狼の死刑宣告(ネタバレ感想)

実は、70〜80年代のビジランテ映画、ガン・アクション映画のオマージュに溢れた映画らしいんですが、オマージュ元の映画は見てないものがほとんどのようでした。なので、「懐かしさ」ではなく「新鮮さ」が味わえましたね。
ただ、終盤、バリカンで髪の毛を剃る辺りは「何だか『タクシードライバー』っぽい気がするな」と思ってたら、やっぱりあの映画のオマージュだったらしいですね。この映画、昔一度見てるんですけど、あんまり覚えてないんですよね(まあ、スコセッシ監督作とはあんまり相性がよくないんで、印象に残ってる映画は、今のところ一本も無いんですけど)。
このシーンで、本来なら丸刈りにしたかったであろうところ、絶妙な剃り残しをしていて、当時の主人公の危険な雰囲気がよく現れてるシーンだなと感心したんですけど、これも『タクシードライバー』であった演出なんでしょうかね。
あと、最後の撃ち合いの後、敵のボスとベンチに並んで座るという、実に印象的なシーンが出てきたんですけど、ここも何かの映画のいただきだったりするんだろうか。
まあそれはともかくとして、このシーンで敵から「お前も俺たちと同じところに堕ちた」みたいな事を言われますけど、これがもしセガールなら、「いや、オレの方がもっとワルだ」とか言うところでしょうね(笑)。でも、これに対するベーコンの返答が、“無言で予備の銃を取り出し、狙いをつけて「準備はいいか?」と言う”というのは、多分、セガールの返答と意味としては同じなんじゃないかとか思いましたね。「お前ごときと一緒にするな」みたいな。
いや、本当は、映画のテーマ的には、ここで主人公が悪に染まった事を受け入れるとおかしな事になってくると思うんですけど、何しろ私はもうこの映画は「復讐物アクション」として見てしまってますからね。このジャンルで主人公が「復讐なんてやるものではないな」なんて反省をしたら面白くないんで、ここは勝手な解釈をさせてもらいますよ。
“復讐の連鎖”による悲劇というのを描いてはいますが、同時に、「その連鎖を止める方法は一つ。関わった奴ら全員死刑」という自警団精神も同時に描いている映画なのではないかと、私は思いたいですね。

それにしても、この終盤の展開は燃えましたねぇ。冒頭で、「この家族がどれだけ仲が良くて平和な一家だったのか」をイヤと言うほど見せてきていて、そんな愛する家族を一気に失ったわけですから、見てるこちらとしても絶望と悲しみを感じずにはいられない展開のはずなんですけどね。でも、怒りに燃えるベーコンを思いっきり煽って撮ったりするものだから、悲しみよりも興奮の方が先に来てしまいます。
で、ここから本当に別人(鬼神とも言えるかも)と化すベーコンの気迫の漲りっぷりは、見てて怖いぐらいでしたね。
そして、ワクワクせずにはいられない「銃火器お買い物シーン」を経て、「説明書を見ながら銃の扱いをマスターするシーン」、「バリカンで丸刈り」「銃器装備」「出陣」のこの見事な流れ。これを見て燃えずにいられますかと(この際、ベーコンの体が傷だらけだというのも、主人公の鬼気迫ってる感が出て、実に良いです)。
その後、銃で武装したギャング団のアジトに一人で乗り込んで、敵を全滅させるという、アクションヒーローならば当たり前の事をやり遂げるんですけど、この主人公が「ついこの間まで単なる一般人だった」というのを考えると、ちょっと出来過ぎのようにも思えます。
でも、何しろ敵達とは、気迫も覚悟も殺気も、全てが違いまたしからね。所詮、連中は、仲間とつるんでイキがってるだけの単なるダニにすぎなかったという事ですかね。
あと、それだけでなく、このベーコン演じる主人公、もうアクションヒーローの神か何かが憑いてるとしか思えないようなラッキーを戦闘中に見せるんですよね。
この、怒りの狼モードになる前の段階からして、立体駐車場での戦いに勝利したり、狭い浴室で銃を持った男二人に襲われて生き残るなんていう、アクションヒーローじゃない限り、とても切り抜けられそうも無い局面を生き抜いたんですから凄いです。銃で撃たれても死なずに復活しましたしね(最後、その撃たれた場所である家のリビングに戻って来たというのは印象的でしたね。まるで、復讐を完遂する為に、何か大きな力によって少しの間生かされていたかのようです)。
敵の銃撃も、何発もかわしてましたけど、何か、実際は銃を当てるのは結構難しいらしいですね。ケビン・コスナーの『ワイルド・レンジ』も、至近距離でかなり撃ち合ってるのにほとんど当たらないみたいな銃撃シーンが出てきて、それが「リアリティがある」と評されてましたしね。
一方、ベーコンの方の銃撃はそこそこの命中率でしたけど、これは「主人公だから」なのか、それとも「ちゃんと説明書を読んで勉強したから」なのか(笑)。

最終的に、どうやら次男の方は助かりそうだ、という所で終わりましたけど、出来れば、この次男が、恋人もしくは妻を殺されて復讐の鬼になる『狼の死刑宣告2』を作ってほしいですね(成長した次男役は、今回のベーコンのような絶妙なキャスティングでお願いしたい)。で、今度はこの映画ではやらなかった要素である、「町のダニを掃除して回る」という面を入れて欲しいです。


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