映画で描かれた点だけを見る限り、個人的には応援したい政治家という印象だったスタークですが(私が、実は政治家に騙されやすいタイプだからそう思えたという可能性もある気がしますが・・・)、本心から国民の事を考えていたのか、それとも地位を得る為に労働者や貧民、黒人などの多数派を仲間に引き入れようと思っていたのか、ただ金持ち連中に対して反抗したかっただけなのか、その辺の心理的な部分はよく分かりませんでした(一番興味のある部分だったんですが)。
なぜなら、ストーリー上の主人公はジュード・ロウ演じる記者(後にスタークの付き人になる)なんですよね。なので、スタークの方は行動だけしか描写されないんです。
で、コイツのドラマがまた面白くないんですよ。友人の妹との関係とか、父親代わりだった名付け親との関係とか出て来るんですけど、正直、「お前の個人的な話なんか興味ないんだよ」とか思ってしまいました。そういうストーリーの映画なんだからしょうがないんですけど(笑)。
スタークという政治家の存在は中々興味深かったんですが、映画自体は何だかイマイチな印象でしたね。最後も、何だか残念な終わり方になってしまって「結局、これはなんの映画だったんだろう?」とか思うハメになってしまいました。私が楽しむには少々難解な映画だったようです。
「泥棒を稼業にしているダメ人間のジャッキーと相棒が、ひょんな事から赤ん坊を誘拐する事となり、お世話をするのにてんやわんやする」という感じのストーリーで、赤ちゃんを巻き込んだコメディが繰り広げられるわけです。
赤ちゃんと言えば、平気でうんこを漏らす事で知られる人種ですが、そこに製作側は目をつけたのか、うんこ系シモネタで攻めてくる場面もあったり。ポップコーン等を食いながら見てる人は要注意です(笑)。
さらに、今まで赤ん坊の世話などした事もなければ、自分がそんな立場になるとは考えた事も無かったであろう二人の男が、おむつだミルクだと慌てふためく様がまた見てて楽しいわけですよ。他の映画でもこの手の企画は見た事がありますけど、それをジャッキーがやっている、いうのは映画史上初ですからね。これは中々新鮮な情景でした。
また、その赤ちゃんを奪おうと企む悪い輩もいて、そいつらと赤ちゃんの争奪戦をアクションで見せてくるわけです。で、このアクションシーンのレベルがまた、異常なまでに高いんですよね。
まず、ジャッキーの個人技が相変わらず凄いんです。しかも、衰えを感じさせないような、スピーディな編集がなされていて、アクションシーンにやたらスピード感があるんですよね。やっぱり、年齢による衰えで一番影響を受けるのは、アクションのスピードだと思うんですよ。でも、ちょっと映し方を工夫するだけで、「今が全盛期なんじゃないか」と思うぐらいのスーパーアクションシーンを見せる事が出来るんですよね。何しろ、“アクションの動きの見せ方”に関してはもう神の域に達してる男ですからね。
カーチェイスシーンの迫力も、金のかかったハリウッドのアクション映画に匹敵するものがありましたし、こと、アクションシーンに関しては最近のジャッキー映画の中でもトップクラスの凄さなんじゃないかと思うぐらいです。でも、スタントアクションのシーンがどうも特撮臭い映像になってたんですよね。もうちょっと自然な映し方に出来なかったんだろうか。
さて、ここまでは今までの数多くのジャッキー映画でもあった、“笑い”と“興奮”の場面です。で、新たな路線である“感動”ですが、ダメ人間であったジャッキーと相棒が、赤ん坊と関わって、必死で世話をしていくうちに、人として大切な何かに目覚める、という展開になっていくんです。
このストーリーは私も実にいいと思います。「再生の物語」といった雰囲気で感動的でしたし、「私も頑張ってみよう」という気になっても不思議じゃないぐらいです。
でも、私はそんなに入り込んで見られなかったんですよね。どこか引いた感じで見てしまってました。
なぜかといいますと、みんな演技が大袈裟なんですよね。登場人物のセリフとか行動とかに、どうにも違和感を覚えずにはいられないような所が多々あったりして。
ただ、これは演出が悪いとか、ジャッキーの演技が下手だとか、そういうレベルの話じゃないんですよ。単に、香港や中国といった、アジア方面の映画の演出自体が私の体に合わないという話なんです。前々から、こっち方面の映画には相性が悪いと自覚していたんですが、それがもう、どうしようもないレベルのものだというのがこの映画を見てハッキリ分かってしまいましたね。多分、相当いいストーリーの映画だと思うんですけど、私にとっては、ジャッキーが出てなかったら大して面白くなかっただろうなと思うぐらいのものしか感じられなかったんです。面白いと理解はしていても、脳の中の楽しさを感じる部分は何の反応も示してくれない、みたいな状態ですかね。何かよく分からない状態ですが。
まあ、何しろ私は、『香港国際警察/NEW POLICE STORY』よりも『ラッシュアワー』の方が好きという男ですからね。こんな事、ジャッキーファンに知られたらエラい事ですよ(「貴様は二度とジャッキーファンを名乗るな」と言われかねないだろうな・笑)。
では、なんでわざわざ香港の映画なんて見てるのかと言いますと、ジャッキーが出てるからに他ならないわけですよ。もう、ジャッキーなら、演技が大袈裟とか関係無いですからね。
ただ、どうもシリアスなジャッキーに対しては、イメージと合わないせいか、ちょっと違和感があるんですよね。私としては、今後はシリアス路線よりも、今まで通りのコメディ路線でいってもらいたいですね(ハリウッドでシリアス路線、というのなら見てみたいですけど)。
