※星マークの評価ポイントは、星の数により、5点段階評価と3段階評価の2種類があり、合計点は最高で35点満点となります。

プレステージ  <THE PRESTIGE>

運命さえトリック  ◎満足度 ★★★★☆ (見終わった後にどれだけ満足感が残ったか)
 ◎評価度 ★★★★★ (そのジャンルの映画としてどれだけいい出来だと思うかを主観、客観両面から評価)
 ◎感情度 ★★★☆☆ (笑い、泣き、興奮、恐怖など、見ていて何かしら感情を揺さぶられたかどうか)
 ◎CAST度 ★★★★★ (個人的に、キャスティングに満足いったかどうか)
 ◎監督度 ★★☆    (監督の演出が個人的に良かったかどうか)
 ◎音楽度 ★★☆    (音楽がどれだけ印象的だったか)
 ◎期待度 ★★☆    (見る前の期待にどれだけ応えてもらえたか)
 ◎体感時間度 ★★☆ (実際の上映時間より長く感じたか、短く感じたか。短く感じられた方が高得点)
 ◎リピート度 ★★★  (今後、何回も見たいと思えたかどうか)
 合計 28点

今回はウルヴァリンに付いてみたアルフレッド <個人的感想>
マジックやイリュージョンと呼ばれるものは、言ってみれば、観客を騙してウケをとるショーみたいなものです。と言う訳で、それを題材としたこの映画も、観客への騙し、要するに「どんでん返し」系のストーリーになっているわけです。ご丁寧に、映画が始まる前には「この映画のラストは誰にも言わないでください」というお馴染みの一文が出てきたりします。

で、こちらも「ラストはどんな展開になるんだろう」と色々と予想しながら見ていたのですが、これが、結構簡単に推理出来るものなんですよね。伏線もかなりありましたし、中盤から後半辺りでヒントがかなり出ていたような気がします。
なので、「もしかしたら、さらに凄いどんでん返しが最後に隠れているのかも!」と思っていたのですが、ラストのネタバラシシーンで「どうだ、驚いたか!」みたいな感じで出てきたのは、私が予想していた展開そのままのものでした。
でも、だからといってガッカリしたというわけではありません。まず、「私みたいな豚でも正解を予想出来た!」という嬉しさがありましたし、何よりも、この映画のストーリーにとって、「驚きのラスト」が最大の見どころであり生命線、というわけではないんです。そこに行きつく過程、「どうしてそういうラストになるのか」という辺りこそが面白い映画なんですよね。
それに、オチが分かってるマジックも、エンターティナーなマジシャンが演じれば面白く見る事が出来るものです。それと同じようなものかもしれないですね。
で、その「エンターティナーなマジシャン」に相当するのが、主演の二人、バットマンとウルヴァリンですよ。劇中、お互いにライバルそして宿敵として対立している二人ですが、俳優としても、「どっちがいい演技をしているか、どっちがいい男か」を競い合っているかのような、熱い火花が飛び散ってるのが感じられる共演っぷりでしたね。
また、この『プレステージ』というイリュージョンを監督したクリストファー・ノーランも、『メメント』の時のような「時間軸をバラした編集」などの技を用いて、ストーリーをより入り組んだものに見せかけたりといったパフォーマンスを出してきました。
ラストの大よその展開は予想出来ていても、この複雑な展開のせいか、見終わっても分からない点とか出てきたりするんですよね。真相を知った後でもまた最初から見てみたいという気を起こさせてくれます。

(ネタバレ感想有り)←読みたい人はクリックしてください



300 <スリーハンドレッド>  <300>

300人VS1,000,000人、真っ向勝負!  ◎満足度 ★★★★★ (見終わった後にどれだけ満足感が残ったか)
 ◎評価度 ★★★★★ (そのジャンルの映画としてどれだけいい出来だと思うかを主観、客観両面から評価)
 ◎感情度 ★★★★☆ (笑い、泣き、興奮、恐怖など、見ていて何かしら感情を揺さぶられたかどうか)
 ◎CAST度 ★★★☆☆ (個人的に、キャスティングに満足いったかどうか)
 ◎監督度 ★★★    (監督の演出が個人的に良かったかどうか)
 ◎音楽度 ★★☆    (音楽がどれだけ印象的だったか)
 ◎期待度 ★★☆    (見る前の期待にどれだけ応えてもらえたか)
 ◎体感時間度 ★★☆ (実際の上映時間より長く感じたか、短く感じたか。短く感じられた方が高得点)
 ◎リピート度 ★★★  (今後、何回も見たいと思えたかどうか)
 合計 29点

