個人的評価 47点 (50点満点中)
◎満足度 ★★★★★ (見終わった後にどれだけ満足感が残ったか)
◎肯定度 ★★★★★ (この映画をどれぐらい支持したいと思ったか)
◎評価度 ★★★☆☆ (客観的に評価してみる)
◎おススメ度 ★★★☆☆ (他の人に勧めても大丈夫そうか)
◎セガール度 ★★★★★ (この映画ならではの評価ポイント)
さて。今回の『沈讐』ですが、セガールの役柄は、意外と久々な気もする、刑事です。正確には、麻薬特捜班みたいな役職で、しかもそのグループのチーフです。こういう刑事アクション物映画の主人公が、「その部署のトップ」という役職にいるのって、割と珍しいような気がしますね。
そして、セガール率いる特捜班が、ある悪党を追いかけるわけですけど、この悪党というのが、本来なら、小悪党止まりな感じの器のヤツなんですよね。あんまりボスキャラっぽくないと言うのか。
で、一応、「いかにもボスキャラ」みたいな雰囲気の登場人物もいまして、こいつがマフィアだかギャングだか、犯罪グループの頭なんですけど、後半になると、その小悪党君は、このボスキャラにも追われる身になるんです。
この展開って、『アウト・フォー・ジャスティス』と結構似てる所があるように思えるんですけど、このストーリー展開だけでなく、どことなく、映画の雰囲気とか出来に関しても相通じる面があるんです。
あの当時のセガール映画は、その後しばらく続く大作路線とはまた別の面白さがありましたし、何よりも、セガールのアクションが視覚的にも非常に見応えがあって良かったものでした。で、この『沈讐』にも、その当時を思い出すような、キレのあるアクションが出てくるんですよね。
また、セガール映画のお約束である、「わざわざやられる為にセガールにケンカをふっかけてくる雑魚」とか「ボスクラスのキャラと対等に会話したり(対等と言うか、ほぼ格下扱いに近いですけど・笑)、そいつから一目置かれる、又は尊敬される」といった要素も出てきて、ほとんど死角無しですよ。
この映画の鑑賞中は、例によって多少警戒しながら見ていたので(また酷い内容のが出てこないとも限らないので・笑)、見終わった直後は「ああ、今回は面白かったな」ぐらいの事を思っていたんですが、後にこの映画の事を思い返す度に、「もしかして、今回のは凄い映画だったのでは」と思えてきました。下手したら、今世紀のセガール映画の中でもベスト級だったのでは(あくまでも、「私の好み」というフィルターを通しての意見ですけど)。
まず、セガール映画に期待している点である、「セガール拳」「セガールの無敵の活躍」といった点が満足のいく形でしっかり入ってますし、セガールのボス刑事役も非常に似合っていて素敵でした。また、ストーリー展開に関しても、ちゃんと「セガールならでは」な面がありましたし(セガールが無敵の大暴走を始め、最終的に暴力で全て解決するという・爆)、もう、ほんと隙が無いんですよね。
来年からはテレビの世界に行ってしまわれるセガール大先生ですが、確か、その前にもう一本ぐらい映画もあるんでしたかね。ともかく、この映画の出来&セガールのやる気を見る限り、まだまだこれからの活躍にも十分期待が持てそうです。
ちなみに、邦題に「復讐」という文字が付いてるように、終盤は、殺された部下の復讐に走る事となるんですが、この殺される部下が、途中で、ものすご〜く分かり易い死亡フラグをおっ立てるのを見た時は、思わず吹き出す所でしたよ。ほとんど、自殺と言ってもいいぐらいでしたからねぇ。
個人的評価 43点 (50点満点中)
◎満足度 ★★★★☆ (見終わった後にどれだけ満足感が残ったか)
◎肯定度 ★★★★☆ (この映画をどれぐらい支持したいと思ったか)
◎評価度 ★★★☆☆ (客観的に評価してみる)
◎おススメ度 ★★★★☆ (他の人に勧めても大丈夫そうか)
◎後編はまだですかの度★★★★★ (この映画ならではの評価ポイント)
