そんな低い志で見てる奴が何言っても説得力無いですけど、大変面白い映画でした。実に興味深かったです。
米国の医療制度がいかに酷いものかを散々見させられ、「ああ、日本はこれよりはまだマシだな」と安心していたら、今度は、カナダ・イギリス・フランスといった、「充実した医療制度を誇る国」の様子が紹介されるんです。で、これがまた、今まで散々酷いのを見させられたからなのか、「ここは天国か」と思うぐらいの待遇を国民が受けているんですよね。驚きました。
特に、フランスは凄い事になってましたね。もう、一国民がVIP客並の待遇を普通に享受してたりするんですよ。ここでカルチャーギャップに驚くムーアのリアクションは、見てる私のリアクションそのままでしたね。
でも、何でこんな事が可能なんでしょうかね。この分の金はどこから出てるんでしょう。映画でも、「きっと国民は税金を搾り取られてるに違いない」みたいな方向に行くんですが、市民の生活は全然苦しそうじゃないんですよ。とても、税金で首が回らないようには見えませんでした。
では、国民に対する数々のケアの費用はどこから出ているのか?という最初の疑問に戻るわけですが、結局これの答えは出てきませんでしたね。「日本でこういう制度を取り入れる事は可能なのか?」というヒントが見つかるかと思ったんですが、その辺りは自分で調べろという事なんでしょうか。
このフランスもイギリスもカナダも、どこも素晴らしい国に見えるんですが、この映画が素晴らしいのは、「そういう進んだ国にさっさと移住しよう」と勧めてこないところですね。代わりに、他国の見習うべき点を取り入れ、自国をより良くしていこう、という主張をしているんです。非常に前向きですね。
そして、自国を変えるヒントとして「何故フランスはこんなに国民の待遇が良くなったのか」というのを教えてくれます。それは、国民が行動的で、やたらデモをしたりするからのようなんです。要するに、国民が政府を監視し、コントロールするような立場にいるんですよね。アメリカや日本と全くと言っていいぐらい逆ですよね。
ちなみに、日本の医療制度も、最悪のアメリカに今更追従しようという動きがあったりするらしいですね。アメリカの場合は「共産主義的だ」という脅し文句で国民皆保険制度が導入されるのを防いできたようですが、日本ではどんな騙し文句を使って医療制度の質を下げる法案を通すつもりなんでしょう。
どうやら、今回のテーマは他人事では済まされない問題だったようですね。『不都合な真実』と同様、この映画も他の人にどんどん勧めていかなくてはならないようです。
ところで、問題そのものも興味深かったですが、ドキュメンタリー映画としての構成も相変わらず見事でしたね。まあ、監督の主義主張が色濃く出ているという事で、ドキュメンタリーとはまた違うのかもしれないですが、ジャンルはともかく、“世間に訴える確固たるテーマ性を持った映画”という事に違いは無いですからね。
そして、深刻なテーマを扱いながらも、ユーモアを決して忘れない作りになっているので、見てて飽きたり寝たりという事をさせませんね。「もし、普通のドキュメンタリー映画なら、そろそろウトウトくる頃かな」というタイミングで笑いを誘うシーンが出てきたりするんで、情報量の多さの割にあまり冗長さを感じさせませんし、最後まで集中力を維持して見る事が出来ました。
何よりも、監督のヒロイックな行動が時々顔を出す所が面白いですよね。今回はグラウンド・ゼロで大変な仕事をこなしながら、政府に見捨てられてケアを受けられなかった人達に対して助け舟を出してくれました。もしこの世界にマイケル・ムーアがいなかったら、あの人達は未だに苦しんでいたわけですからね。こういう事をする辺りが、私がムーアが好きな理由の一つなんですよね。
こういう、映画全体の雰囲気というのは良かったんですが、肝心の内容がどうも、私の興味の範囲外のもので、あんまり面白味が感じられませんでした。
ストーリー展開がどうこうよりも、まず、会話シーンがやたら長いんですよね。まあ、これはタランティーノ映画にとっては珍しくない事ですし、今回は「ディレクターズカット版」という事で本来よりも長くされているバージョンです。しかも、そういう情報は映画を見る前から入って来ていたので、こちらも覚悟して臨んでいたんですけど、やっぱりついていけませんでしたねぇ。会話が長いのはまあいいとしても、その話の内容が面白くもなんともないんですよ。後半部分では、映画の話とかが出てくるので多少は面白かったんですけど・・・。
この、長い長い与太話をただ単に眺めているという状況。ちょっと、バーとかダイナーとかで隣の席についている女連中の会話を盗み聞きしているような感じがあったりもしましたね。もしかしたら、この辺りから攻めていったら、この映画も面白く感じられてくるのでは、とも思ったんですが、残念ながら無駄でしたねぇ。何しろ、会話の内容に興味無さ過ぎて。
そんなわけで、結局、この映画一番の収穫は、「カート・ラッセルの姿を2年続けて、劇場の大画面で見られた」という所でした。元スタントマンで、実は若い女を愛車で殺すのが大好きなサイコ野郎のアウトローという、イカした役柄を怪演するラッセルの勇姿には惚れ惚れしたものでした。
ただ・・・。終盤からちょっとおかしな方向に行ってしまいましたけどね(笑)。中盤頃に、スタントマン・マイクが、ただのアウトローではなく、殺人鬼であった事が明かされるんですが、終盤でさらにもう一つ、スタントマン・マイクの正体が暴かれる事となるんです。これは、多分、笑う所だと思うんですけど(あのラストショットから考えても)、何だか複雑な心境でしたねぇ。面白いっちゃ面白いんですけど。
ところで、本来2本立てで上映するはずの所を、それぞれ一本づつの公開になった事で、“グラインドハウス”の精神からちょっと離れてしまう事になったんですけど、この映画自体も、途中からフィルムの粗が無くなって、現代の映画のようにキレイな画質になるんですよね。これはどういう意図なんでしょう?
