トロピック・サンダー(ネタバレ感想)

タグ・スピードマンが知恵遅れの役を演じた映画について、「あまりにリアルに演じすぎるとオスカーが獲れない」という話が出てきたのは、「確かにそうかもしれない」と思ってしまいましたね。オスカー会員とか、本物の障害者なんて見たくないとか思ってそうですからねぇ。あんまり本物に近づけ過ぎちゃいけないわけですよ。
あと、その映画が一般的に大駄作という評価だったにも関わらず、敵の村では傑作と崇められてるというのは面白いですよね。例えば、評論家やらブロガーやらが批判してるような映画でも、人によっては(あるいは、見方によっては)傑作になり得るという事ですよ。そもそも、作り手はちゃんと素晴らしい作品をと思って取り組んだであろう映画なんですから、「駄作」なんて言葉は簡単に使ってはいけまんね。
まあでも、これといったメッセージ性があるとも思えないような、全編悪ふざけみたいな映画なんで、この辺りもあんまり真剣に考えなくてもいい所かもしれないですけどね。だいたい、あのラストに突如として登場したマシュー・マコノヒーは何なんだ(笑)。もう、タグ・スピードマンの“気”を感じて瞬間移動してきたとしか思えない登場の仕方でしたからね。ここも、最初に見た時は、最低限のリアリティも放棄したみたいであんまり面白いと思えなかったんですけど、後から、「クライマックスに、突如としてマコノヒーが戦場に湧いてきた」という状況が妙に面白く感じられてきてしまいましたねぇ。

ところで、結局この映画、劇中で死んだのって監督一人だけだったんですよね。あれだけ銃弾やらロケットランチーやらが飛び交う大規模な戦闘が起こっていたのに、誰も死んでないってのは凄いですね。まあ、こちら側が使ってた銃が空砲なせいもあるんですけど、敵の実弾が一発も誰にも当たらなかったとは、もう、この世界では、自分から弾に当たろうと思わない限りは被弾しないんでしょうね。
でも、劇中劇の戦場では頭から血の噴水が出たり、臓物がモロモロ出てきたりと、かなり激しいバイオレンス描写が行われていたのに、現実の(映画の中の現実の)戦場では、ロケットランチャーの攻撃を受けても、ジャック・ブラックが「ケツが!」と言いながらのた打ち回る程度の損害なんですよね。
いやぁ、何かいいですねぇ、平和的で(「バカバカしくて」、と言うべきか)。監督は壮絶な爆死を遂げましたけど、「死んだ」と言うより「景気良く退場した」みたいな雰囲気でしたからね。スピードマンにいじられる生首も見るからにニセモノでしたし(笑)。

さて。実は、かの大スターが脇役で出ていたんですが、これ、この人がこの映画に出てるらしいという話を聞いてなかったら、あのハゲがトム・クルーズだという事にどれぐらいで気付けたんだろうなと思ってしまいますね。「トムがどこかに出ているらしい」と聞いていたんで、もう、あのキャラが出てから2秒ぐらいで「ああ、これか」と分かりましたけど(さすがに、エンドクレジットのキャスト紹介の所で初めて気付いたなんて事にはならないと思いますが)。


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