と言う訳で、今回も相変わらず面白い映画ではあったんですけど、見終わった後の印象は、「最高!」という所までは行かなかったんですよね。何故かと言うと、まあ、今作の前提ではあるんですけど、一本の話を2作に分けられているという事で、話が途中で終わるわけですよ。これまでもそういう映画はありましたけど、過去の同種の映画以上に、この前編における、「一本の映画を見た」という感覚が薄い気がするんですよね。何か、映画の途中で強制的に終わらせられたみたいな感じなんです。「続きが気になる」どころか、「話、全然進んでないじゃん」レベルの所で終わってしまったと言うか。2時間半もある映画なんですけどね。
まあ、「話が進んだ気がしない」というのは、実は前作でも前々作でも思った事なんですけど、でも、過去2作は、長い原作を圧縮して詰め込んでいる為、それなりの満腹感が得られるぐらいのイベントは入っていたんですけど、今回はそこまでの圧縮をしてないせいか、満腹感がほとんど無い、腹5、6分目ぐらいで終わってしまったみたいなんですよね。
でも、先にも書いたようにシリーズ最高の緊張感があったり、アクションシーンも定期的に出てきたりと(かなり見辛かったですけど。例によって、画面が揺れすぎるせいで)、一本の大作映画に必要な要素はほとんど入ってるはずなんですよね。ストーリー面の方で何かが足りなかったんでしょうかねぇ。何だか、「面白いはずなのに、何故か満足出来ない」という、妙な歯がゆさがある映画でした(上の“個人的評価”の点数も、同じ基準で採点してるのに、前作より2点も低くなってるのも謎ですねぇ。明らかに今回の方が面白かったはずなのに)。
個人的評価 45点 (50点満点中)
◎満足度 ★★★★★ (見終わった後にどれだけ満足感が残ったか)
◎肯定度 ★★★★★ (この映画をどれぐらい支持したいと思ったか)
◎評価度 ★★★★★ (客観的に評価してみる)
◎おススメ度 ★★★★☆ (他の人に勧めても大丈夫そうか)
◎ジャッキー度 ★★★★★ (この映画ならではの評価ポイント)
さて。今年3本目の、この『ラスト・ソルジャー』ですが、実は、この3本の中で、最も食指の動かない映画でした。「ジャッキー主演だからしょうがなく見に行った」みたいな感じでしたね。理由は、「ハリウッド製ではない」「舞台が欧米じゃない」「しかも時代物」という、「貴様は本当にジャッキーファンなのか」というようなものが原因でした。ほんと、アジア方面の映画って、全然興味が向かないんですよね(しかも、年々この傾向が酷くなってきてる気がします)。
それでも見に行ったのは、「ジャッキー主演作を劇場で見逃したら、絶対、後に後悔する事になる」と思ったからなんですけど、見てみたら、これがまた、本当に面白い映画で、「見に来て良かった!」と心から思いましたね。
で、この映画の何が良かったかって、もちろん、ジャッキーですよ。ジャッキーの演じるキャラクターと、アクションの見た目の楽しさですね。
今回のジャッキーの役柄は、カンフーの達人というわけではなく、すばしっこいのと、投石が得意なだけの、お調子者の小市民、いや、小農夫というキャラクターで、アクションシーンが始まっても、パンチはもちろん、キックの一つも放たないようなやつです。でも、物凄い体術で攻撃をかわしたりしますし、ユーモラスな動きも入ってきたりしますし、もちろん、小道具も器用に使ってきます。要するに、いつものジャッキーアクションとそれほど変わらないアクションを見せている、というわけですね。
一方、ストーリーは、シリアスに作ろうと思えばいくらでもシリアスに出来るみたいな感じのもので、実際、話が重い方向に行きかける事もしばしばなんですけど、ジャッキーのキャラクターとアクションに宿るユーモア性のおかげで、全体的には、「見てて楽しいエンターテイメント映画」という印象が出るようになっているんです。
