宇宙戦争 ウォー・オブ・ザ・ワールド
<H.G. WELLS' WAR OF THE WORLDS>
05年 アメリカ映画 95分

監督・脚本:デビッド・マイケル・ラット
原作:H・G・ウェルズ
出演:C・トーマス・ハウエル(ジョージ・ハーバート)
   レット・ガイルズ(ヴィクター牧師)
   アンドリュー・ラウアー(ケリー軍曹)
   ジェイク・ビジー(サミュエルソン中尉)
   ティナリー・ヴァン・ウィック(フェリシティ・ハーバート)
   ダシール・ハウエル(アレックス・ハーバート)
   ピーター・グリーン(マット・ハーバート)

(あらすじ)
天体学者のジョージ・ハーバートは、結婚記念日に家族とワシントンへ出かける予定を立てていたが、宇宙から謎の物体が落下してきた事で、現場に行く事となった。
だが、その謎の物体は隕石でも小惑星でもない、宇宙人の乗ったカニ型ロボットだったのだ!ビーム攻撃や爪による串刺し攻撃、子蟹ロボ射出、毒ガス攻撃など多彩な技で人間を襲いまくるそのカニ型ロボットは、一体だけではなく、世界各地に何機も出没しているのだった!

カニロボの攻撃から逃れながら、ジョージは先にワシントンに出かけた妻と息子の元へどうにか辿り着こうと試みるが、頭のいかれた軍人や愚痴の多い牧師などに足を引っ張られて中々着けないのだった。

(感想)
SF映画の古典的名作『宇宙戦争』のリメイクですが、この映画の製作と同じ05年には、スピルバーグが本物のリメイクを作っていたりします。いわゆる、便乗リメイクというタイプの映画ですね。

内容は、宇宙人の攻撃兵器の登場の仕方こそ、昔の『宇宙戦争』と似ていましたが、ストーリーはスピル版の『宇宙戦争』に近いものになっていました。
要するに、世界規模のパニックだというのに、そういう面での演出をせず、一市民である主人公の目線のみで事件が描かれる、というものですね。
スピル版の『宇宙戦争』を見た時は、「これは、A級大作映画ではなく、B級映画でこそ取るべき手法なのでは」とか思ったんですが、こうして実際にB級映画でミクロ目線の宇宙戦争が描かれている様を見ると、あんまり面白くありませんね。
確か、スピル版は、53年版よりも原作に近い内容だという話を聞いていたので、元々H・G・ウェルズの原作はこういう話なんでしょうね。そう思うと、その原作を50年代という古の時代に『インデペンデンス・デイ』みたいなマクロ視点の世界規模パニック映画として製作したジョージ・パルは凄い人だなと思いますね。

トライポッドは安いCGで描かれ、どちらかと言うと、映画に出て来るマシーンというより、ゲームの敵キャラみたいな感じでしたが、別に悪く無かったですね。動きも結構滑らかでしたし。
「カニロボット」にしか見えない外見も愛嬌があっていいですし、人を一瞬で骨にしてしまうビーム攻撃をする所からは、しっかり危険なマシーンだという感じが出ていました。それに、小型ロボットを出してきたり、毒ガスを放出してきたりと、今までのバージョンでは見られなかった兵器があるのも魅力的です。
ただ、予算の関係上、あんまり姿を現せられないんですよね。あんな質のCGでも、アクション場面を1シーン分作るだけでそれなりに費用が掛かってしまいそうですからね。
なので、主人公が家族の待つDCに移動しようとするロードムービー(と言っていいのか)っぽいドラマがメインに描写されるんですが、このメインストーリーが、何か面白く無いんですよね。いや、ストーリー自体は悪く無いのかもしれないですが、展開の仕方が何とも盛り上がりに欠けるんです。
途中、軍曹や牧師といった面々と出会い、一緒に旅をする事になるんですが、いい人だった軍曹は「前のシーンでは一緒にいたのに、次のカットではぐれる」という訳の分からない現象で別れる事となり、牧師は途中から超悲観的になって愚痴を延々こぼし始めたりします。で、この牧師との絡みが結構長いんですよね。家の地下室に閉じ込められる事になるんですが、その間、コイツがもう、延々と愚痴るんですよ。聞いててうんざりしてきますね。神なんか信じてるからそういう事になるんだよ。
スピル版も、中盤から後半にかけて、地下室に閉じこもって頭のイカれたオヤジに悩まされるという場面に結構長い時間を割いて、ストーリーが停滞気味になりましたけど、これは原作でも似たような場面があったという事なんでしょうかね。

総じて、「この予算でリメイクする意味があったんだろうか」と思うような映画でした。どうせなら、チャッちくなってもいいから、53年版を元にした特撮風味満点な侵略系パニック映画として作って欲しかったですね。