※点数は、独自の基準で弾き出したもので、その映画の「完成度」ではなく「どれぐらい好きか」を表しています。
南極では、人の良心すら凍りつく ホワイトアウト
<WHITEOUT>

 個人的評価 33点 (50点満点中)

 ◎満足度    ★★★★★ (見終わった後にどれだけ満足感が残ったか)
 ◎肯定度    ★★★☆☆ (この映画をどれぐらい支持したいと思ったか)
 ◎評価度    ★★☆☆☆ (客観的に評価してみる)
 ◎おススメ度  ★★☆☆☆ (他の人に勧めても大丈夫そうか)
 ◎ベッキン度  ★★★★★ (この映画ならではの評価ポイント)


「エエもん、めっけた!」 <個人的感想>
製作がダークキャッスルで、舞台が南極の観測所ときたら、そりゃ、CG製の物体Xみたいな怪物が襲ってくるような映画だと思うじゃないですか。
まあ、物体Xもどきは出なくとも、少なくとも、ジャンルは“ホラー”に間違いないだろうと思っていました。いや、正確には、この映画がホラーである事に何の疑問も抱いてなかったんですけど、実際はサスペンス映画だったんですよね。いやぁ、これは意表を突かれました。「衝撃のラスト系」の映画を見た時並の驚きでしたよ。てっきり、ホラー専門の所だと思ってましたからね(ダークキャッスル映画を全部見てるわけではないんですが)。
とは言え、サスペンス系の映画も嫌いではないですし、今年はこの系統の映画もほとんど見てないんで、これはこれで良かったんじゃないかと思います。驚きはしたものの、ガッカリはしませんでした。

この極寒の地で、美人捜査官が殺人事件の捜査をする、という内容なんですけど、謎解きの面に関する面白さ、興味深さというのは、あんまり無かったような気がしますね。ですが、この舞台設定の面白さと、主人公であるヒロインのトラウマに関するドラマ面は良かったです。
主役のベッキンは、過去のある事件が元で心に傷を負っていまして、そのトラウマと自責の念から、自分からこういう僻地での仕事の任を買って出ているという状況なんです。
それが、今回の事件を解決する事で、自らの心の傷と向き合い、それを乗り越えられるようになるみたいな感じの話になっていくわけなんですけど、実のところ、最後まで見ても、「何でこれでトラウマ克服になったんだろう?」と疑問が湧くような、ちょっと納得のいきかねる所があったんですよね。
でもですね。何と言いますか、、、こういう、「有能っぽい雰囲気を出してる美人さん」が、過去のトラウマに苦しむ姿というのに、ちょっと、グッとくるものがあると言いますか・・・。基本的には気丈なキャラなんですけど、中盤辺りで、優しい言葉をかけられて泣いちゃったりとかするんですよね。こういうのをツンデレとか言うんですかいのう。
あと、この人のこれまでの主演作中(と言っても、3,4作ぐらいしか見てないですけど)、今回が最も美人に見えたんですよね。で、そんな容姿の人が、劇中、結構酷い目に遭うのがねぇ。大きな声じゃ言えないですが、楽しくてしょうがなかったんですよね。実は、こう見えて下衆ですからね、私は。「下衆なんでゲスよ」みたいな。
特に、回想シーンでの「洗面所の鏡に頭を叩きつけられるシーン」は、「巻き戻してもう一回見たい」とか思ったものでした。私が巻き戻さずとも、同じシーンが後に何回も出てきましたけどね(監督も私と同じ穴の狢か)。

まあ、これ以上、「オレがいかにド畜生なのか」を語っても、何もいい事無いと思うので話を変えますが、上で挙げた「この映画の良い点」のもう一方である、「舞台設定の面白さ」ですけど、何しろ、かなり特異な場所なんで、普通の地が舞台の映画には無い見所とか演出とかが出てくるんですよね。
特に、猛吹雪が訪れると、飛び交う雪によって、もはや目の前さえも見えなくなるという、“ホワイトアウト”の場面を、犯人の襲撃や対決に絡めた辺りは、かなり見応えがありましたね。
ロープ伝いにしか移動出来ないうえに、もしロープから手を離したら、強風で吹っ飛ばされるという、この恐ろしい状況。サスペンス映画でもアクション映画でも、終盤で犯人と格闘する映画は多々ありますけど、この状況での対決は滅多にお目にかかれないものですからね。

と言う訳で、かなり地味目で、ストーリー面にも特にこれといった所の無い映画でしたけど、他の面に色々と面白い点があったので、全体的には、楽しめる映画でした。


誰も見たことのない彼に逢える。 マイケル・ジャクソン THIS IS IT
<THIS IS IT>

 個人的評価 50点 (50点満点中)

 ◎満足度    ★★★★★ (見終わった後にどれだけ満足感が残ったか)
 ◎肯定度    ★★★★★ (この映画をどれぐらい支持したいと思ったか)
 ◎評価度    ★★★★★ (客観的に評価してみる)
 ◎おススメ度  ★★★★★ (他の人に勧めても大丈夫そうか)
 ◎神度      ★★★★★ (この映画ならではの評価ポイント)


「とぅ!」 <個人的感想>
2,3ヶ月前から私の中で巻き起こりだしていた、大マイケル・フィーバーもいまだ継続中という事で、ワクワクしながら映画館に駆け付けたのですが、完全に期待通り、いや、期待以上の凄いものを見させてもらいました。
確かに、超にわかファンではあるんですけど、にわかでも、この映画の公開には追いつけたんで良かったと思います。使用された曲もほとんど知ってましたし(『スリラー』以前のはほとんど知らないんですけど)、「マイケルのライブがだいたいどういうものか」というのも、唯一出ているライブDVDを見ていて、感じが掴めていましたし、もう何の問題も無く楽しむ事が出来ました。

内容は、ライブのリハーサル風景という事で、映画のDVDの特典映像に入ってるメイキングを見てるような感覚でしたね。演出面を舞台上で、即興に近い感じで形にしていく作業はかなり興味深かったです。興味深いと言えば、こういうクリエイティブな面で、マイケルの人となりが垣間見られたのは面白かったですね。ほんと、怒ったり怒鳴ったりとかしない人なんですね。喋り方が穏やかだから、実際は怒っててもそう見えないのかもしれないですし、何よりも、本人が「これは怒ってるんじゃない。愛だよ」みたいな事を言ってましたしね(笑)。
で、そんな、周りの全ての人に愛を持って接しているかのような態度で、プロフェッショナルな仕事をしている姿というのが実にクールでカッコいいです。
そして、マイケルだけでなく、関係者全員が「最高のものを目指そう」という心意気を持っているんですよね。何しろ、マイケルを尊敬していて、尚且つ、その分野のトップにいるような凄い連中が揃ってるわけなんですから。「これは凄いのが出来上がるぞ」と思ってしまいます。結局、完成形を見る事は叶わなくなってしまいましたが・・・(完成したとしても、DVD化されない限りは結局見られないんですけどね)。