で、この、シリアスとユーモアのバランス感覚がかなり絶妙な感じだったんですよね。楽しい所は楽しく、締める所は締めるみたいな、緩急自在な演出は、見てて心地良いぐらいでした。何となく見ているだけで、「これはいい映画だな」というのが直感的に分かる、みたいな感じですかね。で、このバランス感覚というのが、「ラスト〜エンドロールのNG集」の所まで行き渡っていていたのがまた凄いです。
そして、この映画の良かった点の全てに関わっているのが、ジャッキーの存在そのものというわけで、ほんと、偉大な人だなぁ、と改めて思いましたね。この映画同様、見に行くのが面倒だった『新宿インシデント』も、客観的に見れば素晴らしい内容の映画でしたし、やっぱり、例え興味の無い舞台や題材の映画に出ても、この人の映画は見続けないといけないですね(もちろん、DVDとかではなく、劇場まで見に行く、という事です)。
個人的評価 43点 (50点満点中)
◎満足度 ★★★★☆ (見終わった後にどれだけ満足感が残ったか)
◎肯定度 ★★★★☆ (この映画をどれぐらい支持したいと思ったか)
◎評価度 ★★★☆☆ (客観的に評価してみる)
◎おススメ度 ★★☆☆☆ (他の人に勧めても大丈夫そうか)
◎豪華キャスト共演度★★★★★ (この映画ならではの評価ポイント)
映画全般において、エロとグロとナンセンスが高レベルでミックスされた、非常にイカした内容という印象だったんですけど、このクライマックスの異常な盛り下がりのおかげで(上記の理由だけでなく、アクションの撮り方自体も、特別迫力を出そうみたいな意図があんまり感じられない、おふざけの延長みたいな演出のアクションになってるのも、個人的にはガッカリでした)、鑑賞後の印象があんまり良く無いんですよね。これは、『プラネットテラー』を見た時と全く同じなんですけど、もしかすると、私はロドリゲスとはアクション映画の趣味が合わないのかもしれないですねぇ。いい企画とキャスティングの映画を撮ってくれる人なので非常に残念です。
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個人的評価 28点 (50点満点中)
◎満足度 ★★★★☆ (見終わった後にどれだけ満足感が残ったか)
◎肯定度 ★★★★☆ (この映画をどれぐらい支持したいと思ったか)
◎評価度 ★★☆☆☆ (客観的に評価してみる)
◎おススメ度 ★★☆☆☆ (他の人に勧めても大丈夫そうか)
◎最終回度 ★★★★★ (この映画ならではの評価ポイント)
で、そういった諸々の期待を持って本編に臨んだわけですが、まず、「最終作」という面に関してですけど、これが、潔いと言っていいのか、全然最終作っぽくないんですよね。映画全体の雰囲気もラストも、シリーズ後期の印象そのままで、もし「ラスト」と銘打たれて無かったら、「また、やたら強引な手を使ってシリーズ延命を図ったものだ」と感心した事と思います。きっと、もしまだ需要がありそうなら(要するに、予想外に大ヒットとかしたら)また続編を作れるようにという配慮も入ってるんでしょうねぇ。いやぁ、凄い。これこそ、後期『ソウ』ですよ。
もう一点、3Dに関してですが、まあ例によって、「この映画、3Dで見た意味あったのか」というようなものでした。確かに、時々肉片が飛んできたりはするんですけど、このレベルの飛び出し具合なら、2Dで見ても衝撃度は変わらなかったんじゃないかと思います。だいたい、スクリーンの真ん中ではなく、斜め方向に飛んでいくケースがほとんどでしたからね。「血しぶきや肉片がまさに自分に降りかかりそう」というような角度で飛んできていたなら、このレベルの飛び出し具合でも、思わず手を前に出したりとかしたかもしれないんですけどね。
で、こんな大したことない3D化が施されたせいで、鑑賞料金が400円も割増になってるのが何とも、、、。「高い上に、その値段に見合った効果が得られていない」のだから、3Dブームが去るのも時間の問題かなという気がしてくる昨今ですよ。ジェームズ・キャメロンやロバート・ゼメキスといった、3Dに命を懸けてる方々には気の毒な事ですが。