俺達、裸がユニフォーム! <個人的感想>
一見、『トロイ』みたいな史劇系の映画のようですが、実は“グラフィック・ノベル”とやらを映画化したものです。コミックやゲームの映画化作品みたいなものなので、戦場でのアクションがメインとして作られています。要するに、『グラディエーター』以降のこの手の歴史物映画の中でも、私にとって最も見やすい映画という事ですよ。
かと言って、「全篇アクションシーンばかり」というわけではなく、結構、ストーリーを進ませるだけの静かなシーンも多いんですよね。ストーリーなんて、あって無いようなものなんですけど。
でも、こういう静かなシーンを合間に挟んでくれないと、見てる側が持たないというぐらい、アクションシーンに気合が入ってるんです。

その肝心のアクションシーンを盛り上げる為に、前半は結構長く使って、主役のジェラルド・バトラー演じるレオニダス王や、スパルタの兵士がいかに屈強な奴らなのかを語ってきて、「どんな戦いっぷりを見せてくれるんだろう」という期待感を徐々に高めていってくれるんです。なので、前半部分は結構暇な展開なんですけど、これから起こる戦いのシーンを想像してドキドキしましたね。
で、いざ戦闘が始まってみたら、もう、今まで散々デカい事を言ってただけの事はあって、みんな強い事強い事。この爽快感といったら、見てて笑ってしまうぐらいでしたね。

同じ地形を舞台とした合戦シーンが数回に分けて行われるんですが、それぞれ敵の攻撃にバリエーションがあるんです。何しろ、アクションシーンがメインなだけに、「同じようなアクションを延々続ける」なんてマネはしないというわけですよ。
最初は普通の兵士達が突っ込んでくるだけの戦法だったのが、馬やサイ、ゾウといった動物を絡めてきたり、人間の規格を超越した怪物みたいなのが襲ってきたり。しかも、これらが順番に、間を開けて攻めてくるんですよね。何だか、面クリ型のアクションゲームみたいです(笑)。
この映画、見ていてほんとにゲームっぽいんですよね。いい意味でですけど。
映像もCGがバリバリに使われたデジタルな感じのもので、現実感は『ロード・オブ・ザ・リング』より低いかもしれないぐらいです。でも、私はこういうのも大好きなんですよね。かつてゲームがメインの趣味だった時代があったせいか。
映像全般が、独特な色合いになってますけど、これもいいですよね。現実の世界という感じがしなくって、架空の世界の話のような雰囲気が感じられます。

そんな、近未来なテクノロジーをバリバリに使って製作された映画が、「300人の筋肉マンが槍と剣で敵と合戦する」という、肉体派な内容だというのも素敵な所です。
この、ムキムキのマッチョマンがスクリーンを埋め尽くさんばかりに登場する様は大迫力でしたねぇ。
しかもこのマッチョ達、着ているのはパンツとマント、兜のみというセクシーっぷりですよ。「なんで鎧を着ないんだろう」とか思うんですけど、考えてみたら、鎧を着込んだらせっかくの肉体美を披露出来ませんからね。代わりに、盾が相当頑丈なので、鎧はいらないという事になったのでしょう。これが俗に言う「マッチョ理論」というやつですね(どんな理論だ・笑)。

この映画で描かれる戦闘は、その戦場から退却を許されない状況であり、援軍も来ないという状況。味方は僅かで、もはや生きて帰れる見込みゼロというものです。まるで『硫黄島からの手紙』の戦闘みたいなものですね。
ですが、マッチョ理論により「“勝利”と“名誉の戦死”には同じぐらいの価値がある」という精神状態になってるスパルタ兵達には、悲壮感というものは皆無です。もう、敵と戦うのに忙しくて、自害やバンザイ突撃をする暇なんて無いみたいな状況ですよ。
きっと、この人達は“兵士”ではなくて、“戦士”なんですよね。で、やっぱり、こういう本気の入った戦士の活躍というのは燃えるものがありますよ。見ていて、勇気が湧いてきます。
そして、戦士なら戦死しても(シャレか・笑)見ててあまり胸が痛まないという事で、映画の中の戦場を完全なフィクションとして捉える事が出来るというのもいいです。
思うに、抑圧されてる闘争本能を、映画の中の戦士達の活躍を介して発散させるというのは、精神衛生上にもいい事なのではないのだろうか。
と言う訳で、鑑賞中は壮絶な戦闘に興奮し、見終わった後はスッキリと劇場を後にする事が出来るという、まさに清く正しい娯楽映画だと思いますね。