ともかく、こういう、観客に訴えたいテーマを掲げた映画というのはいいですね。作り手の気迫みたいなのが感じられるようです。
ダイヤに関する事だけでなく、アフリカという国ではどういう事が起こっているのか、という面もしっかりと描いてきます。『ホテル・ルワンダ』を見た時も思いましたが、ほんと、なんとか出来ないのかと思いますね。内紛が起こる背景には先進国の経済関連の問題が絡んでるケースも多々あるんで、「向こうの問題」で片付けられないものですし。
もうほんと、アフリカという国の“危険度”は半端じゃないですね。「ここは核戦争後の世界か」と思うぐらい、暴力が支配する国みたいなんですよね。例えば、SF・ファンタジー映画で「危険な国」みたいなのが出て来る場合がありますが(『ロート・オブ・ザ・リング』のモルドールとか、『ゾンビ』のゾンビが跋扈する世界、『エスケープ・フロム〜』シリーズのNYやLAなど)、それらと比べても、アフリカの方が“地獄度”、“とても人の住める国とは思えない度”が数倍高いと思うぐらいの荒れようですよ。
まるで、ゲームのキャラを撃ってるぐらいの感覚で住民をバリバリ撃ち殺す連中がいたと思ったら、その銃を撃ってる連中の中に年端もいかぬ子供が紛れてたりするんですからねぇ。この、“子供兵士”の問題もついても、この映画は結構切り込んできていましたね。
と、こんな恐るべき現実を背景にしてる映画ですが、ただ深刻なテーマを掲げるだけの映画ではないんです。こういう表現でいいのか分かりませんが、娯楽エンターテイメント映画として、非常に面白い内容の映画になってるんです。
アクションシーンの迫力といい、登場人物間のドラマといい、ほんと見応えがあるんですよね。テーマ性のある映画を「おしつけがましい」と感じるような、社会派映画が苦手な人もきっと楽しめるに違いないと思われる作りなんです。
でも、世間に伝えたい事がある場合、こういうふうに、間口を広げて、より多くの人が見られるようにする、というのはいい手段だと思いますね。その問題に対して、興味を持ってくれる人がより増えそうな気がします。『不都合な真実』を見た時も思いましたが、エンターテイメント性というのは意外と重要なんですよね。
さて。この映画は非常に志と完成度の高い映画であると私は思うわけですが、中でも、私が最も凄いと思った所は、アクションシーンの迫力に関するところです。何しろ、私はアクションバカですからね。いくら高尚なテーマを掲げようが、エンターテイメント度を重視した作りになっていようが、アクションシーンが普通程度だったら、私もこの映画をこんなに評価しません(笑)。
数年前、同じくアフリカを舞台とした『ティアーズ・オブ・ザ・サン』という、ブルース・ウィリス主演のアクション映画がありましたが、あの映画と同等ぐらいの迫力があるアクションシーンが出て来るんですよ。
あちらは、アクションスターが主演しているからこそ、あそこまでレベルの高いアクションを見せる事が出来たのだと私は思っているのですが、この映画にはアクションスターは出ていません。代わりに、今までハードなアクションに挑戦した事も無いうえに、深刻な“オスカー欲しい欲しい病”を患っているミスター・タイタニックが主役です。
ですが!このディカプリオのハードアクションが驚くほどサマになってるんですよ。
プリオは、ダイヤの密売という危険な仕事をしている人物の役で、この超危険なアフリカに長年住んでいるという猛者です。でも、登場した時は全然そうは見えないんですよね。“映画スターが強い人の振りをしてる”ように見えてしまって、「これはミスキャストだったんじゃないのか」と思ったものでした。
でも、ストーリーが進むにつれて、戦闘に何回も巻き込まれたりと、危険な場面が幾度となく出て来るんですが、それを全て切り抜けて行くんです。それも、「弾がプリオを避けていってくれてる」みたいな感じじゃなく、とっさに安全な場所を見つけて逃げ込んだりだとか、経験で切り抜けてるみたいな雰囲気が感じられるんです。
もう、中盤ぐらいには、すっかり「頼れるヤツ」みたいに見えましたからね。コイツなら、この地で危険な商売をして生き残っていたとしても不思議じゃないと思えるように印象が変わってきたんです。
実は、元は傭兵をしていたという過去が語られ、銃の腕も相当なものだったりするんですが、その設定を活かしたような活躍もどんどん見せてくれて、もう完全にアクションヒーロー状態になってましたからね。
さらに、人物像もかなり掘り下げられている感があって、実に魅力的なキャラクターを創造していました。これは私の中では間違いなく、プリオのベストワークだと思いますね(『アビエイター』は未見ですが)。
あと、他の主要キャストである、ジャイモン・フンスーとジェニファー・コネリーもプリオに負けず劣らずの名演を見せていました(アクションはしませんが)。この演技合戦も大きな見どころの一つでしたね。特に、終盤で出て来るジャイモン・フンスーの「魂の雄叫び」とも形容できる咆哮の迫力は凄い事になってましたよ。
かなり過酷な内容の映画でしたが、ラストは実に感動的でした。もう、涙で目がぼやけてエンドクレジットがよく見えないぐらいでしたからね。
こういう映画は、ラストが結構重要ですからね。余韻が残るような終わり方だと、観客も強い印象を残したまま劇場を後にする事になって、結果、伝えたいテーマが観客の心により響く事になるんじゃないかと思います。私も、見終わった後に本屋さんでダイヤモンド関連の本を探しましたからね。見つからなかったんで何も買わずに帰ってきましたが(爆)。
ともかく、あるゆる面で凄い映画でした。