チャン)
(感想)
動物パニック映画やモンスター映画は数あれど、その中の頂点に立つ最高傑作ムービーが、この『トレマーズ』です。と、堂々と言い切りたい。
この映画の何が素晴らしいのか。それは、もう映画のあらゆる要素が完璧だからです。
まず、「謎の怪物が襲ってくる」という基本的なストーリーが最高ですね(これに異を唱えるような人にとっては、この映画は普通に面白い映画でしかないかもしれません)。
その怪物のオリジナリティもまた凄いです。音に反応する地底生物で、その大きさもかなりのものだというのに、地中を掘り進むスピードも相当なものです。巨大な口からは蛇のような触手が何本も延びていて、それで獲物を捕らえたりします。また、知能もかなりあり、人間の裏をかくような作戦を使ってきたりもします。ついでに、臭いです。
この、「怪物が臭い」という点。何しろ匂いは観客に伝わらないものなので、表現するのが難しいと思うんですが、登場人物が怪物と接近遭遇する度に「臭い」というセリフを言わせる事で、見ていて本当に匂ってきそうな気がしてしまうんですよね。なかなか見事な演出です。
そして、その怪物の正体は映画が進むにつれて段々と明かされていく事となります。新種の生き物なので、普通の動物パニック映画のように、姿を現したら即、その正体が割れる、というわけではありません。なので、地質学者の助言から主人公が怪物の正体や性質、行動等を推理していく、という展開になるんですが、これが見てて実に興味深い面白さがあるんですよね。
特に、「音でこちらの位置を察知していて、堅い岩の上に上っていれば安全」というのを発見する所は、それがそのまま主人公たちの唯一の助かる道になるので、見ててドキドキするようなサスペンス感も得られます。
その後のストーリーも、「いかに高い所に逃れるか」「なるべく音を立てないように」という分かりやすいルールの上でパニック描写が行われるという、ちょっとしたゲーム感覚も感じられる楽しさが満ちています。
そして、その状況からいかに逃げ出すか、という方向にストーリーが行くわけですが、ここは「いかに敵の裏をかくか」という興味の湧く展開になっています。例えるなら、「ジョジョの奇妙な冒険」のスタンドバトルのような「敵との頭脳戦」になってるんですよね。敵はどんな作戦で来るのか、こちらはそれに対してどう対処し、どう裏をかいて反撃(&逃走)するのか、という展開には、見る度にドキドキさせられます。
このように、もうストーリーが最高なんですよね。この脚本の完成度の高さはそれこそ数十年に一本クラスのものなんじゃないだろうか。
ストーリー展開だけでなく、各登場キャラの魅力も素晴らしいものがあるんです。まず、主人公のバルは、演じるケビン・ベーコンの若々しい魅力と相まって、最高にクールで格好いいヒーローとなっていましたね。一見、ボンクラな若者みたいなんですが、その行動力とか、ヘマをしないところ、見事なひらめきを見せるクレバーなところなど、見てて憧れてしまうような好人物です。そして、演じるベーコンがまた格好いいんですよね。私はこの映画を見て、一発でベーコン・ファンになってしまいましたよ。主人公が格好いいと映画がグッと締まりますね。
また、フレッド・ウォード演じる、相棒のアールもまたいい味を出してるキャラになってました。どちらかと言うとアールの方が冷静なタイプで、ツッコミ担当みたいなところもありましたね。この二人の掛け合いもイカしていました。この映画のストーリーの面白い所に、主人公が一人ではなく息の合った相棒がいる、というのがあると思います。
あと、名脇役のガンマー夫妻も最高でした。揃って兵器マニアで、家に大量の銃器が保管されてるんですが、それを次から次に使って、グラボイズの一匹を退治するシーンは何度見ても燃えますね。燃えると同時に、実にユニークでもあります。まず、その「夫婦揃って銃器マニア」という設定からして面白いですし、その銃器を二人が嬉々として使ってるところやコンビネーションの良さなど、見てて楽しくてしょうがないです。しかも、ちょっと暇が出来たら、化学薬品を混ぜた特製バクダンを作ったりしますからね(笑)。
他の住民達も、それぞれ異なったキャラ設定がちゃんとなされていて、「案をひらめく」とか「襲われる」といった見せ場もそれぞれにしっかり用意されています。この、脇役にもきっちり手が行き届いているというのは、名作の条件の一つと言えるかもしれないですね。
そして、ヒロインのロンダも良かったですね。セリフの端々から性格が良さそうな事が伺えますし、演じてる女優さんも可愛げのある顔をしています。そして、地質学者としての知識やそれ以前の“頭の良さ”を存分に発揮して何度となく主人公達を助けてくれました。突如マッチョ化して主人公の見せ場を奪ったりといった邪魔をしないというのも個人的はに素晴らしい点です。
と、この映画の素晴らしい点を数点挙げてみましたが、探せばまだまだ出てくると思いますね。例えば、映画全体に、モンスターパニック映画とは思えないような陽気な雰囲気が漂ってる所も評価ポイントでしょう。
とにかく、「まだこの映画を見た事が無い」という人は、一刻も早く見る事をお勧めします。