だいたい、この映画、もう前作の段階から「次は3Dになる」と予告していたんですから、てっきり、『バイオ4』みたいに、3D用の機材を使って撮られてるのかと思ってたんですけど、これ、明らかに、「後から3D方式」ですよね。やっぱり、低予算のホラーでは、きちんとした3D映画を作るのは難しいんでしょうかねぇ。後は、この「後から3D」の3D効果が、技術革新で劇的に向上でもしない限り、「3Dホラー」に魅力は感じられませんね。
ちなみに、映画自体が面白かったかどうかですが、ほんと、いつもの通り「残酷なだけ」という内容で、特に語る事もないんですよね。強いて言えば、悪役のホフマン刑事の凶悪さが中々頼もしい事になっていて(「警察署を襲撃」という、ターミネーターみたいなマネをしてましたし・笑)、どちらかと言うと、ジグソウより好きなキャラかな、と思えてきたりしました。ホラーの悪役と言うより、サスペンス・アクション系の悪役という感じですけど。でも、ジグソウの「自分の歪んだ考えを押し付ける」的な、道徳者気取りが無いのは、個人的には好きな点ですね。ジグソウの思想は、何か見ててムカつくんですよね。何と言うか、「自分は世直しのつもりのクレーマー」に通じるムカつきがあって、いい悪役だとは思うものの、他のホラーのヒール連中と違って、どうも好きになれません(ただ、死後、4作に渡って出場し続けるしぶとさは魅力的だと思います・笑)。
あ、あと、この監督のサスペンスの見せ方の手腕は結構いいんじゃないかと思いました。クライマックスの畳み掛けるような見せ場演出は、見ててドキドキさせられました。次はこういう映画ではなく、一般向けのサスペンスアクションとか撮らせたら面白いんじゃないだろうか。緊張感のある、いい映画を撮ってくれそうな気がします。
個人的評価 50点 (50点満点中)
◎満足度 ★★★★★ (見終わった後にどれだけ満足感が残ったか)
◎肯定度 ★★★★★ (この映画をどれぐらい支持したいと思ったか)
◎評価度 ★★★★★ (客観的に評価してみる)
◎おススメ度 ★★★★☆ (他の人に勧めても大丈夫そうか)
◎夢の映画度 ★★★★★ (この映画ならではの評価ポイント)
ただ、あくまでも、「アクション映画ファンにとっては豪華なキャスト」というだけで、大多数の一般客にとっては、大した事の無い面子だとは思います。アクション映画に特別の興味が無い映画ファンにとっては、“やや豪華”程度でしょうかね。何しろ、未公開映画の世界で活躍してる方が数名入ってますし(笑)。
もちろん、出演者に対する知識が無かったり、思い入れが無くても、それなりに楽しめる(アクション大作として)内容ではあると思いますが、やっぱり、この映画を本当に楽しめ、且つ、批評する権利があるのは、最低でもドルフ・ラングレンが何者なのかは知ってないといけないという、そんな特殊な立場の映画だと思います。ドルフを知らない(または名前しか知らない)ぐらいアクションに疎い人がこの映画に対して何を語ろうと、何の説得力も無いですからね。
こう書くと、何だかこの映画を楽しめた自分が選ばれた者みたいですけど、ほとんどの映画には、多かれ少なかれ、こういう面があるとも思うんですよね。例えば、私が『ルーキーズ』やら『踊る大捜査線』なんかを見てつまらないと思ったとしても、原作もテレビシリーズも見ていなく、出演俳優陣にも映画自体にも何の思い入れも無いような奴が見て面白いわけがないので(そういう人を対象に作られてないですからね)、批判をする権利なんか無いというわけですよ。
まあともかく、この映画のメイン客層であるアクション映画ファンにとっては夢の映画であり、公開前から期待していた映画でした。
でもやっぱり、これだけのメンバーをうまく捌く事が出来るのかとか、誰か見せ場も少なく、残念な扱いになってるメンバーもいるのではと不安もありました。あと、映画自体が面白くても、高くなり過ぎた期待値のせいで、素直に楽しむ事が出来ない可能性もあるでしょう。