もう『4』は無さそうな雰囲気ですが、『リーサル・ウェポン』も『4』まで行った事ですし、このシリーズもどうにか頑張って4作目まで行ってもらいたいものです。
そんな「映画スターを鑑賞するだけの映画」なんて、いかがなものかと思う方もいらっしゃる事でしょうけど、ご安心ください。ストーリーもきちんとしていますし、「全て無名の俳優」で作ったとしてもそこそこ楽しめるぐらいの内容はあるんです。
その上で「登場シーン、それ即ち見せ場」な俳優が出ているんですから、つまらないわけがない。・・・・・・いや、他の人が見てどうかは自信無いんですが(笑)、少なくとも私は大満足でした。
オーシャンズの作戦も、1作目は「強盗」、2作目は「騙し」ときて、今回は「嫌がらせ」と一風変わったものです。
オーシャンズのメンバーの一人がパチーノに騙されたショックで倒れてしまい、その仕返し、復讐の為にパチーノに一泡吹かせてやる、というストーリーなんですが、結局、この倒れた仲間も終盤頃には療養が効いて復活するんで、無理に復讐する事なんてないんですよね。でも、パチーノの経営する難攻不落のカジノで嫌がらせを行う為に、オーシャンズは壮大かつ緻密な作戦を決行するんですよ。
その悪役のパチーノですが、“嫌な人物”というキャラクターですし、演技も見てて憎々しさを覚えるようなものになっています。でも、どかこ「悪人」という感じがあまりしないんですよね。全ては自分のホテルに対する厳しさ故のもので、「度の過ぎた仕事人間」というだけなんだと思えるんです。
なので、オーシャンズに嫌がらせを受ける様にちょっと理不尽なものを感じてしまう面もあるんですよね。このベガスという厳しい町でのし上がってきたパチーノの方がオーシャンズの面々より尊敬出来るような気がしてしまうんです。でも、映画ではパチーノは完全に倒すべき悪役、そして憎まれ役として描かれてるんですよね。
この辺りに納得のいかないものを感じそうになったものですが、映画の舞台であるベガスという町を考えると、「こういう事も起こりうるんだろうな」と納得してしまえるんですよね。「大物ホテル王が、数多くいる敵のうちの一人(と言うか、一派)に酷い目に遭わされるハメになる」と。もう、誰が標的になるのかとか、そこに大義名分みたいなのはあるのかとか、関係無いんでしょうね。きっと、常に勝者と敗者が出る町なんでしょうなぁ。いや、私はベガスに行った事も住んだ事もないんで、イメージで語ってるだけですけどね。
ところで、今回ジュリア・ロバーツが抜け、前作で登場したキャサリン・ゼタ・ジョーンズが続投せずという事で、ストーリーから色恋関連の話がキレイに無くなったんですよね。これは個人的に最高に良い点でした。おかげでストーリーが停滞したり中だるみしたるする場面が無くなって、シリーズ中、最も見てて面白いストーリーというふうに思えました。
あと、オーシャンズの各メンバーの見せ場の場面が均一にバランスよく振り分けられていたように思えましたし(もちろん、主演級三大スターは除く)、過去シリーズのボスキャラ的存在である、アンディ・ガルシアがストーリーに絡んできたり、前作で見事な怪盗ぶりを見せた敵キャラ、ヴァンサン・カッセルが再登場する辺りも面白いです。
このように、映画的にも前2作よりかなり良くなりました。これはもう、明らかにシリーズ最高の出来栄えと言えると思いますね。
超大作映画としては文句無い出来ですが、やはり映画としては雑な印象があったりします。映画の雰囲気も『アルマゲドン』と似たような感じでした。でも、この「見せ場ぶち込み型」の演出がマイケル・ベイの持ち味みたいなものですからね。これを批判するのは無意味ですし筋違いというものです。それこそ、デビット・リンチの映画を「意味が分からない」という理由で批判するようなものです。
それに、一見、派手な場面をただぶち込んでるだけみたいに見えますが、ちゃんとクライマックスに最大の見せ場が来るように計算されてるんですよね。序盤にも凄いシーンは出てきますが、後半に向かうにつれてさらに凄いシーンが出て来るようになってるんです。
まあ、派手過ぎて、見てて少し疲れるという面はあるんですが、たまにはこういう贅沢に派手派手な映画があってもいいはずです。
また、ロボットがメインの映画で、「地球侵略物」風のストーリーになっているのも面白いですし、主人公が等身大な雰囲気のあるティーンというのもいいですね。「初めての車」という青春映画みたいな感じで始まったのが、いつの間にやら巨大ロボットの入り乱れる、スケールのデカい事件に巻き込まれていくというのも実に夢があって面白いです。
