監督:バイロン・ハスキン
製作:ジョージ・パル
原作:H・G・ウェルズ
出演:ジーン・バリー(クライトン・フォレスター)
アン・ロビンソン(シルビア)
レス・トレイメン(ザ・軍人)
フォレスターを始めとする科学者達は、火星人の弱点を探ろうと研究を続けていた。研究所のある都市に火星号が迫ってきた事から、安全な他の場所に移ろうとする科学者達だが、暴徒に襲われ、車はもちろん、研究資材をも略奪されてしまうのだった。
地球人最後の希望であった科学者達は、役目を果たす前に、火星人ではなく、人間の手によってリタイヤ。まさに万事休すといった状況だが、何故か火星号が次々と墜落し始めるのだった・・・。(注・「火星号」は私の造語です)
(感想)
05年にスピルバーグの手でリメイクされた侵略物SF映画の古典的名作です。
ですが、おおまかな内容は、リメイク版よりも『インデペンデンス・デイ』(以下、『ID4』と表記)の方に近いですね。まず宇宙船がやってきて、最初は「友好的かもしれないぞ!?」とか思って近づいてみたが攻撃され、町が破壊され、軍による反撃を試みるがバリアで防がれ・・・と、むしろ『ID4』方が『宇宙戦争』のリメイクなんじゃないかと思うぐらいに似たストーリーです。ついでに、「核攻撃を試みるが、効かなかった」というシーンまであります。
私がこの映画を最初に見たのは『ID4』の公開後でした。『ID4』と言えば、映画の映像表現を1レベル未来に進ませた映画だと個人的に思うぐらい、映像的に画期的な作品でした。
そんな『ID4』の40年前に作られたこの『宇宙戦争』ですが、特撮シーンの迫力が『ID4』の映像を体験した私をも驚かせるぐらい凄いんです。これは驚きましたね。初めて『スターウォーズ』を見た時よりも驚きました。
多分、技術的には『ウルトラマン』で見ていたのと大差ないようなものだと思うんですが、見せ方がいいんでしょうかね。宇宙船のビーム攻撃の激しさと、その攻撃力の高さが、見てて圧倒的なまでに伝わってくるんです。そして、軍の攻撃を全て無効化するバリアの存在を、特撮でしっかりと視覚的に見せてくれる事で、火星人の科学力の高さがより深く感じられます。
火星号の攻撃面と防御面、両方の特撮が、ただ「大迫力!」と感じるだけでなく、それがそのままストーリー上、人類にとってのまたとない脅威に繋がっているわけなので、心理的に見た目以上の凄味が感じられるのかもしれません。
それに、宇宙船のデザインがまたイイんですよね。流線型な形といい、極めてシンプルなデザインといい、パっと見はあんな激しい攻撃を仕掛けてくるようには思えないぐらいです。でも、この宇宙船の姿が画面に映る時は必ず超絶な破壊活動をしている時だという、この見た目とのギャップにより、何とも言えない不気味さが出ていたように思えます。しかも、アメリカ軍の総攻撃をバリアで難なく弾いてしまう、という姿には、こちらの人智を超えた何かを感じさせずにはいられません。
リメイク版の“トライポッド”の、見るからに人を取って喰いそうな外見のマシーンが襲ってくる様も怖いですが、この、シンプルな形の宇宙船が見かけと裏腹に大暴れする様というのも怖いものがありますね。
こんな、無敵の宇宙船に攻撃された我々地球人は、果たしてこれからどうなってしまうのか。という興味が最後まで続き、あまり魅力の感じられないヒーローとヒロインによるくだらないドラマもなんとか見ていられました(事あるごとに騒がしい悲鳴を発するヒロインは何とかならないものか。そう言えば、リメイク版でもダコタ譲がうるさい悲鳴をあげてましたね)。
最後の手段である核も効果が無く、残された唯一の望みは、主人公達科学者が宇宙人の弱点を発見する事に懸かっている!という展開になるんですが、科学者達は、火星人ではなく、同じ地球人であるところの“暴徒”によって怪我を負わされ、車を奪われ、貴重な研究資材を壊され、という皮肉な結果となってしまいます。
この絶望的なクライマックスは、実にジョージ・A・ロメロ的でいいですね。きっと、ロメロもこの映画に少なからず影響を受けていたのではと思います。
そして、そんな「もはやお手上げ」な状態から続く、あの、あっと驚くラストの展開。これは最初に見た時はたまげましたね。リメイク版と同じオチですが、見せ方はこの旧版の方が圧倒的に優れてます。「何か気付いたら宇宙人が死んでた」なんてのではなく、「追い詰められて追い詰められて、もうダメか!と思ったところで突如として円盤墜落」というこの旧版のラストの流れには「いったい、何が起こったんだ・・・!?」という登場人物の戸惑いを、そのまま見てる側も一緒に実感する事が出来るんですよね。
そして、ナレーションによって語られる事の顛末を聞き、我々地球人がどうやら命拾いをしたらしい事を知って、映画の中の話なのに思わず安堵のため息をついてしまいます。
この後に、終末感満点のテーマ曲によるエンドクレジットが出てくれば、余韻の感じられるいいエンディングになったと思うんですが、昔の映画の常でエンドクレジットが無いんですよね。「ジ・エンド!」的な文字が「ジャジャジャーン!」みたいな音楽に乗せて出たと思ったら、もう終了ですよ。しょうがない事ではありますが、ちょっと味気無いですねぇ。