孤高の人間断頭台!
問答無用! 完全破壊! パニッシャー:ウォー・ゾーン
<PUNISHER: WAR ZONE>

 個人的評価 48点 (50点満点中)

 ◎満足度    ★★★★★ (見終わった後にどれだけ満足感が残ったか)
 ◎肯定度    ★★★★★ (この映画をどれぐらい支持したいと思ったか)
 ◎評価度    ★★★☆☆ (客観的に評価してみる)
 ◎おススメ度  ★★★☆☆ (他の人に勧めても大丈夫そうか)
 ◎アクション度 ★★★★★ (この映画ならではの評価ポイント)


アイス・T先輩にこの技を捧げます! <個人的感想>
去年の『インクレディブル・ハルク』に続く、「数年前に映画化されたばかりなのに、もう再映画化」のシリーズ第2弾みたいな感じになった、今回の『パニッシャー』。
で、『〜ハルク』の方は、その再映画化でさらに良くなったという印象でしたが、こちらも前回より大分面白くなりましたね。前の『パニッシャー』は、「復讐の手段がストーキングと嫌がらせ」という、何ともショボイ感じになってましたけど、今回はもう、「悪党は片っ端から粉砕」と言わんばかりのバイオレンス・アクション風味になっていまして。
そのバイオレンス度もかなり高くて、結構な激しさの人体破壊描写が出てきたりします。銃撃で敵の頭を吹っ飛ばすのはもちろん、パンチで顔を貫通なんて場面も出てきましたからね。「お前はジェイソンか」とか思ってしまいましたよ。
でも、見てて気持ち悪くなる、残酷ホラー映画系のグロさではなく、思わず笑ってしまうような、過剰なスプラッター系のグロさなんで、むしろ見てて気持ちがいいぐらいでした。

このように、パニッシャーの戦闘力の高さというのも、今回、かなり強調されてた感がありましたね。これまで、ドルフ・ラングレンやトーマス・ジェーンといった、マッチョでアクションの似合う方々がパニッシャーを演じていたにも関わらず、その強さがイマイチ伝わらなかったような気がしたものでした。
それが、今回は最初から最後まで超強いままなんです。演じてるのは誰だか分からないような地味な人なのに(爆)。でも、パニッシャーの持つ「強そう」な雰囲気をしっかりと感じさせてくれましたし、きちんとアクションをこなせる人だったみたいですね(だからこそ主役に起用されたんでしょうけど)。
コスチュームも、あまりコミックヒーローっぽさを感じさせないような感じになっていて、まるで特殊部隊の戦闘服みたいでした。トレードマークのドクロマークもかなり薄くされていて、注意して見ないと服にドクロマークがあるのかどうか分からないぐらいです。
でも、このコスチュームで「いかにも戦闘のプロ」といった雰囲気が出てたような気がしましたね。衣装面も、アクションシーンにカッコ良さを加える要素の一つだったと思います。
あと、敵を問答無用で撃ち殺す冷酷な所も、演技・演出両面でしっかり表現されていて、パニッシャーというキャラクターの面白さというのが、ようやく真に感じられたような気がします。

そんなパニッシャーですが、敵のアジトに乗り込んで大殺戮をしている最中、誤って潜入捜査官を殺してしまうという大失敗をやらかしてしまいます。
この事件で、これまで復讐の鬼として活動してきたパニッシャーも、自分の行動を見つめ直して、自警団的行動を止めようかと悩む事となります。
確かに、最近はもう、映画の中でも社会的にも、「復讐はまた復讐呼び、結局悲しみを生むだけだからよくない」という風潮です。目には目をの時代はそろそろ終わりを告げようとしているのでしょう。
でも、社会派ドラマ映画でならそういうテーマを掲げてもいいですけど、アクション映画で復讐を否定されると、正直、困ってしまいます。やっぱり、愛する者を殺されたら復讐をしたいと思ってしまいますし、悪党連中は問答無用でぶち殺してやればいいとも思うじゃないですか。現実にはマズいですけど、せめて映画の中ぐらい、現実ではやっちゃ駄目な事を堂々とやってくれてもいいじゃないですか。
という訳で、クライマックスの大アクションシーン(大殺戮シーンとも言う・笑)の後、最終的に、パニッシャーの行動を「正義」と言い切ったこの映画の英断と反骨精神には心から拍手を送りたいですね。