また、数箇所で展開されていたストーリーが段々一つにまとまっていく辺りも、少々雑で強引な感じはあったものの(笑)、分かりやすくて面白い展開でした。
ちなみに、こんなにも派手で金かかってるな感の高い映画ですが、製作費は『スパイダーマン3』や『ワールド・エンド』の半分ぐらいなんだそうですね(マイケル・ベイが言うには)。本当にそうだとしたら凄い事ですね。この3作の中で一番豪華な感じがある映画なのに。やっぱり、何作も大作映画を手掛けてるだけあって、金の使い方が上手いんでしょうねぇ。
で、今回の『ゴーストハウス』ですが、舞台となる家は、例によって昔よくない事があった曰く付きの物件です。冒頭で、「こういう惨事がありました」的なものが語られるんですが、具体的に何が襲って来ていたのかは不明です。
場所は、田舎町からさらに離れた、まさに「家以外何も無い」みたいな土地です。家は、前の事件から長いこと空家になっていて、主人公一家が越してきた時は結構な荒れ果てようでした。
で、「なんでこんな所に越す事になったのか」と言うと、主役であるクリスティン・スチュワート演じる娘が、事故か事件か何かを起こしたのが原因、という事なんですが、詳しい事情はなかなか語られません。このヒロインが、かなり暗い感じの子なんですが、当然、それも過去の出来事が原因なわけです。でも、その肝心の理由が終盤まで分からないんですよね。
この「重要な部分をすぐに言わずに、延々引っ張る」というのは、少々イラつく面はあるものの、ストーリー展開への興味を持続させる効果もあるようですね。
で、そういう、「過去に問題を起こしている」というヒロインが家で恐怖体験をするのですが、その話を両親に信じてもらえないんですよね。「ついに虚言癖まで出たか」みたいな感じで。まあ、「お化けが出た!」みたいな話は、過去に問題があろうがなかろうが大抵信じてもらえないものですけどね(笑)。
唯一、まだ言葉を喋れない幼い弟がゴーストの姿を常に見る事が出来るんですが、何しろ幼児なので証人になってもらうわけにもいきません。で、この「弟だけがゴーストを見れる」というのが後のストーリーに絡むのかと言うと、そんな事は無いんですよねぇ。ちょっとしたアクセントみたいな感じなんですかね。
さて、肝心のお化け達ですが、どうも、「こいつらは何がしたいんだ」というのが、見ててイマイチ掴めないんですよね。
ゴーストの行動に合理性を求めるのもどうかとは思うんですけど、「何でそんな所で出て来るんだ」と思うような所で出てきたり、「その行動に何か意味があるのか?」と思うような珍行動を見せたりするんですよ。特に、虫みたいに天井をカサカサ這い回ってる奴がいたんですけど、アイツのあの動きに何の意味があったのか、映画を見終わっても分かりませんでしたからね。例えば、『呪怨』の伽椰子が変な動きをするのは、死んだ時にどこかの骨が折れただか、それなりに筋の通った理由があったと思うんですが、こちらは、あれだけ特異な動きをするクセに理由付けが何も無いんですよね。これも、ちょっとしたアクセントとして入れられてるものなんでしょうかね。
で、そんなゴースト達がビックリ演出でもって観客を驚かそうとしてくるわけですが、大抵、出る前に無音状態になって「いかにもビックリ演出が出てきそうだ」という雰囲気を出してから登場するんです。こういう、静かな雰囲気のホラーでこれをやられると、何か「芸が無いな」とか思ってしまいます。
ストーリーにも恐怖シーンにもそれほど捻った所があるわけでもないという、「数ある幽霊屋敷物映画の一本」でしかない、という内容になってしまってるんですけど、ちゃんと「この映画ならではの見どころ」というものも存在しています。
それは、「主人公が、やたら顔の整った若い娘だ」という点です(爆)。
もう、整い過ぎていて、生きてる人間の顔と言うより、人形かCGかと思ってしまうぐらいでしたからね。で、そういう美少女が怖い目に遭ったり、恐怖で震えたりする様を見るのがまた楽しいわけですよ。
だいたい、「この顔に生まれたからには、もう何も怖いものはない」みたいな人が酷い目に遭う様というのは、やっぱり一般庶民としては楽しいものじゃないですか。それとも、私だけですか。いやいや、そんなはずはない。みんな正直になろうぜ(何を言い出してるんだ・笑)。
と言う訳で、ホラー映画としては普通程度のものでしたが、ある方面では非常に優れた、見てて楽しい映画でありました。