とてもリハーサルとは思えないぐらいの気合の入ったステージが出てくるわけですけど、もう、この人達クラスになると、リハーサルの段階で、その辺の連中の「リハーサルにリハーサルを重ねたうえでの本番」を凌ぐ凄味があったりするんでしょうねぇ。
それに、この映画の場合、大量のリハーサル映像の中からいいのを抜き出していたりするんでしょうから、それはもう、「これでリハーサルか!」思うような事態になってしまうわけですよ。
あと、今回のこの映画を作るに当たって、練習場面とか、関係者へのインタビュー場面とか、本来ドキュメンタリー映画ならメインに来そうな部分がかなり少なめで、代わりに、「いい仕上がりに終わったリハーサル映像」をメインに持って来ているんですよね。なので、「もし実現したらこんな感じになる」というのに限りなく近い形の映像化になってると思わせてくれるこの構成はかなり良かったですね。そもそも、こういう内容こそ、見る前に「こうなっていたら」と期待していたものなので、もう大喜びでしたよ。歌が途中で途切れるような事もほとんど無かったですし。「合間にメイキング映像が入ってる、ライブDVD」を見てるみたいでしたね。
と言う事で、当然、マイケルの歌やダンスといったパフォーマンスもたっぷり出てくるわけですけど、これを見て改めて、「マイケル・ジャクソンがいかに凄い人だったのか」というのが感じられましたね。大いに驚嘆したものでした。
まず、ここ数年の、裁判で揉めてた辺りの映像とか見ると、何かもう、歩くのもやっとみたいな感じだったじゃないですか。「もうこの人は踊るどころの話じゃないんだな」と思ったものでしたけど、それが、世界最高峰レベルのトップダンサー軍団の中に混じって(と言うか、その連中の先頭に立って)ダンスをしてる姿に、何の違和感も無かったんですからね。あのバックダンサー軍団、きっと年齢もキャリアも、ダンサーとして全盛期みたいな人達なんですよね。素人目で見ても判るぐらい、動きのキレやスピードがハンパじゃなかったですから。で、ただでさえ50歳という、激しいダンスをやるには高齢に達してる人だというのに、そんな凄い連中と一緒になって踊れるなんて凄過ぎでしょう。

ダンスも凄かったですけど、歌の方にも驚かされましたねぇ。歌う所はほとんど、その場で実際に歌っている生歌だったんですけど、CDと比べても劣化してる感じがほとんど無いんですよね。と言うか、このリハーサルで歌ってるのをそのまま収録してCD化しても、今まで出ていたCDの歌と聞き比べてもほとんど遜色無いんじゃないかと思うぐらいですよ。もう、いつ歌っても常に一定のクオリティの歌が歌えるという事なんですかねぇ。
そして、ステージ上の演出面も、相変わらずかなり凝っているようでしたね。『スムーズ・クリミナル』や『スリラー』とか、まるで新作ショートフィルムを見てるかのような、それはカッコイイ映像が作られていたようで。特に『スリラー』なんて、3D版だとか言うじゃないですか。映画じゃなくて、ライブで3Dをやるって、どんな発想だよ(笑)。
未完成だからなのか、リハーサル段階だからなのか、新撮の映像は全部は流されませんでしけど、「是非とも完全版をDVDで見たい!」と思ってしまいましたねぇ。実際には新作ショートフィルムではないんで、完全版は存在しないんでしょうけどね(ステージ上のマイケルと絡むのが完全版という事になるわけなんでしょうし)。

と、色々な面で驚きの連続という感じで、改めて「もしマイケルが存命だったなら、物凄いライブになっていたに違いない」と思わずにはいられませんでした。一方で、「マイケルの体力は最後まで持ったんだろうか」という不安も出てくるようなボリュームでしたけどね。


あの惨劇の続きを観る勇気があるか──。 REC/レック2
<[REC]2>

 個人的評価 29点 (50点満点中)

 ◎満足度    ★★★★☆ (見終わった後にどれだけ満足感が残ったか)
 ◎肯定度    ★★★☆☆ (この映画をどれぐらい支持したいと思ったか)
 ◎評価度    ★★★☆☆ (客観的に評価してみる)
 ◎おススメ度  ★★★☆☆ (他の人に勧めても大丈夫そうか)
 ◎アパート度  ★★★★★ (この映画ならではの評価ポイント)


「子守は大変だぜ!」 <個人的感想>
前作『REC』のラストから、そのまま話が繋がっている続編であり、監督も同じなら、舞台も同じアパート。と言う事で、前作が好きな人(私含む)にとっては、「もう一度あの恐怖を体験出来る!」と、つい喜んでしまいがちなんですが、残念ながら、前作ほどのインパクトも恐怖もありませんでした。
もちろん、人によっては、今回も前作同様の恐怖を感じる事も出来るとは思います。何しろ、やってる事はほとんど一緒なんですからね。POV撮影によって、「まるで自分も当事者としてその場にいるような臨場感」というのを味わう事が出来ます。
でも、「やってる事は前作と同じ」という事は、この手法による恐怖感に対する耐性がこちら側に備わってしまっているというわけで、「同じ映画の2度目の鑑賞」の時のような新鮮味の無さが感じられてしまいます。
それに、やっぱりこの主観撮影の手法って、どうしても演出が一本調子になりがちだと思うんですよね。編集やカメラワーク等を工夫した考え抜かれた演出に比べて、「何度見ても怖い」という感覚が出ずらいと思うんです。
では、前作を見ていなければ新鮮に楽しめるのかと言うと、その場合は、ストーリー面で意味が分からない面が出てきてしまうんで、やっぱり、前作は見ておく必要があると思うんですよね。
さらに、今回の登場人物は、武装したSWATの方々で、前作のような一般人ではありません。対抗する為の武器もあるんで、どうしても、感染者襲撃シーンの時の恐怖感や絶望感が低めになってしまいます。
その代わり、銃をバリバリ乱射して感染者軍団を掃討するみたいな、アクション映画的爽快感が加わっていればいいんですが、その点も期待するほどには出てきません。そもそも、今回のSWATの方々より、前作のハゲの消防士の方がよっぽど強くて頼りがいがあるぐらいでしたからね(笑)。

何だか、マズい点ばっかりの映画みたいですけど、基本的には「前作よりもやや劣る」ぐらいの面白さはあると思うんです。ただ、まあ、前作が良かっただけに、そして前作とほとんど同じ作りであるだけに、「物足りない感」がより強く感じられてしまうんですよね。
ちなみに、前作から新たに加わった新要素というのも一応あります。
一つは、カメラの台数が増えたという事。前作はパブロの持っていた1台だけでしたが、今回は、メインのカメラの他、隊員のヘルメットにも小型カメラがついているんで、より色んなアングルから事件を見せる事が可能になる、という設定のはずなんですけど、何故か、恐怖演出にはほとんど絡んできませんでしたし、そもそもこのヘルメット・カメラの映像が出るシーン自体が少なかったんですよね。何か、もっとうまく使えなかったのかなぁ、と思ってしまいます。
で、もう一つは、悪魔系オカルト風味が加わってきた事。実は、この映画の感染者は、『28日後』を始めとする、他のゾンビ映画の感染者とはまた違った性質を持っていた事が判明するんです。
ここは、きっと賛否分かれる点だと思いますね。リアリティが損なわれる結果になりますから。そもそも、“ゾンビ”にある程度のリアリティを持たせたのが“感染者”であり、それを現実味たっぷりなPOVで撮りあげたのが前作だったのに、ここにきて絵空事感の強い要素を放り込んでくるなんて無謀な真似のように思えます。
でも、私は、今作には前作で感じたような衝撃が得られそうも無い以上(このスタッフ、この舞台、この手法の映画に対して耐性が出来てしまっている為)、何か違う要素というのは入っているべきだと思いますし、ゾンビ映画に悪魔系オカルト要素を組み合わせるというのは珍しくて面白いと思います。いや、「ゾンビとオカルトの組み合わせ」と言うと、ブードゥーが出て来る姿が思い浮かんでしまうんで、「感染者映画とオカルトの組み合わせ」と言うべきか。

と言う訳で、面白い映画ではあったんですが、「『REC』の続編!」と言うより、「『REC』のおまけ」と思っていた方が評価の出来る映画かな、という気はしましたね。


この娘、どこかが変だ。 エスター
<ORPHAN>

 個人的評価 38点 (50点満点中)

