ボルケーノ
<VOLCANO>
97年 アメリカ映画 106分

監督:ミック・ジャクソン
音楽:アラン・シルベストリ
出演:トミー・リー・ジョーンズ(マイク・ローク)
   アン・ヘッシュ(エミー・バーンズ博士)
   ドン・チードル(エミット・リース)
   ギャビー・ホフマン(ケリー・ローク)
   ジャクリーン・キム(コールダー医師)
   キース・デビッド(ポリスメン)
   ジョン・キャロル・リンチ(スタン)

(あらすじ)
ロスのど真ん中で溶岩が噴き出すというアンビリーバブルな事態が発生する。
ちょうど災害現場の中心に居合わせた危機管理局の局長が、持ち前のリーダーシップを発揮しながら、この未曾有の大災害を前に大奮闘するのだった。

(感想)
火山を題材にしたパニック映画ですが、その舞台は山の麓の町ではなく、何と大都市ロサンゼルスです。まさに火山映画の中でも超変化球的な内容ですね。
他にも、この映画には、他のパニック映画には無い、この映画ならではの強烈なアピールポイントがあります。それは、トミー・リー・ジョーンズがリーダーシップを発揮しまくるという十八番演技を終始フルパワーで演じている、という点です。
トミー演じるマイク・ロークという人物が、それはもう、やたらと頼もしいんですよ。危機管理局の局長という役柄で、災害時に陣頭指揮を執ったりする役職のようですが、その立場を活かしたリーダーシップ振りが凄い事になってるんですよね。驚異的な状況判断能力の高さを見せたかと思うと、次の瞬間には矢継ぎ早に周囲の人達に命令を下して行く、という姿には、見てて「この男ならどんな災害でも何とかしてくれるに違いない」と思わずにはいられないほどです。このトミー・リーのリーダーシップ振りのあまりの凄さが完全にこの映画最大の見せ場になってるんですよね。
対する災害の方も「都市の真ん中で溶岩噴出」いうハイ・レベルなもので、もう「トミー・リーVS大災害、頂上決戦!」といった様相を呈しています。

それだけではなく、パニック映画に必要と思われる要素はほぼ全て入っている基礎力の高さも持ち、同ジャンルの映画群の中にあっても抜群のエンターテイメント度を誇っていると思いますね。
まず、災害が起こる前の比較的穏やかな流れのシーンが序盤にしっかりあり、徐々に緊張感を高めていってから「溶岩噴出!」という、キレイな流れでストーリーが展開していきます。その後の展開も非常にスピーディでテンポが良いです。登場人物も多彩ですし、災害の描写を派手な特撮で描いたりと大作感もバッチリです。
そして、人種間のいざこざが起こったり、自己犠牲精神を見せる人がいたりと、主人公の絡まない脇のストーリーにもしっかり見せ場があります。このように、主人公のいない場所での災害パニックの様子もしっかり映してきて、被害が広がっている様が実感出来るようになっています。
他にも、テレビリポーターの中継シーンを頻繁に出して状況を逐一解説させる事で、災害を色んな形で目撃しているように感じさせてくれます。実際に現場にいて災害に遭ってるような雰囲気と、テレビで中継を見てるような客観的な雰囲気の両方を同時に味わえるんですよね。これにより臨場感が増して感じられます。
そして、映画の柱として前面で展開される、「トミー・リーVS大災害」の大迫力対決。溶岩も熱いですが、映画自体も実に熱い内容となっていますね。

ちなみに、中盤で見事に溶岩流のせき止めに成功するんですが、実際にはこんなにうまくは行かないだろうなとは素人目で見ても分かりますね。溶岩があんな程度の水流で固まってしまうというのはちょっと信じ難いです。
ですが、何しろこれはトミー・リーが捻り出し、且つ指揮を執っている作戦であり、背景にはアラン・シルベストリの超熱いテーマ曲が鳴ってるんです。そんな状況で展開される作戦が失敗に終わるわけが無いじゃないですか。この組み合わせなら大津波だって止められたはずです。「不可能を可能にしてしまう」。いやぁ、これこそ映画のマジックですね。
基本的に、この映画の「あり得ない展開」はほぼ全てこれで片付ける事が可能ですが、一つ納得のいかない点もあります。それは、クライマックスでガキが見せる珍行動ですよ。これは全く意味が分からないですね。あのクソガキは何でわざわざ危険な方に一人で歩いていくのか。危険に呼び寄せられたとでも言うのか。あまりにも意味不明過ぎる行動なので、ここまでせっかく熱中して見ていたところが、ちょっと醒めかけてしまいますね。
確かに、「犬が生き残る」と同様、「バカな行動を見せるガキが登場する」というのはパニック映画のお約束の一つではありますが、もうちょっと自然な「バカな行動」をとらせる事は出来なかったものなのかと。
あ、そうそう、「犬が生き残る」と言えば、この映画ではついでにペット用のミニブタも救出されてたようですね。このシーンは見る度にニンマリしてしまいます。それにしても、ブタもペットになると助けてもらえるんですね。家畜豚だったら絶対ほっぽっておかれたんだろうな・・・。