あと、敵キャラ軍団も実にユニークで良かったです。パニッシャーの造形が、コミックヒーローから少し離れた雰囲気になった一方、敵の大ボスであるジグソウは、造形から演技まで、いかにもコミックヒーロー物の悪役といった感じで、その大袈裟な演技は見てて非常に楽しかったです。
その仲間達も、スピーディな動きを見せてくる奴がいたり、親子で悪の組織に関わってる奴がいたりと割と粒揃いで、しかも最後には「パニッシャー打倒の為に兵隊を集める」という事で、街中のチンピラが集結するんですよね。こういう、ぶち殺されるのを見ても良心が全く痛まないようなダニが、ザコキャラとして大挙して登場するクライマックスは非常に燃えましたね。心置きなくパニッシャーを応援出来ますし、それに応えるかのような活躍をパニッシャーも見せてくれますからね。
この辺りの、ザコを次々撃ち殺しながら進んでいく所は、コミックの映画化と言うより、ゲームを映画化したみたいな雰囲気でしたね。ゲームを映画化した『マックス・ペイン』にはあまり感じられなかった雰囲気です(むしろ、あちらのアクションシーンはコミック原作っぽかったですからね)。
ここでパニッシャーは、大量の銃器を持ち込んで、それを次から次に持ち替えながら戦うというアクションを見せるんですけど、こういうのは、過去にも『コマンドー』やら『マトリックス』等で見てきましたけど、何度見てもいいですね。やっぱりカッコいいです。一回のアクションで色んな銃器を見られますしね。

何だか、久々に単純に楽しめる良質アクションを見たような気がしますねぇ。こういう映画は毎月公開して欲しいぐらいなのに。


俺は迷っていた、人生の締めくくり方を。
少年は知らなかった、人生の始め方を。 グラン・トリノ
<GRAN TORINO>

 個人的評価 50点 (50点満点中)

 ◎満足度    ★★★★★ (見終わった後にどれだけ満足感が残ったか)
 ◎肯定度    ★★★★★ (この映画をどれぐらい支持したいと思ったか)
 ◎評価度    ★★★★★ (客観的に評価してみる)
 ◎おススメ度  ★★★★★ (他の人に勧めても大丈夫そうか)
 ◎イーストウッ度 ★★★★★ (この映画ならではの評価ポイント)


「お買い物は楽しいのぅ♪」 <個人的感想>
このところ、「いかにも巨匠の作品」といった雰囲気の、重厚な映画を撮る事が多かったイーストウッド御大ですが、ここにきて久々に、肩の力を抜いたかのような、ちょっと気楽な映画が出てきました。
私が今まで見てきたイーストウッド映画の中で一番好きなのが『トゥルー・クライム』なんですけど、この映画の雰囲気に似てる所があったような気がして、それが何か嬉しかったですね。
愉快な脇役との掛け合いなんかが出てきたりと、笑えるシーンも多いですし、一転して、締めるべきところは、重厚な最近作同様、しっかりと締めてきたりという、実にワビサビの効いた演出でした。