大日本人

松本人志 第1回監督作品  ◎満足度 ★★★☆☆ (見終わった後にどれだけ満足感が残ったか)
 ◎評価度 ★★★★★ (そのジャンルの映画としてどれだけいい出来だと思うかを主観、客観両面から評価)
 ◎感情度 ★★★☆☆ (笑い、泣き、興奮、恐怖など、見ていて何かしら感情を揺さぶられたかどうか)
 ◎CAST度 ★★★☆☆ (個人的に、キャスティングに満足いったかどうか)
 ◎監督度 ★★★    (監督の演出が個人的に良かったかどうか)
 ◎音楽度 ★★☆    (音楽がどれだけ印象的だったか)
 ◎期待度 ★★★    (見る前の期待にどれだけ応えてもらえたか)
 ◎体感時間度 ★★★ (実際の上映時間より長く感じたか、短く感じたか。短く感じられた方が高得点)
 ◎リピート度 ★★★  (今後、何回も見たいと思えたかどうか)
 合計 28点

果たして、大佐藤はこのメニューの中から何を選ぶのか?
答えは本編で! <個人的感想>
まず、邦画が苦手どころか、最近は怨みすら持ち始めているという私が、わざわざ映画館まで見に行ったというのに我ながら驚きです(まあ、ポイントによる無料鑑賞でしたが・笑)。
では、なんでこの映画に興味を持ったのかと言いますと、やはり宣伝が上手かったからでしょうねぇ。一切の内容をシャットアウトしたまま公開間近まで行き、そしてカンヌ出品ですからね。もしかしたら、カンヌでの上映も宣伝の一環として仕組まれてた事なんじゃないかと思うぐらいです。
さらに、監督・主演の松本人志も、大ファンではないものの、昔からテレビで見ている、馴染みのある人ですからね。昔出した著書も当時読みましたし(「デカい事吹いてんな」とか思いましたけど・爆)。で、そんな男がどんな映画を作ったんだろうかと興味があったんです。

で、実際見てみたわけですが、いやぁ、驚きましたね。一応、ジャンルはコメディとか喜劇とか、「笑える映画」になるはずじゃないですか。それが、3、40人ほど入っていた劇場で、誰一人笑ってる人がいないという状況(爆)。
これはもしかしたら、こっちが笑うつもりで臨まないと太刀打ちできないタイプの映画なのではないのかと思ってしまいましたよ。「あぁ、ここは笑う所の場面だな、よし笑おう」みたいな感じで。
でも、一応私は元々笑うつもりで来ていましたし、結構、笑いのシーンが多かったので(何でもないような場面かと思ってると、ふっと笑いが入ってきたりするんですよ)、上映時間中ほとんど苦笑いの表情を浮かべてましたね。いや、普通に面白いシーンもあるんですが、「苦笑いが精一杯」というシーンがほとんどでした。
そんなわけで、映画が終わって劇場を後にした時、苦笑いの表情が顔に貼り付いたようになってしまって、「もしかしたら、今自分は変な顔をしているのでは」と心配しながら歩くハメになってしまいましたよ。

という、割と敷居の高い映画という印象でした。監督本人は「日本人向けに作った」と言ってますが、これは海外の方がウケるような気がしますねぇ。日本人はこういうのを映画館で見たいと思わないでしょう。何しろ、コメディ映画は超が付くほど冷遇されてる状況ですからね。きっと、「笑い」というものを下に見てる人が多いんでしょうね。

と言う訳で、「面白いか面白く無いか」と言ったら、面白く無い映画だったんですけど、非常に興味深い映画ではありました。面白く無いですけど、決してつまらなくはないんですよ。同じ意味の言葉のような気はしますが、何と言うのか、見てる間、及び、見終わってすぐの満足度はあまり高くなかったんですけど、それでもこの映画に対してあまり否定的な事を言いたくないという感じもあるんですよね。「嫌いになれない映画」とでも言うのか。
それに、見てる間は苦笑いしていたギャグの数々も、映画を見終わった後にも結構印象に残ってるものとかあるんですよね。
そこで思ったんですが、今回は私の「邦画嫌い」という性質が邪魔をして楽しめなかっただけで、同じ内容で、舞台と出演者を欧米に置き換えたら、もしかしたら大笑いしていたんじゃないかと思うんです。
きっと、コメディ映画として、結構なレベルのものだったんじゃないかと、今は思うようになってきましたね。まあ、人を選ぶタイプの映画だとは思いますが、私は支持したいです。