ですが、恐ろしい事に、特大の期待に負ける事も無く、この豪華メンバー全員にそれぞれ見せ場があり、そして、それぞれの持っている魅力がきちんと出ていたんです。
唯一、ゲイリー・ダニエルズだけは、活躍の場がほとんどありませんでしたが、この人の知名度や俳優としてのランクを考えると、このメンバーの中では、あの程度の出番に止まるのは仕方ないことですし、何よりも、ジェット・リーと一瞬でも一対一で戦う場面が用意されてるというだけでもかなりの快挙なんじゃないかと思います(しかも、後にステイサム&リーの二人がかりの攻撃を受けるという栄誉も与えられましたし・笑)。悪側のボスキャラとして主人公を苦しめた、『TEKKEN』の時よりもむしろいい役だったのではと思います。
あと、ジェット・リーも、本来の強さを発揮していないように思えたんですが、「現実には、あの小柄な体格で大男に勝つなんて無理」という意見もあるようですし、本人もインタビューで以前「映画だから、自分のようなチビが勝てるんだ」的な事を言っていたようなので、この映画のジェットの戦闘力は、実はリアリティのあるものなのかもと思えてきました。でも、動きのしなやかさは相変わらず凄くて、明らかに他のメンバーよりも1段も2段も上の動きを見せていました。ザコ相手には無敵の強さを見せて、さらに「チビネタ」「カネネタ」で笑い、と言うか、ほんわかした空気を作ったりと、キャラクター面の面白さまであったんですから、もう文句は無いでしょう。
初見時に、活躍と魅力の面で引っ掛かったのはこの2人だけで、後のメンバーはもう、完全に持ち味を活かした大活躍といった印象でしたね。
スタローンと同等ぐらいの出番が用意されたステイサムも、代表作『トランスポーター』シリーズと同等の、アクションのカッコ良さとセクシーハゲっぷりが出ていました。他の古参メンバーを差し置いてこんなに活躍シーンが与えられている点に、多少のやっかみを感じてもいいところですが、今現在、「アクションスター」のイメージを持ったまま定期的にアクション映画に出演し続け、身体能力に関しても、アクション演技に関しても、「もし90年代にデビューしてたら、ブルース・ウィリスクラスの大スターになっていてもおかしくない」と思われる人材ですからね。ロック様がコメディに進み、ヴィン・ディーゼルがイマイチの活躍しかしていない今、ハリウッドのマッチョアクションをただ一人引き継いでいる男なわけで、この映画でのこの扱いも大いに納得というものです。
「扱いがいい」と言えば、ドルフの破格の好待遇には、最初見た時は驚いたものでした。まあ、クライマックスの大アクション大会に参加していないメンバーではあるんですけど、ストーリー上、結構重要な役所でしたし、まるで『ユニバーサル・ソルジャー』の時のような、狂気じみた悪役演技を見せる場面があったり、何よりも、「ジェット・リーを圧倒する」という栄誉を与えられているんですからね。俳優としてのランクや、一般での人気・知名度からすれば、普通に考えたら、ドルフがジェットに勝つなんて有り得ないと思います。でも、この意外性がまた面白いじゃないですか。それに、現在の「未公開スターの大先輩」という位置が、ドルフにとって役不足な位置だと常々思っていた私にとって、こんな花道を用意してくれたスタローンには、是非ともお礼を言いたいぐらいです。そして、敢えて勝ちを譲ってくれたジェットの人間としての器のデカさにも感服です。背は小さいけど、器は超巨大だぜ、ジェット!「ジェットに負ける役なのが不服」と言って出演を辞退した某氏とは大違いですな。
また、スタローンのような「地獄からの復活組」であるミッキー・ロークも、アクションには絡まないし、出番もそんなに多くない役所でしたけど、少ない登場シーンがどれも印象的という、中々においしい役でした。また、過去に悔いを残してきているという役柄も、何か、今のミッキーっぽい、イメージに合った役のように思えたものでした。