ストーリーのメインになるのは、頑固親父と隣人の交流というものですけど、このイーストウッド演じる老人がまた、「愛すべき頑固親父」みたいな、いいキャラクターなんですよねぇ。波平だとかコボちゃんのおじいちゃんを思い出すような雰囲気があって、時々、新聞の四コママンガを見てるような気になってくるぐらいでした。ただ、波平らと違って、庭に入ってきたチンピラに銃を向けたり、差別的発言を吐いたりといった事をする、血気盛んな老人ですけどね(笑)。
性格面は、一見すると偏屈でイヤな老人なんですけど、昔の価値観で生きてるだけで、基本的には善人なんだと思うんですよね。差別発言を吐いてもあまり嫌味に思えないのも、元々がいい人間だからなんでしょう。見てて、「そういう事を言われて傷つくような感じの人にはきっと言わないんだろうな」というのが感じられるんです。
子供や孫達とはうまくいってないんですけど、本人が言うには「どう接していいか分からない」との事でした。多分、これまでは間に奥さんを介していたからやってこれた所、その奥さんが死んでしまった為に、橋渡しをしてくれる人がいなくなったんで、もういよいよ息子達と接する事が出来なくなってしまったんでしょうね。それに、年配者である自分に全く尊敬の意を示さないような連中と無理して接する事もないという思いもあるのかもしれません。
ともかく、この不器用な所を、息子夫婦や孫達は、「偏屈」ととってしまった為に、お互いに愛想を尽かしたみたいな関係になってしまいました。本来なら、これから孤独な残りの人生が待っている所だったんですが、隣人のアジア人一家と知り合う事になり、全てが変わっていく事となるんです。都会に住んでいると、隣人との関わりなんて面倒なだけですけど、こういう田舎が舞台だと素敵に思えますね。
それにしても、こんな田舎にも、銃を持ったちびっ子ギャングがいるんですねぇ。しかも、アジア人グループ、黒人グループ、白人グループ(と思ったら、ヒスパニックだったらしい)と、あらゆる人種のグループが存在してるようですし。何だか危険地域みたいです。
で、そういうイキがった連中に対して、イーストウッド老人は全く臆さないんですよね。実にカッコいいです。ただ、いくら従軍経験のある元マッチョとはいえ、現在は78歳の老人です。正直、「押しただけで倒れるんじゃないか」と思うような弱々しさも感じられるんですけど、でも、その態度のデカさと眼光の鋭さからは「老いてるとはいえ、只者ではない」と感じさせる危険な雰囲気が出ているようで、分かる奴は刃向かってきたりとかしないんですよね。多分、チンピラの中でも、このイーストウッド老人の凄さが分かるような奴は、将来、一生のほとんどを刑務所で過ごすなんて人生は送らないんでしょうねぇ。で、これを分からないアホはムショの常連と化すか、ザコ犯罪者として後にヒーロー刑事とかに撃ち殺されたりとかするんでしょう。

危ない連中が時々顔を出すものの、割と平和的でほのぼのとした雰囲気のままストーリーが進み、その間、笑えるシーンなんかも結構出てきていたりしたんですけど、後半で急に話が深刻になってきます。
この辺り、『ミリオンダラー・ベイビー』も同じような感じだったんですけど、あの映画ほどの重苦しさは無いんですよね。ラストも、ほろ苦いという感じではなく、清々しい感動が得られるようなもので、スッキリした気持ちで劇場を後に出来る事と思います。エンディングテーマも良かったですしね。
この間の『チェンジリング』の方が、制作費もストーリーの凝り具合も上だったように思えましたけど、この『グラン・トリノ』には心にスッと入ってくるような気持ちよさがあって、もう自然と「いい映画だった」という感想が出てきますね。さらに、色んな角度から見られる奥深さというのもあるようです。
という訳で、この短期間で連続公開されたイーストウッド映画2本、どちらもそれぞれの良さがある名画でありました。


愛を奪われた男の
冷たい怒りが燃え上がる マックス・ペイン
<MAX PAYNE>

 個人的評価 35点 (50点満点中)

 ◎満足度    ★★★★☆ (見終わった後にどれだけ満足感が残ったか)
 ◎肯定度    ★★★☆☆ (この映画をどれぐらい支持したいと思ったか)
 ◎評価度    ★★★☆☆ (客観的に評価してみる)
 ◎おススメ度  ★★★☆☆ (他の人に勧めても大丈夫そうか)
 ◎映像美度   ★★★★★ (この映画ならではの評価ポイント)