笑いの面だけでなく、ストーリーや内容の面にも結構面白い所がありました。
まず、ヒーロー物の映画で、こういうドキュメンタリー形式で撮られてるという手法が珍しいですし、冒頭は主人公の大佐藤が何の職業の人間なのかを敢えてぼかしている所も面白いです。「巨大化して怪獣と戦う」という設定を知らないで見たら、最初に大日本人が登場する所でもっと笑えたのかもしれませんね。
そして、ヒーローである主人公がみんなから嫌われてるというのも面白いです。ただ、それは主人公がイヤな奴だから嫌われてるんじゃないんですよね。逆に、大佐藤以外の登場人物がイヤな人間ばかりなんですよ(笑)。マネージャーなんて、反吐が出そうになるぐらいムカつく人間でしたからねぇ。しかも、厄介な事にその存在がやたらリアルに感じられるんですよね。「現実にもこういう奴、絶対いるよ」みたいな。
あと、大佐藤のやる事なす事にケチをつける一般大衆もムカつきましたね。まず、獣を放っておいたらどうなるのかを誰も考えてないらしいんですよね。で、大日本人が頑張って獣を退治しても、みんなはまるで無関心なんですよ。そのくせ、何か失敗をしたら、急にみんな関心を持ち出してバッシングを始めるんですよね。もう、「何なんだ、コイツらは」とか思ってしまいましたよ。
また、大佐藤も含めてですけど、物事をハッキリと喋らない人が妙に多かったような気がしましたね。話を聞いててイライラしてきます。他にも、「自分の所の常識を押し付けてくる奴」なんてのもいましたね。
で、こういった、「ムカつく奴ら」が、何だか、今の日本人の悪い面を全て体現してるみたいで、同じ日本人として、見ててやるせない気持ちになってくるんですよね。きっと、自分も客観的に見たら、その「ムカつく奴ら」の一員に入ってるんだろうし。
もし、これが笑いで包まれてる映画じゃなかったら、また『バベル』を見た時みたいに鬱になる所でしたよ。この映画には明確な主張とかテーマ性みたいなのが感じられなかったので、こういう負の部分を映画を見終わっても引きずるという事がなかったのは幸いでした。


ザ・シューター/極大射程  <SHOOTER>

合衆国VS孤高の狙撃手<シューター>  ◎満足度 ★★★☆☆ (見終わった後にどれだけ満足感が残ったか)
 ◎評価度 ★★★★☆ (そのジャンルの映画としてどれだけいい出来だと思うかを主観、客観両面から評価)
 ◎感情度 ★★★☆☆ (笑い、泣き、興奮、恐怖など、見ていて何かしら感情を揺さぶられたかどうか)
 ◎CAST度 ★★★☆☆ (個人的に、キャスティングに満足いったかどうか)
 ◎監督度 ★★☆    (監督の演出が個人的に良かったかどうか)
 ◎音楽度 ★★☆    (音楽がどれだけ印象的だったか)
 ◎期待度 ★★☆    (見る前の期待にどれだけ応えてもらえたか)
 ◎体感時間度 ★★☆ (実際の上映時間より長く感じたか、短く感じたか。短く感じられた方が高得点)
 ◎リピート度 ★★☆  (今後、何回も見たいと思えたかどうか)
 合計 23点

21世紀のコマンドーを目指してダッシュ! <個人的感想>
ドニー・ウォールバーグの弟としてお馴染みのマーク・ウォールバーグがアクションヒーローに挑んだ映画です。
これまでもアクションっぽい事を時々やったりしてましたし、オスカーノミネート俳優という事で演技力も折り紙つき。という訳で、主役のボブ・リー・スワガーが超強い男だという事に違和感を与えない「それっぽさ」はしっかりと出していましたね。さすがです。
スナイパーとしての腕前はもちろん、中距離での撃ちあいも強いし、格闘も強いみたいですし、サバイバルの技術もあるようです。前半では、キンブル医師もビックリな逃走術を見せてきましたからね(撃たれて怪我をしているというのに)。いやぁ、強いです。強いヒーローはいいですな。
そんな、この人の活躍の中でも最も凄かったのが、オープニングシークエンスで出てきた、スナイパーライフルで武装ヘリと対決するシーンでした。これはかなりの見ものでしたね。