 ◎満足度    ★★★★★ (見終わった後にどれだけ満足感が残ったか)
 ◎肯定度    ★★★★☆ (この映画をどれぐらい支持したいと思ったか)
 ◎評価度    ★★★☆☆ (客観的に評価してみる)
 ◎おススメ度  ★★★★☆ (他の人に勧めても大丈夫そうか)
 ◎サプライズ度 ★★★★★ (この映画ならではの評価ポイント)


「邪魔するヤツは、、、
殺す!」 <個人的感想>
若い夫婦が孤児院から養子を引き取ったら、その子供はとっても恐ろしい子でした。という内容なんですが、そのおおまかな内容から「面白いホラー」が出来上がる姿というのがあんまり想像出来なくて、特に興味を持ってませんでした。 でも、せっかくホラー系の映画がシネコンで上映されるんだから見てみるかぐらいの気持ちでいた所、何やら、ラストにはかなり予想外の真相が出てくるらしいなんて話もあるようじゃないですか。
「ならば、ラストまでにその驚きの真相を見破ってやろうではないか」と気張って臨んだんですが、結局、クライマックスで真相が語られた時は「うぉっ!マジかよ!」と大変驚くという結果になりましたとさ。
元々、「ラストのどんでん返しありき」というタイプの映画ではないんで、そんなに捻った展開が出てきたというわけでもないと思うんですよね。むしろ、「いい所をついてきたな」みたいな感じで、感心してしまいましたよ。そしてそれと同時に、この真相を知ると、怖さが一気に増すという所も面白いです。
例えば、ホラー映画で「怖い子供」が出てきた時、何故その子供は怖いのかという理由には、子供ならではの無邪気さが残酷に結びついてしまっただとか、悪魔が関わっていただとか、目が光るだとか、そういった辺りになりそうなものですけど、そのどれでもないんですよね。

さて。その「怖い子供」ことエスターは、一見、可愛くて聡明な少女なんですが、その裏には恐ろしいサイコの顔が隠れているんです。
最初の頃は、家族にも観客にも裏の顔は見せてこないんですが、「普通の子とちょっと違う所がある」という気配は漂わせています。話が進むにつれて徐々に危険な面を見せ始めてくるんですが、それは観客と一部の登場人物のみに見せているもので、表面的にはまだ「可愛くて聡明な少女」を装っているわけです。
で、エスターの危険な面が表面に出てくるのに比例して映画の怖さも上昇していく事になり、話が進めば進むほど怖くなっていくという流れになってるですよね。正直、前半はちょっと退屈だったんですけど、中盤辺りからは、もう、どんどんと引き込まれていってしまいました。年端もいかぬ少女が、ハンマーで大人を撲殺するという、結構衝撃的な映像も登場してきたりします。
そしてクライマックス、驚きの正体が明かされた所で怖さもピークを迎えるわけですよ。実に見事な展開ですね。

ちなみに、「養子をもらう」=「子供がいない家庭」というのが当たり前だと思っていたんですが、この一家はすでに子供が二人もいるのに(もちろん、実の子供)養子をもらうんですよね。何か、私にはちょっと理解しかねるところなんですが、きっと向こうではよくあるケースだったりするんでしょう。
で、エスターは、子供二人に対しては割と早くから裏の顔を見せるんですが、それを親にバラされない為に、しっかりと脅しつけておくんです。
この脅しのテクニックとか、大人に正体を悟られない為に要領よく振舞う所とか、絵やピアノ等にかなりの才能を見せる所とか、ほんと頭がいいんですよね。かなりの頭脳派&策略家です。
2回目の鑑賞時とか、エスターの目線で、「いかにして家族を騙していき、そして邪魔物を消していくか」といった角度から見ていったら、また違った面白さが味わえそうな気がします。
話の真の主役である母親は、エスターの正体に(と言っても、ラストで出てくる本当の意味での正体ではないですけど)気付き始めていき、それがいよいよ確信に変わるような出来事も出てきたりするんですけど、実はこの母親には「アル中」という前科がある為、証言を信用してもらえないという枷があったりするんですよね。これがまた「もどかしい」と思うと同時に「うまい設定だな」とか思ってしまいましたねぇ。
一方、父親の方はエスターがいい子である事を全く疑おうとせず、妻の言う事は全く信じようとしません。とは言え、まあ、常識的に考えたら、あんな年端も行かぬ少女が「家族にとって脅威」なんて有り得るわけがないですからね。我々はエスターが恐ろしい存在だという事を知っているので、父親の態度は非常にもどかしいしイライラさせられるんですけど、現実的な対応ではあるんですよねぇ。まあ、それぐらい、エスターは父親の方には尻尾を掴ませないように慎重に行動し、結果、父親を手玉に取るみたいな状況に持っていってしまってるんですよね。いやぁ、恐ろしい奴です。
これが、この夫婦に子供がいない設定で、エスターが一人娘として貰われてきたのなら、「大人の女性が、女の子に追い詰められて行き、家庭内に居場所が無くなる」みたいな感じの話になる所ですけど、この映画の場合はそれだけでなく、「実の子供二人が、もう何をされるか分からない状況におかれている」という危機感があるんですよね。主人公である母親がなんとか頑張らないと、下手したら子供達に危害が及ぶどころか、下手したら殺されかねないというわけで、後半は、ストーリーにかなりの緊迫感が出ていましたね。

と言う訳で、全く期待も何もしていなかった映画ですが(何か、突如公開が決まったみたいな感じで現れてきましたからね)、「意外な拾い物」といった感じの、お得な一品でした。


愛する家族を守るために
街のダニども 全員死刑に 処す 狼の死刑宣告
<DEATH SENTENCE>

 個人的評価 50点 (50点満点中)

 ◎満足度    ★★★★★ (見終わった後にどれだけ満足感が残ったか)
 ◎肯定度    ★★★★★ (この映画をどれぐらい支持したいと思ったか)
 ◎評価度    ★★★★☆ (客観的に評価してみる)
 ◎おススメ度  ★★★★☆ (他の人に勧めても大丈夫そうか)
 ◎アクション度 ★★★★★ (この映画ならではの評価ポイント)


「ダニ退治用の殺虫剤を買ったぜ」 <個人的感想>
愛する家族を殺した憎き犯人(=ダニ)に対し、「法に代わって、おしおきよ」としゃれ込むという、いわゆるビジランテ物映画の最新作ですが、実は製作は07年なんですよね。同じ年の『ブレイブワン』はあっさり公開されたのに、なんでこちらはこんなに日本公開が遅れてしまったんでしょう。思えば、『エコーズ』もかなり長い事蔵に入ってましたし、「ベーコンが主演をすると、日本公開が遅れる」というジンクスでもあるんでしょうか。
まあ、ともかく、こうして無事に公開されて良かったです。と言っても、恐ろしく小規模な公開なうえに、これまで行った事の無い映画館まで出向くハメになりましたけどね。