そして、チョイ役カメオ出演のシュワ&ブルースですが、スタローンと3人が揃う教会のシーンはもう、あまりに感慨深すぎて、平常心で見ていられないぐらいでした。で、この3人のそれぞれのキャラクターが、現実の3人のイメージやこれまでのキャリアを彷彿とさせるものになってるのがまたいいんですよね。
大物感バリバリで羽振りの良さげな雰囲気のシュワに、器用な立ち回りでここまでずっと一線で活躍していて、2人よりも上の立場にいるような雰囲気のあるウィリス。汚れ仕事を現役で続けていて、他の2人より明らかに泥臭いスタローンと。もう、それぞれが突き進んできた道が濃縮されて現れているかのようです。
他、悪役のエリック・ロバーツも、イヤ〜な感じ満点の悪役演技で良かったですし、エクスペンメンバーで、アクション俳優ではない2人も、当初は「誰だこいつらは」とか思っていたものですが、クライマックスでの活躍っぷりが凄過ぎて、もう、今では初登場シーンで顔を見ただけでニヤニヤしてしまうぐらいです。
と、長々と豪華メンバーについて書いてきましたが、この豪華メンバーをそれぞれが光るように配置・演出したのは誰か。そもそも、こんなメンバーが集まる映画を作ったのは、脚本を書き、監督をしたのは誰なのか。そう、アクション映画界の最高神、シルベスター・スタローンです。もう、この人の今世紀の「不可能を可能にする」っぷりは凄まじいですね。ほんと、冗談抜きで神懸かってるぐらいです。この人がいなければ、そもそもこの映画自体、存在してないんですからね。
まず、「監督スタローン」についてですが、『ランボー4』を見た時と同様、「今、最もエキサイティングなアクション映画を撮れる監督」だと改めて思いましたね。特に、クライマックスに最高のテンションのアクションシーンを持ってこれるところが凄いです。当たり前の事のようにも思えますけど、意外と、これをキチンとやれてる人が少ないんですよね。ジョージ・ルーカスとマイケル・ベイぐらいしか思い浮かばないぐらいです。アクション映画や大作映画においては重要な面だと思うんですけどね。最後に派手にドカーンとやって気持ちよく終わってこそのジャンルじゃないですか(ドカーンと言っても、ただ大爆発を起こせばいいというわけではないですよ)。
あと、アクションの見せ方とか、アクションシーンの編集といった演出面も実にいいんですよね。特にこの映画なんて、80年代アクションの再現的な面もある映画なんですから、演出も80年代風になっていてもおかしくないと思うんですけど、でも、それだと『ボーン・アルティメイタム』や『24』を経験している今の観客にとっては、多分、スロー過ぎて迫力の無いアクションに見えると思うんです。例え、CGを使わず、実写の爆破やアクションに拘った絵作りをしていたとしても。
そこを、きちんと、80年代の雰囲気をそのまま出すのではなく、21世紀向けにチューンナップされた80年代アクションとして出してくる辺りのスタローンのセンスの良さですよ。まさに、「80年代爆破アクションと21世紀のハイテンポアクションの融合」といった感じで、新鮮ですらあります。
あと、アクションの見せ方は、巷では結構「見辛い」という話も出ているようで、実際、クライマックスは夜の設定というのと、メンバーがみんな同じような格好をしているという事で、かなり混乱気味ではありました。
でも、この映画のアクションは、流行の、ただ意味も無く画面を揺らせてカットを細かくしてるのとは違うと思うんですよね。まず、揺れは意外とそれほどでもなく、アクションの動きを追って見る事も不可能ではないレベルですし(『ハートロッカー』で酔って以来、画面の揺れに結構敏感になっていた私ですが、この映画では全く酔う気配すら無かったですからね)、定期的に、動きをしっかり追える、画面の動かない静止ショットが挟まれてくるんで、「どういう戦いが繰り広げられているか」がきちんと理解出来るんです。