2人同時プレイだぜ! <個人的感想>
マーク・ウォールバーグ主演のアクション映画ですが、実はゲームの映画化作品だったんですね。その辺の下調べを何もしてなかったんで、「クールな映像のアクション映画なんだろう」という程度の認知度で臨んでいたんで、エンドクレジットで「元はVIDEO GAMEですよ」的な雰囲気の文字を見かけるまで、「もしかしたら、またグラフィック・ノベルか何かが原作なのかな」とか思ってましたよ。
と言うのも、この映画の映像が、『300』や『ウォッチメン』といった、「ザック・スナイダーによるグラフィックノベル原作映画群」をかなり想起させるような雰囲気のものだったんですよね(あと、グラフィック・ノベルじゃないですが、『シン・シティ』や 『コンスタンティン』を思い出すような雰囲気もちょっとありました)。
オリジナルのゲームがどういうものなのかは知らないんですが、多分、『トゥームレイダー』やら『ドゥーム』みたいな感じのものなんでしょう。そういうゲームを、まるでコミック原作の映画かと思うような映像&演出で撮り上げたというのは珍しいような気がします。
アクションシーンの最中に、時折、ザック・スナイダーみたいな超スローがかかったりするんですけど、思えば、この映画の監督であるジョン・ムーアという人、『エミネー・ライン』の時はトニー・スコットみたいな撮り方をしていたり、『オーメン』の時はJホラーっぽい演出を取り入れてるようなシーンがあったりという事がありましたし、常にそのジャンルの有名所の演出を取り込んでくるというタイプの監督さんなのかもしれないですね。
こういうのをパクりなどと言われたりもしますけど、映画の映像表現は、模倣を繰り返されながらどんどん洗練されていくという面もあると思うんで、私はどんどんやっていいと思います。

さて。映像面がかなり凝っているんですが、何故か、肝心のアクションシーンというのがほとんど出てこないんです。見ていて、「あれ、この映画って、アクション映画じゃないんだっけ?」と心配になってくるぐらい、主人公マックス・ペインの“戦い”ではなく“捜査”がメインになってるんですよね。
これも、渋くてクールでハードボイルドな雰囲気があっていいんですけど、盛り上がりに欠ける展開なせいか、正直、イマイチ面白く無かったんですよね。
ですが、どうもアクションの配分をほとんど最後に固めるという作戦だったようで、クライマックスから怒涛のアクションが開始されるんですよ。もう、待ってましたの大騒ぎでしたねぇ。
で、これがまたかなり迫力のあるアクションでして、映像面の派手さや凝り具合も相当なものでしたけど、音響の方もかなり頑張ってまして、マシンガンのバリバリ音やらショットガンのズドンズドン音が、かな〜り気持ちいい事になってましたねぇ。もしかしたら、オリジナルのゲームもこんな感じの爽快シューティングゲームだったんだろうか。
ちなみに、実は中盤にもちょっとしたアクションシーンがあったんですけど、こちらは何とも普通な印象のアクションでした。と言うのも、主人公の状態が、この中盤とクライマックスとでは大きく違うからなんです。何が違うのかと言うと、簡単に説明しますと、クライマックスではあるアイテムによって主人公がパワーアップしてるんですよね。
今思うと、この「アイテムでパワーアップ」というのはかなりゲーム的なアイデアなんですけど、何故か映画を見てる時は全くゲームの事は過ぎりませんでしたね。むしろ「あの道具にはこういう使い方があったのか」みたいな感じで、伏線を活かした展開のように思えたものでした。

「アクションゲームの映画化」の中には、『ドゥーム』や『アローン・イン・ザ・ダーク』といった微妙な面子がいますが、この『マックス・ペイン』を見ると、やっぱりきちんとしたビジョンと力量を持った監督を迎えればちゃんとした映画になるんだなというのがよく分かりますね。


またまたお騒がせのクルーゾー警部が帰って来るーぞ。 ピンクパンサー2
<THE PINK PANTHER 2>

 個人的評価 43点 (50点満点中)