で、その内容ですが、『狼よさらば』にしろ、『ブレイブワン』にしろ、主人公の標的は、家族を襲った真犯人ではなく「町を徘徊するダニ共全て」でしたけど、今回は実行犯のグループのみが対象になっていましたし、必ずしも私刑全肯定という話ではなかったりするという事で、実は、私がこの手の映画に求めてる物が少々希薄ではあったんですよね。
ですが、その代わりに、目を見張るほどのド迫力なアクションシーンが入っているではないですか。それこそ、『ランボー4』以来の興奮と衝撃を伴った、それは凄いアクションシーンでして、もう、見ててシビれまくりでした。
それも、『96時間』のリーアム・ニーソンのアクションを見て、「こういう、普段アクションをやらない人のアクション映画も新鮮味があっていいな」と思い、「例えば、ケビン・ベーコン辺りがアクション映画やったら、新鮮味があって面白いんじゃないだろうか」と思っていた矢先のコレですからね。
ただ、ベーコンの役どころは、戦闘のプロとかではなく、それどころか戦闘の経験皆無の一般人です。職業も保険会社の重役か何かで、「仕事で培った技能が後に役立つ事に」なんて事にもなりません(ただ、仕事で稼いだ財力は後に役立つ事となりましたが)。そして、ベーコン自体、アクション系映画の経験はほとんど無しです。
で、そんな男が、血みどろの復讐劇を繰り広げる所に、何とも言えない迫力があるんですよね。しかも、その定評ある演技力でもって「素人が、怒りの情念だけで戦っている」みたいな気迫を感じさせる演技を見せているんですからたまりません。
その「復讐の狼モード」になるのがかなり遅いんですけど、その分、それまでの「一般人ぶりを見せるベーコン」の印象が脳にしっかり浸透するんですよね。なので、後に怒りの狼モードに変化した際に、そのギャップに驚きがと興奮があるんです。「うわ、何か手が付けられないほどキレてる」と、「さあ、いよいよ始まったぞ!」みたいな感じで、見てて大盛り上がりです。
ちなみに、感情をあまり表には出さずに怒りを表現する、という演技で、佇まいは静かな雰囲気なんですけど、もう、表情から「危険臭」が漂いまくってるんですよね。この人は悪役も多いですけど、今回の役が一番デンジャラスだったのではと思います。

あと、狼モードになる前の段階での、ギャング団から襲撃を受けるシーンで見せる「逃走」やら「必死の反撃」を試みるシーンも、かなりアクションのテンションが高いんですよね。しかも、中には長回しのアクションシーンなんてのを挟んできたりしますし。元々アクション要素のそんなに高くない映画だと思って見ていたんで、大いに驚かされたものでした。
それに、ここで襲われてるのは、武装したキレた狼ではなく、当時はまだあくまでもただの一般人なので、緊張感が半端じゃないです。アクション俳優と違って、安心して見てられないですからね。

一方、上でも書いたように、復讐や私刑を肯定しているわけではないというスタンスの映画なので、ストーリー的には、アクション映画的爽快感というのは無いんですよね。最後には、虚しさとか悲しみなんかが残るようになるんですけど、でも、アクション演出が恐ろしくレベルの高いものだったので、高揚感も同時に残ったりもするんです。
なので、見終わった後はもう、色んな思いが渦巻いてましたね。そして、最終的には「物凄い映画を見た」という満足感が出てくるわけですよ。これは間違いなく、ケビン・ベーコンの代表作の一つになるでしょうね。

(ネタバレ感想有り)←読みたい人はクリックしてください



充電しないと、即停止。 アドレナリン:ハイ・ボルテージ
<CRANK: HIGH VOLTAGE>

 個人的評価 50点 (50点満点中)

 ◎満足度    ★★★★★ (見終わった後にどれだけ満足感が残ったか)
 ◎肯定度    ★★★★★ (この映画をどれぐらい支持したいと思ったか)
 ◎評価度    ★☆☆☆☆ (客観的に評価してみる)
 ◎おススメ度  ☆☆☆☆☆ (他の人に勧めても大丈夫そうか)
 ◎異常度    ★★★★★ (この映画ならではの評価ポイント)


「食事の時間だぜ」 <個人的感想>
最初に、『アドレナリン』に続編が作られると聞いた時は悪い冗談かと思ったものでした。だって、ラストで主人公が明らかに死亡したんですからね。これが、「2作目は主人公が違う」とか「前作の主人公の双子が出てくる」とか、あるいは「前作よりも前の話だ」とかならまだ分かるんですけど、本当に、前作と同じキャラが「実は生きていた」という事で出てくるんですからね。
ですが、実はここがミソなんですよね。要するに、「前作のラストでヘリから落ちて死んだはずの主人公が実は生きている」という、この前提を受け入れられる人向けの映画なわけなんです。
そして、そんなアホみたいな設定を受け入れられるような人が対象なんですから、もう、製作側としても「今回は手加減無用」というわけですよ。前作も相当ぶっ飛んだ内容だったんですけど、その前作が大人しい映画だったと思えるぐらい、徹底的にハジけきった、「バカ、ここに極まる」みたいな映画になってしまっているんです。
で、この超異常な飛ばしっぷりが、個人的にかなりツボでしてねぇ。やっぱり、ある方面で突き抜けた面のある映画っていいですよね。それが例えおかしな方面であれ、どこか清々しくて気持ちいいという感覚が得られるんです。
この映画も、「もう何でも有りの世界だ」みたいな感じで、登場キャラ達もリミッターの外れまくった行動を見せてくるんですけど、それが、軽いストレスぐらいなら消し飛ばしてくれそうなぐらい、見てて爽快なんですよね。かなり過激なエロとグロが出る、悪趣味でナンセンスな映画ですけど、「何て素敵な映画なんだろう」とシミジミ思いましたね。

そんな内容なんで、全てがギャグみたいな感じなんですけど、そのギャグがどれもこれもいちいち面白いんですよね。もしかしたら、今年見た映画の中で一番笑えたかもしれません(コメディの『イエスマン』といい勝負だったと思います)。バカをやってるシーンだけでなく、「これはセンスある演出だな」と普通に思えるギャグシーンというのもありましたしね。
あと、監督始め製作陣や、出演陣ともども、「きっと楽しくやってるんだろうな」というのが映画全体から感じられるのもいいです。と言うか、ほとんどフザケ半分で作ってるとしか思えないような内容ですからね(笑)。
でも、こういう映画の企画がちゃんと通って、ジェイソン・ステイサムのような有名スター主演で製作されるというのは素晴らしい事だと思いますよ。
実は、前作を見た時は「ステイサムも、よくこんな、誰にも自慢出来そうにも無い映画に出る気になったな」とか思ってたんですけど、今回は、「こういう映画に出られるスターって、いいな」なんて思ってしまいました。受け入れられない人にとっては全く受け入れられない映画ですけど、好きな人にはたまらない映画ですからね。そういう、狭い(と思われる)対象を相手にこんなに体張れるなんて凄いと思いますよ。
ステイサムも凄いですけど、エイミー・スマートの方はもしかしたら、もっと体張ってたかもしれないですね(笑)。こっちはこっちで、「こういうバカに理解のある女優って、いいな」なんて思ったものでした。


2年間の“沈黙”を破り、無敵のオヤジが帰ってきた! 沈黙の逆襲
<THE KEEPER>

 個人的評価 47点 (50点満点中)

 ◎満足度    ★★★★★ (見終わった後にどれだけ満足感が残ったか)
 ◎肯定度    ★★★★★ (この映画をどれぐらい支持したいと思ったか)
 ◎評価度    ★☆☆☆☆ (客観的に評価してみる)
 ◎おススメ度  ★☆☆☆☆ (他の人に勧めても大丈夫そうか)
 ◎セガール拳度★★★★★ (この映画ならではの評価ポイント)