そして何よりも、ただ意味も無くカットを早く短くしているわけではなく、迫力とスピード感が出るようような、実にリズムのいい編集になっていて、アクションシーンを見ていて、その早さと迫力とカッコ良さにただただ圧倒されてしまいます。
まあ、クライマックスはせめて「昼に行う」か「メンバーそれぞれが区別出来るように衣装を変える」のどちらかはあっても良かったかなとも思いますけどね。
でも、それを差し引いても、クライマックスの大アクション大会は凄かったと思います。メンバーそれぞれの活躍シーン(それも別々の場所で)を、絶妙な流れで一気に畳み掛けてくるんですよね。中には、2ヶ所のアクション同時進行ですら失敗してる映画もあるというのに。
あと、メンバーそれぞれの個性をきちんとアクションに活かして組み込んでる辺りも凄いです。ただ強いマッチョが暴れてるだけのアクションで終わってないんですよね。もう、あらゆる面で「アクション映画としてのレベルの高さ」が限界まで振り切れているかのようですよ。この豪華キャストの映画に相応しい内容ですよね。
一方、俳優として、と言うか、アクションスターとしての面ですけど、今のスタローンの一番の見所、魅力は、やっぱり「とても60代とは思えないマッチョっぷり」だと思います。『クリスタルスカル』のハリソン・フォードは、普通にお爺ちゃん化してながらもアクションを頑張っていたりしましたが、今のスタローンを見て「お爺ちゃん」という印象は全く無いですよね。外見の若々しさも凄いですけど、何か、今世紀に入ってからのジャッキーのような、「この歳でこれだけ動けるなんて凄い!」という驚きがあるんですよね。
やっぱり、アクション俳優にとって、“加齢”は、“観客の飽き”の次にデカい敵だと思いますけど、この「加齢」を、むしろ味方につけているかのような魅力があるんですよね。猛ダッシュを見せるシーンも、若い時とはまた違った迫力が出ていましたし。
そして、自身のキャラクターの「戦闘力」に関しても、多少控え目にされていて、ステイサムの方が全編を通して明らかに活躍しているんですよね。『ドリヴン』の時もそうでしたけど、こう、一歩引いたポジションにいながら、要所要所で、これまでの長い経験があるからこそ出来るような、渋いアクションをしっかりキメてくるところがまたカッコイイんですよね。
特に、この映画のクライマックスの大アクション大会において、仲間メンバーの活躍がそれは凄い事になっているんで、本来なら、印象が薄くなってしまってもおかしくないところだと思うんです。敵の武闘派幹部に一対一で遅れをとるなんて場面もありましたし(でもやっぱり、あの歳であの大男と渡り合おうとする所に凄さを感じたりもするんですけどね)。
そこを、これまでの映画でも見た事の無いような、超高速のマガジンチェンジや、アクション映画史において、西部劇からの伝統芸、早抜き早撃ちを、見てて思わず「おおッ!」と言ってしまうぐらいの速度でキメて、主役、主演としての面目をしっかり保ってくるんですよね。ついでに言うと、このスタローンの見せた技というのが、他のメンバーの技とはまた見た目の面白さも迫力も別ジャンルといった感じなのもいいです。と言うか、メンバーそれぞれが違った面白さのアクションを見せているんで、あの長めのアクションが全く単調化しないんですよね。
一応、ステイサムとジェットが多少被ってる面もありましたけど、ジェットの「見事な体術」と、ステイサムの「ナイフ投げ」「格闘に銃撃を織り込む」という振り付けによって、よく見ると差別化が図られているんです(もしドルフが参加してたら、どういうアクションを見せたのかが気になってしまいます。何か、こちらは無双してた黒人と被りそうな気がしますが・笑)。
と言う訳で、もう全ての面において、アクションバカにはたまらない映画でした。
配役のメンバーが発表された時点から、「これは凄い映画になるに違いない」と相当な期待をかけられていた映画ですが、その、膨らみに膨らんだ期待感にも全く押し潰されない、堂々たる映画を作り上げたスタローンの手腕は、本っ当に凄いと思います。