 ◎満足度    ★★★★★ (見終わった後にどれだけ満足感が残ったか)
 ◎肯定度    ★★★★☆ (この映画をどれぐらい支持したいと思ったか)
 ◎評価度    ★★★☆☆ (客観的に評価してみる)
 ◎おススメ度  ★★★☆☆ (他の人に勧めても大丈夫そうか)
 ◎クルーゾー大活躍&大失敗度 ★★★★★ (この映画ならではの評価ポイント)


バカ騒ぎ <個人的感想>
何か、ひっそりと公開された感のある、スティーブ・マーティンの『ピンクパンサー』シリーズ第2弾です。まあ、前作もそんな感じだったんですけど、公開前に映画館で予告編は2回ぐらいは見ていましたし、確かチラシもあったはずです。でも今回は予告もチラシも無しで(もちろん存在はしていたんでしょうが、私の目に触れない所にいたようです)、TOHOのサイトで「これから公開予定の映画」をチェックしてなかったら、公開に気付かなかったかもしれません。
ともかく、そんな状況での公開だったおかげで、内容に関しては何の前情報も入ってなかったんですよね。こういう新鮮な気持ちで映画を見る事なんてあんまり無いんで、逆に良かったのかもなんて思ってしまいます。
ただ、以前「ショウビズカウントダウン」で映像を少し見ていまして、それで具体的にどんな場面を見たのかはもう覚えてないんですけど、ジャン・レノがまた出ているらしいというのだけは分かっていました。なので、他のキャスト、ジョン・クリーズにアンディ・ガルシアやアルフレッド・モリーナ、ジェレミー・アイアンズ(チョイ役でしたけど)といった有名どころが次々と出てきた時は、「こんなに豪華キャストの映画だったのか!」と驚いたものでした。そう言えば、前作もケビン・クラインの他、ジャン・レノにビヨンセ、ジェイソン・ステイサムとクライヴ・オーウェンのチョイ役出演と、豪華な出演陣でした。
内容的には『裸の銃を持つ男』と同種の、「アホ刑事の大活躍」というタイプのものなんですけど、ギャグはあの映画ほどハジけてないんですよね。でも、「豪華キャスト」という付加価値があるお陰で、あんまり見劣りしないですね。
それに、『裸の銃〜』ほどじゃないものの、ギャグの面白さはかなりのものですし、前作の感想でも書きましたけど、下ネタが無いというのはやっぱり見易くていいです。

今回、クルーゾーは、前作での功績によってそこそこの地位と名声を得ているような感じで、世界を股にかけた大強盗事件を追う、優秀チームの一員に入れられる事となります。
事件の規模は前作よりも増した感がありますけど、ストーリー展開や雰囲気の面はほとんど前作と変わっていませんでした。前作より勝ってる点も無ければ、劣ってる面も無いという、続編として、非常に手堅い作りでしたね。なので、前作が楽しめたのなら、今回も間違いなく楽しめると思います。
ただ。今回、恋愛絡みの話が結構前面に出てくるんですけど、個人的にこれがあんまり面白くなかったんですよねぇ。だいたい、クルーゾーの色恋話なんて、みんな興味あるんだろうか。
あと、前作に比べて、クルーゾーが賢くなってるような気がちょっとしたんですよね。この手のキャラが賢くなっても、あんまり嬉しくないところですけど、まあ、「そんな気がする」という程度ですし(笑)。
でも、何故か「突飛な発想から、事件を解決に導いてしまうんじゃないか」という期待をしてしまうような面もあるキャラなんですよね。頭のいい他の国の捜査官と合同で捜査するというストーリーですけど、クルーゾーがエリート連中の鼻を明かす所を見たいと思ってしまうんです。
この手の映画の主役に、知性に関する期待を持つ事なんてほとんど無いんですけど、クルーゾーには他のキャラには無い、何かがあるんでしょうかね。普段の行動を見てると、とても理知的とは思えない、単なるアホキャラなんですけど(爆)。


楽園か荒野か──
人生を賭けた闘いが始まった! フロスト×ニクソン
<FROST/NIXON>

 個人的評価 29点 (50点満点中)