「おんどりゃあ!」 <個人的感想>
最近のセガール映画でよく見受けられる問題点の一つに、「スタントダブルを使い過ぎる」というのがあります。危険なシーンだからスタントマンに任せているというのならしょうがないと思いますが、特に危険でもなんでもない、普通のアクションシーンにおいてもスタントダブルが大活躍するなんて事もあったりしました。
もはや「アクションの立ち回り等に力を入れる」というのが面倒臭くなってきちゃったんでしょうかね。得意のセガール拳を使う場面でも、昔のような凄味はほとんど無くなってしまいました(こちらは、「映し方が悪い」というケースも多々あるんですが)。
それでも、無敵度だけは相変わらずなので、結果として、「セガールはほとんど動いてないのに、敵の方からバタバタ倒れていく」と言っても過言ではないようなアクションシーンが出る事が多くなってきていたんです。
今や、マット・デイモンですら「本当に強そうに見える格闘アクション」を見せる時代だというのに、この分野で最強の男が手を抜いているというのが残念でしょうがないです。結局、今のセガールの強さというのは、格闘アクションの腕前ではなく、過去の威光でもってるみたいなものなんですよね。

と、そんな状況で登場したこの『沈黙の逆襲』ですが、「まだまだ、やれば出来る!」というのを見せつけてくれる、実に頼もしいアクションを披露してくれるじゃないですか。
以前の、「これは、誰も敵わない!」と、見てるだけでその強さが実感出来るような見事なアクション捌きを見せてくれるんです。もう、ほんと隙が無いんですよね。どこから攻めても軽くいなされそうな威圧感もあって、久々に、セガールに真の「無敵」を感じたものでした。
実のところ、アクションシーン自体結構少な目なんですけど、この合気道の匂いのするセガールアクションが見られただけでも元は十分とれるぐらいでした。

ストーリーの方は、「セガールがボディガードをやる」というものですけど、少々、盛り上がりに欠けるような感のあるものでした(つまらなくはないんですが)。ですが、護衛をする対象の女が、ケビン・コスナーの『ボディガード』で出てきたようなムカつくビッチではなく、割と物分かりのいい人だったのは幸いでした。それどころか、かなりの信頼感を寄せる事となります。いくら最強のボディガードとはいえ、若い女にとっては、セガールみたいな外見のオヤジに四六時中ついてこられたら気持ち悪がりそうなものですが、そんな素振りは全く見せません。この「セガールが若い女に懐かれる」というのは、なかなか面白い画ではありましたね(笑)。
ちなみに、今回のセガールは「元刑事」という設定で、ボディガードの経験なんて無さそうなんですけど、そこは「セガール演じる主人公」なんで、要人の護衛に関する知識と技能を当たり前のように持ち合わせているわけです。でも、その「プロっぽさ」というのがあんまり表現出来てなかった気がするんですよね。だいたい、途中でまんまと対象の誘拐を許してしまいますし(地元警察に邪魔されたからという理由もある事はあるんですが)。
せっかくセガールが主役なんですから、任務を余裕でこなしてしまう様というのを見てみたかったですね。「途中でさらわれるけど、ラストで奪還する」なんて、セガールじゃなくても誰でも出来る事じゃないですか。

一方、アクション面には「セガールならでは」な所があったのは良かったです。例えば、ナイフを持ったチンピラをシバき倒した際のセリフとか、ラストバトルの相手をぶち殺す前に言ったセリフとか。他のアクションヒーローなら(例えアンチ・ヒーロー系でも)酔ってても言わなそうなセリフでしたからね(笑)。
あと、護衛の対象がちょっとしたトラブルに見舞われた際に、それを武力でサクっと解決してみせて信頼を得るみたいなのは他のボディガード物でも定番で出て来そうな展開ですが、そこで見せる「全くの危なげ無さ」と「過剰な暴力」もセガールならではな点でしょうね(笑)。

ちなみに、冒頭で「セガールが相棒に銃で撃たれて瀕死の重傷を負う」というシーンがあるんですけど、てっきり、この撃った相棒が「今回のセガールの倒すべき敵」なのかと思っていました(それこそ、コイツが最終的なボスキャラになるんだろうなと)。でも、この事件は序盤であっさり解決してしまうんですよね。
この同僚に対して復讐をするから『沈黙の逆襲』なんて邦題がついたのかと思ったんですが、まさか、この冒頭が、メインストーリーとほとんど切り離された、丸々カットしても痛くも痒くも無いパートだったとは(笑)。
まあ、セガール以外なら間違い無く死亡確定な撃たれっぷりにも関わらず、普通に生還するという展開は実に素敵でしたけどね。しかも、「昏睡状態からいつ醒めるのか分かりません」と言う看護婦のすぐ後ろでもうモゾモゾと動いてましたし(笑)。『ハード・トゥ・キル』の時は覚醒まで数年掛かったものでしたが、あれから無敵度がかなり上がったようで、ほぼ数時間程度で覚醒したようです。
今世紀に入ってから、時々、「撃たれて、生死の境をさまよう」という展開を出してきますけど、どういう風の吹き回しなんでしょうかね。自分も人並みだという事をアピールしたいんでしょうか。結局、「どんなに撃たれても死なない」という、無敵性の強調みたいな感じになってるんですけど(笑)。
ジェット・リーやジェイソン・ステイサム、キアヌ・リーブスなんかは「銃弾を避ける」という事で強さを表現している事がありましたけど、この人は「撃たれても死なない」という事で強さ(と言うか、無敵さ)を表現しているんですね。


このオヤジ、
ゾンビ斬る。 斬撃 −ZANGEKI−
<AGAINST THE DARK>

 個人的評価 48点 (50点満点中)

 ◎満足度    ★★★★★ (見終わった後にどれだけ満足感が残ったか)
 ◎肯定度    ★★★★★ (この映画をどれぐらい支持したいと思ったか)
 ◎評価度    ★☆☆☆☆ (客観的に評価してみる)
 ◎おススメ度  ★★☆☆☆ (他の人に勧めても大丈夫そうか)
 ◎夢の組み合わせ度★★★★★ (この映画ならではの評価ポイント)


「これ、ゾンビ斬れますよぉ、これ。今晩使いますよ。」 <個人的感想>
セガールファンでありゾンビ映画ファンである私にとって、「セガール主演のゾンビ映画」なんて、まさに“夢の映画”です。あまりに夢過ぎて、妄想の中でしか実現し得ないと思っていて、この映画にゾンビが出ると最初に聞いた時も「ウソに決まってる。そんな事言って、どうせ見たらゾンビじゃなくてヴァンパイアが出てくるんだろう」とか思ってました。と言うのも、確か、この映画の第一報が「セガールとヴァンパイアが戦う」というものだったんですよね。
で、そのまま予告編も見ずに本編を見る事になったのですが、何と、本当にゾンビが出ているじゃないですか。いや正確には“ゾンビ”ではなく、“感染者”ではありましたけど、同じく感染者が人を襲う『28日後』や『REC』も一般にはゾンビ映画の範疇に含まれてるものですし、そもそも映画の作りがゾンビ映画のそれでしたからね。
この『斬撃』も、完全にゾンビ映画のフォーマットの上で作られていまして、感染者は人を襲って食いますし、一噛みされただけで感染者の仲間入りしてしまいますし、かつての仲間が襲ってきますし、何よりも、外見がゾンビそのものです。
それだけでなく、知能を残していて言葉を喋る奴がいたり、プレデターみたいに犠牲者の死体を逆さ吊りで飾っているのがいたりするのも面白いです。
ただ、死人が蘇ったわけではないので、ゾンビに比べると脆いんですよね。動きこそ敏捷ですが、頭だけでなく、どこを狙っても倒す事が出来るんです。何しろ、普通の人間が菌で狂っただけですからね。
そんな奴らなんで、『ドーン・オブ・ザ・デッド』の全力ゾンビや、『アイ・アム・レジェンド』の敵達に比べると、耐久力も身体能力も劣るんで、当然、そんな程度ではセガールの相手をするには力不足です。せめて超大群で出てきてくれれば「セガール無双」として楽しむ事も出来たんでしょうが、狭い場所を舞台にしてるからなのか、予算の都合で大量のエキストラを集める事が出来なかったのか、一度に出てくるゾンビの数が少ないんですよね。