総合評価 50点 (50点満点中)
◎満足度 ★★★★★ (見終わった後にどれだけ満足感が残ったか)
◎肯定度 ★★★★★ (この映画をどれぐらい支持したいと思ったか)
◎評価度 ★★★★★ (客観的に評価してみる)
◎おススメ度 ★★★★★ (他の人に勧めても大丈夫そうか)
◎娯楽映画のお手本度★★★★★ (この映画ならではの評価ポイント)
内容は、大スターの美男美女が、世界を舞台に大アドベンチャー&ロマンスを繰り広げるという、「中身が無い」と言われれば「まあ、そうですね」と答えるしかないような映画ですけど、こういう、まさにハリウッドでしか作れないような豪華さのある映画というのもいいものじゃないですか。
それに、監督がかの名匠、ジェームズマン・ゴールドだけあって、アクション映画としての質もかなり高いんですよね。確かに、アクション映画はほとんど撮ってない人ですけど、代わりに、「色んなジャンルに手を出し、全て見事にこなしてきた」という実力の持ち主ですよ。いやぁ、さすがゴールドです。シルバーやブロンズではこうはいかなかったに違いない。もうこの人は、実際に、名前を“ジェームズマン”という、ヒーローみたいな名前に変えるべきだと思いますね。
で、この映画の何がいいって、ストーリーから各キャラクターの性格設定からアクションの見せ方まで、全てが「分かり易い」んです。これは、この映画がどういう映画なのかというのを考えた際、重要な要素ですからね。「一部の、頭のいい人だけ分かればいい」というタイプの映画ではなく、老若男女、劇場を訪れた全ての観客に対して、料金分の楽しさ、面白さを提供しなくてはならないという、それは高いハードルの課せられたタイプの映画ですよ。
ただ、トム・クルーズとキャメロン・ディアス、それぞれの代表作数本ぐらいは見ていないと、人物描写の面で戸惑いが出る可能性はあるんですけどね。トム演じるスパイが何であんなにスーパーマンなのかとか、キャメロン演じる一般女性が、何故、ああいう特異な状況にあんなにすぐに対応出来るのか、とか。どちらも、いくらコメディ調の映画とはいえ、現実的には有り得ないような描写なんで、各キャラクターに対して共感とか感情移入がし辛く感じられてしまうかもしれないんですけど、この2人がこれまでどういう映画で、どういうキャラクターを演じてきたかというのを知っていれば、何の違和感も無い行動や言動をしているようにしか見えませんからね。だいたい、トムのキャラクターなんて、イーサン・ハントそのままみたいなものでしたし(笑)。
でも、こういう、言わばタイプキャストな役を、大スターが自ら進んで演じるなんて、このところあまり無かったような気がするんですよね。固定イメージを避ける為に、観客の望まないタイプの役を選ぶスターばっかりになってきた感のあるこのご時勢にこういう映画が作られたというのは、非常に意義がある事だと思いますね。なので、ヒットしなかったのは大変、残念です(5,6年ぐらい前に作られていたら、超ヒットになってただろうに・・・)。
あと、「見易い」と言えば、アクションシーンの見易さも、近年のアクション映画の中では群を抜くぐらいの勢いでしたね。特に、クライマックスのバイクチェイスシーンでのカメラの揺れなさとカットの細かくなさときたら、もう感動ものでしたよ。「カメラを揺らさないだけで、ここまで迫力のあるチェイスが撮れるのか!」と。
ただの一般女性であるキャメロン・ディアスが、急に大事件に巻き込まれ、スーパー・スパイのトムの案内の元、世界数ヶ国を回る冒険の旅に出る、という内容で、アクション映画的には、トムの方が主役という事になるんですけど、見てる側としては、一般人であるキャメロンの方に感情移入してストーリーを追って見ていく事になるんですよね。なので、見ていて、スーパー・スパイ、トムと一緒に世界を回ってるような気分になってきます。
こういう、普段体験出来ないような事を疑似体験出来るというのが、この手のエンターテイメント映画のいい所ですよね。