内容は、予告編を見る限り、マット・デイモンのジェイソン・ボーンシリーズっぽい映画なのかと思ってたんですが、もっと大味な感じのするアクション映画でした。主人公の設定も、ボーンよりも、ランボーやコマンドーっぽい感じでしたね(コマンドーは人名じゃないか)。
原作は「このミステリーが凄い」なるランキングで1位を獲ったそうですが、ストーリーはそんなに凝ってなかったように思えましたね。「いかにもアクション映画のストーリー」みたいな感じがしたものでした。
昔ながらの“ワンマン・アーミー物”に近いような雰囲気もありましたし(21世紀の映画なので、後にインテリ系の相棒がついたりしますが)、いかにもアクション映画なストーリーが悪いという事はないんですが、もうちょっと上手い脚色は出来なかったのかな、という気はちょっとしましたね。

この手の、銃撃あり爆破ありカーチェイスありみたいなアクション映画は大分少なくなってきてるんで、貴重な一作です。私もワクワクしながら劇場に駆けつけたのですが、実は、思っていたほどの満足感は得られませんでした。
それは何故かと言いますと、“暴力礼賛”的な内容に引っ掛かるものを感じてしまったんですよ。劇中、主人公の邪魔になるザコ敵達が撃ち殺されたり爆破で吹っ飛ばされたりする、いわゆるお馴染みの“アクションシーン”において、「コイツらは、殺されなきゃならないような悪い事をしてるわけでもないのになぁ」なんて事を思ってしまいました。
あと、法で裁けないからといって銃で解決するというのも、果たしてどうなのだろうかと。
ですが、こんな所、今までの私なら何の疑問も持たなかったような点ですよ。どうも、ここ数年、高尚なテーマを掲げた映画とか見るようになったせいで、こんなおかしな事を考える、つまらない映画ファンになりかけてしまっていたようです。
アクションシーンで殺される敵役の背景なんて、いちいち気にしてたらアクション映画なんて見てられないじゃないですか。それに、「悪人は、法を無視してでもぶち殺してよし」というのもこのジャンルのルールみたいなものです。 それを、まるで批評家のように「暴力礼賛な所が気になる」なんて感想を出してしまったのが、もう、自分で恥ずかしくてしょうがないです。本来ならもっと楽しめたはずの映画ですよ、これ。
ともかく、自分の映画ファンとしての心得を再確認する必要がある事に気がつかせてもらえましたね。約一ヵ月後の『ダイハード4.0』公開までに元の状態に戻しておかなければなりませんな。


パイレーツ・オブ・カリビアン ワールド・エンド
<PIRATES OF THE CARIBBEAN: AT WORLD'S END>


シリーズ3部作、ついに完結!  ◎満足度 ★★★★★ (見終わった後にどれだけ満足感が残ったか)
 ◎評価度 ★★★★☆ (そのジャンルの映画としてどれだけいい出来だと思うかを主観、客観両面から評価)
 ◎感情度 ★★★☆☆ (笑い、泣き、興奮、恐怖など、見ていて何かしら感情を揺さぶられたかどうか)
 ◎CAST度 ★★★☆☆ (個人的に、キャスティングに満足いったかどうか)
 ◎監督度 ★★☆    (監督の演出が個人的に良かったかどうか)
 ◎音楽度 ★★★    (音楽がどれだけ印象的だったか)
 ◎期待度 ★★★    (見る前の期待にどれだけ応えてもらえたか)
 ◎体感時間度 ★★★ (実際の上映時間より長く感じたか、短く感じたか。短く感じられた方が高得点)
 ◎リピート度 ★★★  (今後、何回も見たいと思えたかどうか)
 合計 30点

カツアゲに遭うジャック・スパロウ <個人的感想>
このシリーズは、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズや『マトリックス』シリーズのように、2作目と3作目が同時、または連続で作られたというタイプです。で、その例に挙げた2作とも、個人的にですが、シリーズ中、『3』だけが群を抜いて劣る、という印象だったんですよね。
その理由は、それまでのシリーズの流れから、こちらが期待していたような展開にならなかったからでした。しかも、どちらも主役が目立たずに、順主役のポジションのキャラがメインに上がって来ていたのもガッカリした点でした。私はマーティやネオの活躍が『3』でも見たかったんですよ。