ですが、そんな感染者軍団でも、この手の映画で本来主役を張るはずの「普通の人々」が相手ならば、これでも十分脅威です。
と言うか。実はこの映画、主役はセガールじゃなくて、この「生存者グループ」の方になるんですよね。その中の特定の誰かが主役というわけではなく、ノースターのパニック映画で見るような「特定の主役がいなく、誰が生き残るか分からない仕様」みたいな感じです。
で、この生存者グループが、スタート地点である大病院から脱出するというのがメインのストーリーになってくるんですが、その合間に、ゾンビを狩って生存者を救出する仕事をしているセガール率いる“ハンター”と呼ばれるグループが近辺をウロウロする場面が挿入されてくる、という形になっているんです。
これがまた、本編の生存者グループと違って、ほとんどセリフも無ければアクションも無いという、まさにとってつけたようなパートになってるんですよね。なので、「もしかしたら、名も無いB級ゾンビ映画に、セガールの場面を撮って付け足して、さもセガール主演のゾンビ映画のように見せかけているだけなのでは」と思い始めるぐらいでした。
普通はそんな事有り得ないですけど、でも“セガール映画”とは、「何が起こっても不思議じゃない!」という覚悟で臨まないとならないジャンルですからね。なので、もう中盤ぐらいで、セガールが本編に絡む事を期待するのを辞めて、ゾンビ映画として楽しむ事にしようと思い直す事にしたんですけど、これが嬉しい事に、中盤以降、この生存者グループにちゃんとセガール一行が合流して、本編に絡んでくれたんですよ。何故かこれが「予想外のラッキー」みたいな感じに思えて、物凄く嬉しかったですね。当たり前の展開にようやくなっただけの話なのに(笑)。

その後、「生存者グループの誰かがゾンビに襲われて大ピンチになる」「セガールが颯爽と現れてゾンビを瞬殺する」というのが繰り返されるんですけど、このゾンビ映画とセガール映画のコラボっぷりには、ほんと見てて感動しましたね。何の捻りも無い展開が続いてるだけなんですけど(爆)。
とにかく、普通に見たら、ほんと大した事ない映画なんですよね。この映画を見ながら、「この展開なら、次はこうなった方が面白いだろうな」というのを思いながら見てしまいますけど、実際に出てくる展開は、その妄想ストーリーを確実に下回るものです。
だから、私も「こんな最高のネタを使って、こんな程度の映画しか作らないのか!」と怒ってもおかしくないはずなんですけど、早い段階からセガールがゲスト出演程度の出番だという事を受け入れていたのが良かったのか、あんまり「これ以上」を求めるという思いが出てこなかったんですよね。それよりも、ゾンビ映画にセガールが出てくるなんて映画が本当に作られたという事への感動の方が大きくて、「この映画の全てを認めてあげよう」という気持ちになってましたねぇ。

ちなみに、セガールの相棒役として、ロック様の従兄弟が出演しているんですが、この人、これまでロック様のスタントダブルを担当していたらしいという、ロック様と同等か、もしかしたらそれ以上に動ける人みたいなんですよね。なので、アクションの見せ場がセガール以上に用意されていて、これでますますセガールの出番も減っていく結果になってしまってるんですけど、でもセガールの前作『雷神』を見た後となっては、「じゃあ、明らかにスタントダブルと分かるセガールのアクションシーンが増えるのと、身体能力の高いロック様の従兄弟のアクションシーンが増えるの、どっちがいいんだ」と言われたら、やっぱり後者を選んでしまうだろうなと思うわけですよ。もちろん、一番いいのは「セガール本人によるアクションシーンが増える」ですけど、もはやそんな大層なものを期待なんて出来ない状況ですし(笑)。
ただ、この人は割と苦戦する場面が多くて、「やはり、マッチョな猛者といえど、ゾンビの大群と戦うのは危険な事だ」という面をちゃんと出してくれるんですよね。なので、ゾンビの大群相手にも全く苦戦する所を見せないセガールの凄さを改めて引き立たせてくれる役にも立っているとも言えるわけですよ。

さて。今回でゾンビ映画も制したセガールですが、こんな感じで、他のジャンル映画を制していくみたいなパターンも有りなんじゃないかなと思ったものでした。例えば、「怪獣映画」や「宇宙人侵略映画」なんかを制していくとか(笑)。


世界の終末(ドゥームズデイ)まで、48時間──。
人類の未来は、美しき戦士に託された。 ドゥームズデイ
<DOOMSDAY>

 個人的評価 41点 (50点満点中)

 ◎満足度    ★★★★★ (見終わった後にどれだけ満足感が残ったか)
 ◎肯定度    ★★★★★ (この映画をどれぐらい支持したいと思ったか)
 ◎評価度    ★★★☆☆ (客観的に評価してみる)
 ◎おススメ度  ★★☆☆☆ (他の人に勧めても大丈夫そうか)
 ◎モヒカン度  ★★★★★ (この映画ならではの評価ポイント)


「ヒャッハーッ!!」 <個人的感想>
予告編を見る限り、「世紀末世界みたいな舞台で、マッチョ女が大活躍する映画」という内容の映画かと思っていて、ほとんど興味を持っていなかったんですけど、何故かネット上での評判がやたらいいんで、急遽見に行く事にしました。で、見てみたら、確かに評判通りの面白さが炸裂していましたね。音楽も中々自己主張の強いタイプの、「これぞアクション映画のBGMだ」と思えるようなものでしたし、これはレンタル待ちにしなくて正解でした。

で、何でこの映画の評判が良かったのかと言うと、『マッドマックス』や『北斗の拳』なんかの世界で出てくるお馴染みの連中、“ヒャッハー”とか“モヒカン”といった愛称で親しまれてる輩が元気に大登場するから、というのが大きな理由のようです。
でも、私は『マッドマックス』にも『北斗の拳』にも特に思い入れが無いんで、今、新作映画にモヒカン・ヒャッハーが出てきた所で、それほどのありがたみは無いんですよね。
とは言え、やっぱりかなり個性的な連中ではありますし、何だかんだで、コイツらの行動は見てて面白いです。「俺も仲間に入りたい!」とつい思ってしまうぐらい楽しそうですしね(笑)。
そして、クライマックスで繰り広げられる「『マッドマックス』のファンが集って、ドライブ大会を繰り広げている様」の熱気とパワーには思わず圧倒されてしまいます(正確にはそういうシーンではないんですけど、コンセプトは似たようなものでしょう・笑)。

モヒカン・ヒャッハー以外の面に関してですが、全編に渡って、どこかで見たような映像や展開が出まくるという、監督に「お前はフランケンシュタインか」と言いたくなるような、継ぎ接ぎだらけの映画、といった感じでした。
ですが、選んだパーツがどれも素晴らしい見栄えのものなうえに、継ぎ接ぎの技術が超職人技級だった為に、もはや怪物と言うより芸術に近いような、それは見事な作品が完成してしまったんです。
確かに、オリジナリティこそ無いですけど、色んなジャンル映画の要素を上手く組み立てて話を作っているという感じで、オマージュ元の映画単品には無い、「ごった煮映画」としての面白さが詰まっているんですよね。これはこれで新鮮な楽しさが感じられたものでした。
あと、内容は一応シリアスな近未来アクションで、実際、全編シリアスに撮られているんですけど、何とも言えないバカバカしさに満ち溢れてもいるんですよね。もちろん、この雰囲気も計算で出してるものですよ(多分)。どういう事かと言うと、劇中内のキャラクターはいたって真面目なんですけど、その行動は傍から見ると非常に笑えるみたいな感じですかね。
特に、モヒカン軍団のリーダーの行動なんて、いちいち面白かったですからね。寸でのところで獲物を取り逃がして、悔しさのあまり、隣にいたザコをぶん殴るとか(笑)。野外ステージでライブみたいなのをやってる所なんかは、あまりに異常過ぎて「これはいったい、何のシーンなんだ?」と戸惑ってしまいましたよ。でも、このシーンから、「これがどういう映画なのか」というのが飲み込めてきたんで、今思うと非常に重要な場面だったように思えます。
他にも、所々に細かい笑える場面かとか笑える瞬間というのが仕込んであるんですけど、コメディ風に演出されてるわけでもないんで、人によってはスルーしてしまいかねない所なんですよね。あと、「死に様が笑える」というパターンも多いんですけど、割とグロ度が高かったりするんで、「これはバカバカしい(けど、よく出来た)映画だ」というのに気付くか気付かないかで評価は大きく変わってくるんじゃないかと思います。

