アンノウン(ネタバレ感想)

事故後の主人公が覚えていた、自分のアイデンティティに関するものが、全て、「暗殺任務の為に自分が考え出した、ウソの姿」というのは驚きでしたねぇ。主人公の名前が“リチャード・ハリス”なのは大前提だと思っていたのに、まさかの偽名ですよ。
でも、この話、ほとんど『ボーン・アイデンティティー』と変わらないんですよね。ただ、記憶喪失後の主人公の行動が全然違う(覚えていた記憶の違いなのか)だけで、こんなにも別種のストーリーになってしまうんですね。もし、1作目のボーンが、潜入用に考え出したニセの自分の事だけ鮮明に覚えていたら、『アンノウン』みたいな展開になっていってたかもしれないんですね。
あと、この映画のリーアム・ニーソンも、ボーン同様、暗殺術の訓練を受けている強い男なんですよね。『96時間』で大ブレイクみたいな感じの昨今のニーソンですけど、クライマックスで、その『96時間』を思い出すような戦闘力を「思い出す」というのは嬉しい展開でした。「まさかの96時間モード発動」みたいな感じで、思わずニヤニヤしてしまいましたよ。

と、非常に面白いストーリーの映画でしたが、所々、「あれ?」と思うような所もありました。特に、冒頭、主人公が事故に遭うきっかけが「空港に忘れ物をして、それを取りに戻ったから」という事なんですけど、後に主人公の正体を知ると、これがもの凄く無理のある展開に思えるんですよね。「プロの暗殺者がそんな初歩以下のミスを!?」と。せめて、主人公ではなく、他の誰かのミスで荷物がなくなるというふうには出来なかったんだろうか。
あと、クライマックスにおける、リチャード・ハリスの妻役をしていた女暗殺者の行動の意味不明さと無意味さは「何がしたいんだ、お前は」と思ったものでした(まあ、アホ過ぎて笑えましたけど)。 他にも「あれ?」もしくは「おや?」という箇所があったような気もするんですが、今覚えているのはこれぐらいなので、後は大した事の無い点だったのでしょう。
あと、これは「あれ?」系の話ではないんですけど、出来れば、主人公の名前は、最後まで“リチャード・ハリス”で通して欲しかったですね。ボーンも最後まで本名より偽名を通して使ってましたけど、記憶を失った後、新たなアイデンティティを獲得していく際に使っていた名前なので、もう、その名前が今の自分の本名みたいな感じになってるんだと思うんで、この映画の主人公も、架空の人物だったリチャードを新しい自分として名乗っていって欲しかったと思います。

この映画で起こる事件は、結局、全て主人公が計画していた事で、実の所、諸悪の根源は主人公なんですけど、最終的に、主人公自身がそれを必死に食い止めようとする、というのは中々燃える展開でしたね。逆アナキンとでも言うのか、悪が正義に目覚めるというのは面白いです。
でも、そのきっかけが記憶喪失なんで、もし記憶が全部戻ったら、また元の悪党に逆戻り、という可能性もあるんですけど、果たして、この主人公はラストで全てを思い出したんでしょうかね。個人的には、全て思い出していて、なお、架空の人格であったリチャード・ハリスとして生きていく事にした、という展開の方がカッコイイなと思うんですけど。


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