で、この『パイレーツ〜』シリーズの3作目はどうだったのかと言いますと、上記2作の悪いパターンを踏襲してしまっていたんですよねぇ。ストーリー展開に関しては良かったんですが、「順主役がしゃしゃり出てくる」というのがこの映画でも出て来てしまったんですよ。
それが、オーランド・ブルームが出てくるんならまだいいんです。なのに、よりによって、キーラ・ナイトレイがほとんど主役みたいな感じになってるんですよねぇ。私、この人嫌いなんで、これにはまあガッカリしましたよ。何か分からないですけど、この人の顔を見てるとイライラしてくるんですよね。
あと、オーランド・ブルームは今回やたら陰が薄かったですね。終盤でようやく目立ってきましたが、それまでは『マトリックス レボリューションズ』のモーフィアス並の地味度で、とても主役級のキャラとは思えないぐらいでした(初登場シーンも最悪でしたしねぇ)。
そして、肝心のジャック・スパロウですが、こちらもストーリーの都合上、ある程度話が進まないと出てこないうえに、あんまりストーリーの流れに関わってるという印象が無いんですよね。何しろ、今回、ストーリーに深く関わってくるのはエリザベスの方ですし、スパロウは「脇役として、ストーリーの中心の“近辺”をウロウロする」みたいなポジションなんです。

と、「どのキャラにスポットライトを当てるのか」の面に関してはかなり不満があったんですが、不思議な事に映画としてはかなり面白かったんですよ。見終わった後の満足度も、前作と同等ぐらいのものがありました。
では、この映画の何が良かったのか。それは、ジャック・スパロウの存在ですよ。ストーリーの進行にあんまり絡んでないという印象はあったものの、出番が少ないというわけではなくって、一応、順主役ぐらいの出番と活躍シーンは用意されているんです。
しかも、スパロウがストーリー展開にしっかり関わっていた前作『デッドマンズ・チェスト』よりも、今回の方がよりスパロウの存在が際立って見えるんですよね。それこそ、一作目並の存在感がありました。
何故かと言いますと、今回、一作目のボスキャラだったバルボッサが復活し、船長として最初から最後まで大活躍をするのですが、この人が、いわゆる「普通の海賊映画」ならば中心人物として描かれただろうと思うようなキャラなんです。こういう、海賊船の船長っぽいキャラが出て来たせいか、シリーズ中、最も「海賊映画」の雰囲気が感じられたものでした。
で、このバルボッサ船長の力によって世界の果てまで旅をし、何だかんだあって、ついにジャック・スパロウが復活するわけです。そして、ジャックが出て来たとたんに、映画の雰囲気がガラっと変わるんですよね。「普通の海賊映画」から、「ジャック・スパロウのいる海賊映画」になるんです。
要するに、今回、バルボッサという、同じ海賊船の船長として比較対象になるキャラがいるせいか、今までよりもさらにジャックのキャラクターのユニークさが際立って見えたような気がするんです(一作目のバルボッサは“船長”ではなく“敵役”というポジションでしたからね)。
この3作目を見て、改めて、ジョニー・デップは素晴らしいキャラクターを創造したな、と思いますね。
この映画の凄い所は、そこまで強烈なキャラであるジャック・スパロウが、ストーリーの中心にいないという所ですよ。おかげで、映画が見終わっても「もっとジャック・スパロウの活躍を見たい!」とか思うんですよね。映画を見に来た人に、続編を見たいと思わせる。まさにブラッカイマーの作戦通りじゃなですか(笑)。「メインの大人気キャラを、メインから外れたポジションに置き、腹八分目程度の出番で終わらせる」とは、また思い切った作戦をとったものです(本当にそんな企みがあったのかは不明ですが)。

実は、ストーリー展開が難しくて、あまりついていけなかったんですが(主要キャラがそれぞれの思惑を持って動いたりしてるせいか、中々複雑なストーリーでした)、この手の大作映画は、ストーリーを理解して楽しむよりも、迫力ある映像に驚き、大スターの活躍に胸躍らせる、という見たままの楽しみ方が出来れば十分なんです。
それに、今までのシリーズで感じられた、「大作映画なのに、どこかヌルい」という感覚が、今回は無かったのか、それとも私が慣れたのか、全然感じられなかったんですよね。なので、最初から最後まで、大作映画鑑賞の醍醐味「カネ掛かってる感」をしっかり味わいながら見ることができました。
そんなわけで、細かい不満点はあったものの、総合的には「いい3作目だったんじゃないかな」と言えると思いますね。


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