あとアクションシーンに関してですが、カメラが動き過ぎるのかカットが早すぎるのか、かなり見づらい事になっているにも関わらず、迫力と面白さはしっかり感じる事が出来るというものになっていました。
ヒロインを演じてる人も、かなりムキムキした体型に角ばった顔という、「いかにもマッチョ女」な外見ですが、動きは実にもっさりとしてるんですよね。正直、設定ほど強そうに見えなかったんですけど、アクションシーンの見せ方とか組み立て方とかが良かったのか、段々と「コイツは超強い女だ」というのに説得力が感じらてくるんですよね(ちなみに、「この人、どこかで見たような気がするな」と思ってたら、『アンダーワールド・ビギンズ』に出てたんですね)。
映画自体はB級っぽい内容なんですけど、予算はA級クラスなので、アクションシーン全般に結構な迫力が感じられる所も良かったです。こういう、「A級の予算のB級映画」って、面白い映画が多い気がしますね。去年の『デス・レース』もこのタイプの映画ですよね、きっと。いやぁ、こういう映画がもっと増えてくれるといいんですけどねぇ。


松本人志監督最新作 しんぼる

 個人的評価 35点 (50点満点中)

 ◎満足度    ★★★★★ (見終わった後にどれだけ満足感が残ったか)
 ◎肯定度    ★★★★★ (この映画をどれぐらい支持したいと思ったか)
 ◎評価度    ★☆☆☆☆ (客観的に評価してみる)
 ◎おススメ度  ★☆☆☆☆ (他の人に勧めても大丈夫そうか)
 ◎珍妙度    ★★★★★ (この映画ならではの評価ポイント)



!! <個人的感想>
前作『大日本人』は「そこそこ面白い」という印象でしたが、今回は「文句無しに面白い!」と思うぐらいに楽しめる映画でした。「監督、松本人志」の評判は、ネットでは賛否両論どころの話じゃないぐらいに酷いものですけど、どうやら私にとっては相性のいい監督という事になりそうです。
多分、評論や評価するという観点で見ると、問題だらけの映画なんだろうと思います。だいたい、あの人が映画に詳しいというイメージも無いですし、きっと、映画の文法を無視したメチャクチャな作り方とかしてるんでしょう。
でも、例えそうだとしても、それのどこがいけないのかと。
それに、ある分野で揺ぎ無い名声を手にしたトップにいる人が、異業種である映画の世界に手を出すというのは、個人的には面白い事だと思うんですよね(あまりにもエンターテイメントとかけ離れた分野の人とかだと、また話は変わってきますけど)。
そういう人が作る映画って、元々映画ばかり作ってる本業の人には作れないような、ブッ飛んだ映画を作り出したりとかしそうじゃないですか。例えば、『ムーンウォーカー』とか(笑)。あれはマイケル監督ではないですけど、意向がかなり活きた映画ですよね。
そういう意味で、この『しんぼる』も、他の映画とはまた違う、独特の面白さというのが感じられたものでした。基本的にはバカバカしい、いい意味でくだらないという類の映画なんですけど、他の数多の「くだらないコメディ」と違って、先の読めない面白さと新鮮さがあるんですよね。「この映画はどこに向かうつもりなんだろう」と思って、引き込まれていってしまいます。
例えば、同時進行している2つのパートが、後半でどう重なってくるのかという面においても、かなり思い切った事をしてきましたからねぇ。これは、作り手が映画に思い入れが無いからここまでふざけた事がやれたのかもしれません。でも、ことコメディ映画では、そういう「思い切ったおふざけ」が必要な場合がありますからね(ちなみに、『大日本人』のラストもかなりフザけていて、正直、私はついていけませんでしたけど、コメディの演出としては決して間違ってないと思います)。
と言う訳で、松本監督には、ヘタに映画や作劇の勉強とかしないで、今のままの状態で、感性だけで映画を作っていってもらいたいですね。もしハマれば「映画でこんな表現をするなんて!」という驚きを味わせてもらえるかもしれません。

映画の本筋とも言える、「謎の部屋に閉じ込められた人の話」も、見てるこちらも一緒になって「どうやったら脱出出来るんだろう」と考えながら見られる楽しさがあって良かったです。
で、この「部屋の謎をちょっとづつ解いて行く」という辺り、ネットの無料ゲームでお馴染み“脱出ゲーム”を彷彿とさせるんですよね。ちょっと前にハマってた時期もあったんで、この「脱出ゲーム・ザ・ムービー」な雰囲気は、見ててかなり楽しかったですね。
そして、部屋の脱出方法の解答は、多分、主人公の松っちゃんがやった事以外にも、色々とあったと思うんですよね。「あの道具をああして使ったらもっと簡単に出られたんじゃないか」とか、そういう妄想をする楽しみというのもあるんです。

あと、「この映画のテーマは何か」とか「タイトルの“しんぼる”とは何を意味しているのか」といった事を考えながら見る事も可能でしょう。さすがに、全て適当に思いついた事を映像にしてるわけではなく、何かしらの意図は込められているんだと思います。
例えば、何故壁のスイッチが天使のチンコなのかというのにも、深読みすれば、「何々の象徴として使われている」みたいな事が出てくるのかもしれません。ですが、私はそういう面に深く入り込むつもりは無いですけどね(爆)。スイッチがチンコに関しては「何の意味も無い。ただふざけただけ」という解釈です。だいたい、こんな所に頭使ったって何の特にもなりませんからね。コメディ映画なんですから、上映時間の間、笑って楽しく過ごせれば(そして、鑑賞後は、連れと各場面への突っ込み所を話し合うと。映画にはボケ役だけで、ツッコミ役がいなかったですからね)、それで十分だと思います。


涙まで、
金属なのか。 ウルヴァリン:X-MEN ZERO
<X-MEN ORIGINS: WOLVERINE>

 個人的評価 50点 (50点満点中)

 ◎満足度    ★★★★★ (見終わった後にどれだけ満足感が残ったか)
 ◎肯定度    ★★★★☆ (この映画をどれぐらい支持したいと思ったか)
 ◎評価度    ★★★☆☆ (客観的に評価してみる)
 ◎おススメ度  ★★★☆☆ (他の人に勧めても大丈夫そうか)
 ◎超人大集合度★★★★★ (この映画ならではの評価ポイント)