 ◎満足度    ★★★★☆ (見終わった後にどれだけ満足感が残ったか)
 ◎肯定度    ★★★★☆ (この映画をどれぐらい支持したいと思ったか)
 ◎評価度    ★★★★★ (客観的に評価してみる)
 ◎おススメ度  ★★★★☆ (他の人に勧めても大丈夫そうか)
 ◎人間ドラマ度 ★★★★★ (この映画ならではの評価ポイント)


フロスト×ニクソン&ベーコン <個人的感想>
大統領辞任後、隠居生活を送っているニクソンに、イギリスのテレビ司会者のフロストがインタビューを試みる、という内容です。
ニクソン側は、このインタビューを通して、「国民が忘れてしまった、私の良い面」というのをアピールし、政権復帰の足掛かりにしようと企んでいるんですが、その思惑通り、計4日間のインタビューのうち、3日までは完全にニクソンペースで進む事になってしまいます。
実は、この2人の「インタビューという名の頭脳戦」みたいな攻防を期待していたんですが、インタビュアーのフロストが完全に後手に回ってしまってるんですよね。やっぱり、政治家というのは、「国を良くする」よりも「相手を丸め込める」という事に長けた人種という事なんでしょうかねぇ。

さて、ニクソンの方は、インタビューを受ける事にした動機の他、内面に関する描写も多くて、その人物像というのがよく伝わってきたんですが、一方、フロストの方は、何だかいまいち掴みどころが無いんですよね。何を考えてるのか分からない所があるんです。
そもそも、何でニクソンへのインタビューを敢行しようと思ったのかも明確にされてないんですよね。ただ一点、テレビに映るニクソンが一瞬見せた“ある表情”を見てインタビューを思いついたらしい、という描写があるのみでした。
なので、ここは観客が各自で考えないといけない所なんですが、私にはよく分かりませんでした(爆)。もしかしたら、単純に視聴率が目当てだったとか、このインタビューで一発当てて大物になろうと目論んでいただけなのかもしれません。ニクソン側が、フロストを与しやすい相手だと判断したように、フロストもニクソンを見くびって戦いを挑んだだけなのかもしれません。
ですが、フロストがテレビで一瞬見たニクソンの表情から、「人間的な弱さ」みたいなのを読み取っていたんじゃないかな、という気はしました。寂しさと苦しさが混じったようでもあり、「心の奥の“何か”を吐き出してしまいたい」という思いが現れたかのようなものでもあるというような感じの表情で、これに対する興味、もしくは、つけいる隙を持っていると思ったからこそ、インタビューを敢行する気になったのかな、なんて事を思いましたね。

最終的には、ニクソンはフロストの反撃でやり込められたかのように見えるんですけど、実は、こうなる事をニクソンが心の奥底で望んでいたような節が感じられたんですよね。
フロストの反撃のきっかけになったのは、3日目終了後の夜、ニクソンからかかってきた電話での個人的な会話からでした。ここで、インタビュー時等、これまで見てきた、周囲の人の目がある時のニクソンの態度とはまた違う何かを感じた事から、反撃の糸口を思いついたように見えたんですよね(もしかしたら、最初の動機になった、ニクソンのあの表情を思い出したのかも)。
そして、面白い事に、ニクソンにはこの電話の記憶が本当に無いようなんです。電話をかけた事も話をした事も覚えていないんです。あるいは、本当に電話は無かったという解釈も出来ると思うんですが、映像で描かれているように電話があったとすると、ニクソンは夢遊病のごとく、無意識下でフロストにハッパをかけたという事になるんですよね。この3日間のフロストがあまりに不甲斐なく、これでは自分が本当にやりたい事、「心の内に溜め込んでいる膿のようなものを全てぶちまける」というのが出来なくなるので、フロストに電話をするという行動に出たのではないかと。
どうも、フロストはニクソンの事を「悪徳政治家」や「憎むべき存在」みたいな、“敵対視”をしてないみたいなんですよね。多分、アメリカ人じゃないから、一歩引いた、冷静な目で見られるせいなんだと思うんですけど、普通の元大統領と接するのと変わりないような、一定の敬意をもって接しているという印象なんです。
インタビューで対決する所でも、敵意ではなく、興味を持って臨んでいるような感じがあって、そんな相手だったからこそ、ニクソンも「この男の前なら本音を出せるかもしれない」という事を無意識下で思ったのかもしれません。インタビューが終わり、会場を後にするニクソンの態度には、周囲の側近に見られたような落胆や敗北感ではなく、むしろスッキリしたような雰囲気すら感じられましたからね。