プライベート・ローガン <個人的感想>
『X−MEN』シリーズのキャラクター、ウルヴァリンのスピンオフ映画、という事ですけど、私はあのシリーズは元々ウルヴァリンが主役だと思っていたんで、私の中でこの映画は、スピンオフと言うより、プリクエルという位置づけになりますね。と言うか、これがスピンオフだったら、『ターミネーター4』も、ジョン・コナーのスピンオフ映画という事にならないんだろうか。
まあ、そんなどうでもいい話は置いておくとして。何と言っても、こうして主役のキャストを変えずに続編が作られたというのは嬉しい話です。それもこれも、ヒュー・ジャックマンがウルヴァリン役を気に入ってくれたからですね。こういう、同じ主演によるアクション・ヒーロー物映画の4作目が順調に作られる事って、滅多に無いですからね。3作目で終わり、もしくは10年20年間を空けて4作目というのが主流ですから。
ほんと、この人のウルヴァリンはいいですよねぇ。元々のハンサム顔の上に、ムサいヒゲとモミアゲを加えているという形なんで、オリジナルのようなムサ苦しさが無いですし、筋肉はマッチョアクションスター並みですし、何よりも、野性味溢れるワイルドさをちゃんと体現出来ている所が素晴らしい。きっと、舞台で培った表現力をヒーロー役に対して発揮しているという事なんでしょうね。
昔、テレ東のアニメで見たオリジナルのウルヴァリンとは似ても似つかないんですけど(笑)、でも、眉間の皺と眉毛、そして、爪を出して威嚇するように両手を広げたポーズを見ると、「ウルヴァリンっぽい」と思えるんですよね。アニメでそんな表情やポーズをしていた記憶は無いんですけどねぇ。

今回も、そんな「ヒュー・ジャックマン=ウルヴァリン」の魅力は全開でした。ポジションも「主役級」から「単独主役」という事になってるわけなんで、多分、出演シーンもこれまでのシリーズより増えてるんじゃないかと思います。
なので、シリーズ中、最も、ヒューヴァリンの魅力が堪能出来る映画と言えそうです。ヌード姿での滝つぼダイブ&草原疾走という見せ場もありましたし(笑)。

もう一つ、ウルヴァリンと言えば、「主役級なのに弱い」という特徴がこれまではありました。いや、不死身の体と何でも切り裂く刃があるんですから、強い事は強いんですけど、何しろその能力が見た目かなり地味ですし、他にもっと攻撃的で派手な能力を持った連中がゴロゴロ出てきますからね。「不死身じゃなかったら何回ぐらい死んでるだろう」と思うぐらい、敵から攻撃食らいまくりの吹っ飛ばされまくりで、最後の最後に、突進して爪でブスリと刺して勝つという、何とも地味な戦いを繰り広げてきたキャラでもありました。
で、それでもカッコ良く感じられたのは、やはりヒュー・ジャックマンのおかげだったと思うんですけど、今回は、途中でアダマンチウムの骨格を入れてパワーアップするという展開があるせいか、アクションシーンに、ウルヴァリンの「強さ」を強調する場面というのが多かったような気がします。なので、シリーズ中、最もウルヴァリンに頼もしさが感じられる映画でもあったと思います(前作のラストも凄かったですけどね。全ミュータントの中でも、ウルヴァリンしか立ち向かえないみたいな状況になりましたし)。

一方、今回初登場のミュータントも、どれも個性的で実にイカしてました。特に、銃使いと刀使い、そしてアニメを見ていた私にとってはお馴染みのキャラであるガンビットの、ミュータントパワーを使う場面の描写はメチャクチャカッコ良くて、見ててかなり燃えました。
ただ。この超個性的なミュータント軍団の「アクションの見せ場」というのが、その能力を個別に披露した一回きりで終了なのはかなり残念でしたね。ガンビットとサイクロップスは2回ありましたけど、どちらも単発で技を出してみただけという、「アクションシーン」というより「CGシーン」みたいな感じでした。この辺の人達に、ただ技を披露するだけに止まらない、敵と技を繰り出しあうような激しい対決シーンなんかあったら大喜びだったんですけどね。
ただ、ウルヴァリンが絡むアクションシーンは概ね良好だったんで、アクション映画としての質は結構高かったとは思います。そのアクションシーンのほとんどを予告で見ていたせいで、映像に対する驚きが全く無かったのは残念でしたけど。


この車両ひとつで、
NYはハイジャックできる。 サブウェイ123 激突
<THE TAKING OF PELHAM 1 2 3>

 総合評価 40点 (50点満点中)

 ◎満足度    ★★★★★ (見終わった後にどれだけ満足感が残ったか)
 ◎肯定度    ★★★★★ (この映画をどれぐらい支持したいと思ったか)
 ◎評価度    ★★★★☆ (客観的に評価してみる)
 ◎おススメ度  ★★★★☆ (他の人に勧めても大丈夫そうか)
 ◎デンゼル様素敵!度★★★★★ (この映画ならではの評価ポイント)


「イカす髪型だろ?」 <個人的感想>
デンゼル・ワシントン主演のサスペンス映画ですが、内容やストーリーが霞むぐらい、「とにかく、デンゼルがカッコいい!知的で素敵!」という印象の強い映画でしたねぇ。確か、『インサイドマン』を最初に見た時もこんな事を思ったような気がします。
もう、「頭のいい人」の役をやらせたら、天下一品ですよね、この人。ハイジャック犯との交渉にあたるという役ですけど、これまで映画で見てきた交渉人の中でも、一、二を争うぐらいの有能さがありそうでした。役柄は交渉人ではなく、地下鉄の運行指令係なんですけどね(笑)。
それもこれも、「脚本上、そういうキャラクターだった」というわけですし、課長クラスに上り詰めているという設定の有能な人物ではあるんですけど、それを演じるデンゼルがあまりに説得力があり過ぎて、「こういう場で現役交渉人以上の仕事ぶりを見せられるぐらいの能力があるんなら、何か、もっと他の仕事をして成功してるはずなんじゃないのか」とか思ってしまいますよね。
まあでも、きっとこの人は地下鉄が大好きだったんでしょうねぇ。本人もそんなような事を言ってましたし。自分のやりたい仕事を見つけられているなんて羨ましいじゃないですか(ジョークで言ってたのかもしれないですが・笑)。

さて。70年代に作られた『サブウェイ・パニック』という映画のリメイクですが、例によって、私はオリジナルを見ていません。なので比較は出来ないんですが、デンゼル&トラボルタという2大スターの演技合戦も迫力がありましたし、娯楽映画のツボを突いたトニー・スコットの演出も見事でしたし、いい映画だったんじゃないかと思います。何と言っても、「デンゼル主演作」という要素はオリジナルには全く無い点ですからね。
ちなみに、この内容の映画ならば入れなくていいと思われるアクションシーンやカークラッシュシーンが無理矢理入ってる辺りは「さすがアクション派のトニー・スコットだなぁ」と素直に感心していたんですが、どうやら、カークラッシュシーンはオリジナルにもあったらしいですね。でも、きっとオリジナルは「クラッシュシーンを入れたくて、無理に捻じ込んだんだな」なんて思わないような、自然な場面になってるんでしょうね、きっと。

「犯人が何を企んでいるのか」という、敵の目的の面が中々見えてこなくて、先行きが非常に気になるストーリー展開でしたし、そこに、交渉に関しては素人のデンゼルが(そうは見えないというのはひとまず置いといて・笑)、犯人に対してどう接し、対処していくのかといった辺りは見てて面白かったです。この、交渉の場での犯人との対話が、「知的な心理戦」といった趣になってるんですよね。
あと、ジョン・タトゥーロ演じる、本職の交渉人が現れるんですけど、出てきた当初は噛ませ犬、もしくはデンゼルの引き立て役みたいな役柄でしかないのかと思っていたら、これが意外といい奴なんですよねぇ。まあ、だからこそ、こんな演技派を起用してるんでしょうけどね(ただ、今年の夏に見た某映画のせいで、「また変な下着を穿いているんじゃないんだろうか」とか思うハメになりましたけど・笑)。


←前に戻る