と、あーだこーだと書いてきましたが、結局、この2人の内面に関しては全て「そうなのかも」という程度のもので、もしかしたら全部、私の勘違いや読み違いなのかもしれません。
まあそれはそれでしょうがないとして、人の心の世界というのは複雑で面白いものだな、なんて事を思わされた映画でしたね。


真実さえ、
取引されるのか。 ザ・バンク 堕ちた巨像
<THE INTERNATIONAL>

 個人的評価 33点 (50点満点中)

 ◎満足度    ★★★★☆ (見終わった後にどれだけ満足感が残ったか)
 ◎肯定度    ★★★☆☆ (この映画をどれぐらい支持したいと思ったか)
 ◎評価度    ★★★☆☆ (客観的に評価してみる)
 ◎おススメ度  ★★★☆☆ (他の人に勧めても大丈夫そうか)
 ◎巨悪に挑む熱血漢度 ★★★★★ (この映画ならではの評価ポイント)


ヤンキー座りでガン飛ばし <個人的感想>
銀行が悪い事を企んでいて、インターポールの捜査官がそれを暴こうとする、という内容のサスペンス・アクションですが、その銀行が働く悪事というのが、いわゆる陰謀の類のものでして、陰謀物の話に弱い私の豚脳では、「この悪銀行は、何を企んでいて、何をやろうとしてるんだろう」というのが理解出来なくて参ってしまいましたね。素直に、単純な世界征服でも企んでくれればいいのに。
こういう、頭のいい人達の犯罪というのは、どういうカラクリになってるのかがほんとよく分からないですね。多分、最終的な目標は「いっぱいお金が欲しい」という事なんだと思うんですけど、こういうクレバーな連中は、「強盗」みたいな、直接現金を盗み取っていく方法を使わず、「何か陰謀を張り巡らせて、懐にお金がどんどん入ってくるようにする」というような、パッと見て儲かってるのかどうか分からないような方法を使いやがるんですよね。もっと映像的に映える犯罪をしやがれと言いたくなってきますな。
ですがこの映画、とりあえず「銀行が悪事を働いている」という事さえ分かっていればそれなりに楽しむ事が出来るんです。まず、映画の主軸になっているのが、そういった巨悪に対して、徹底的に戦いを挑んでいく一人の熱血漢のドラマなんですよね。強大な敵を相手に立ち向かっていく、クライヴ・オーウェン演じる主人公サリンジャー捜査官の勇姿は、かなり迫力がありました。
で、なんでサリンジャーはそんなにまで銀行と戦おうとするのかと言いますと、かつて、銀行相手に戦いを挑んだ際(この時は、普通に、職務として不正を暴こうとしていただけだったんでしょうね)、仲間や関係者を皆殺しにされていたからのようなんです。
実は、この銀行に対して捜査をしていたり、内部告発をしようとしていたりした人間が次々と消されているんです。腕利きの暗殺者まで雇っていて、劇中でも、狙撃から毒殺、襲撃など、あらゆる手段で人殺しをしてくるんですよ。もう、マフィアもビックリなバイオレンスっぷりでしたねぇ。銀行というのは、てっきり、お金を預ける所なのかと思っていたんですが、実は、人殺しを全く厭わない、悪の帝国みたいな存在だったんですねぇ。
これまでに映画で描かれた“敵の組織”と言えば、テロリストに麻薬組織、そして政府なんかが主でしたけど、ついに、金融機関もその仲間に入るようになったんですね。
ただ、見せ場の大銃撃戦シーンにおいて、敵の殺し屋集団が、周囲にいる一般人はちゃんと区別して狙わなかったのは面白いなと思いましたね。悪の帝国配下の殺し屋部隊でも、マフィアみたいに、殺人に対して流儀的なものを持っているんですね。

ところで、中盤頃に、敵の暗殺者の正体を追っていくという展開になって、潜伏先と思われるニューヨークで地元の刑事と協力して捜査をする事になるんですけど、ここでの、「いかにもプロっぽい連携捜査っぷり」が何か妙にカッコ良かったですね。
何か、こういう場合に出てくる地元警察とかって、主人公の引き立て役みたいな感じの、アホっぽい連中が出て来がちだと思うんですけど、ここでサリンジャーに協力する2人の刑事が、何と言うか、普段リアルに活躍している姿が目に浮かぶような、「頼もしいベテラン刑事」みたいな感じなんですよね。単なる脇役連中なんですけど、まるで、重要な脇役であるかのような印象が与えられていて、「細部まで抜かりの無い映画なんだな」なんて事を思って感心したものでした。


世界が「独裁者」に従っていた時
彼は「良心」に従った ワルキューレ
<VALKYRIE>

 個人的評価 32点 (50点満点中)

 ◎満足度    ★★★★☆ (見終わった後にどれだけ満足感が残ったか)
 ◎肯定度    ★★★☆☆ (この映画をどれぐらい支持したいと思ったか)
 ◎評価度    ★★★☆☆ (客観的に評価してみる)
 ◎おススメ度  ★★☆☆☆ (他の人に勧めても大丈夫そうか)
 ◎トム様度   ★★★★★ (この映画ならではの評価ポイント)


ヒトラーのラフプレーに大量のイエローカード出現! <個人的感想>
私はあまり歴史には詳しくないんですが、とりあえず、ヒトラーの最期は暗殺ではなかったと記憶しています。
それに、この映画の主人公、トム大佐(←長い名前なので、省略してこう表記させてもらいます・笑)と、この“ワルキューレ作戦”に関しては、ドイツ国内では有名なものの、世界ではあまり知られていないというじゃないですか。
と言う事は、トム大佐によるヒトラー暗殺計画は失敗に終わる、というのがもう映画を見る前から分かってしまってるわけですよ。なのに、聞くところによると、「果たして、この作戦は成功するかどうか」みたいな感じのサスペンス・スリラーという内容になってるとの事。
こんなので映画として成り立つのかと思うものの、当然、そういうのも全て計算済みなんでしょうね。で、敢えてこういう内容の映画として作ってくるという事は、製作側にはそれなりの勝算というのがあるのに違いない。
それに、考えてみれば、映画の冒頭にラストの展開を持ってきて、本編で「冒頭で提示されたクライマックスに、いかにして到達するのか」という事を語っていく映画とかもありますからね。
だからこの映画は、「どういう結末になるのか」ではなく、「その結末になるのに、どういう過程があったのか」という所に面白味やメッセージがあるのだろうと、見る前はこんな予想を立てていたんですが、見てビックリ。何と、「トム様のスター性がいかに凄いものかを再確認する映画」になっていたんです。
・・・いや、実際は当初の想像通りの映画ではあったんですけど、でも、そういった、ドラマ性やらメッセージ性が全て、トム様の光り輝くスターオーラの前に目が眩んでよく見えなくなるぐらいのトム度だったんです。多分、実在の人物である主人公の大佐に惚れ込んだトムが、全身全霊を込めて演じたものだからこんな事になってしまったんでしょうねぇ。
でも、どうもこの映画の一番の目的は、「ドイツにこういう凄い人がいた」というのを世界に知らしめる事にあったんじゃないかという感じがしたんですよね。実は、ドラマを描く事よりも、人物紹介がしたかったのではないかと。そう思うと、トム大佐が一人輝いて見えるのも全て計算通りなのかも、なんて事を思ってしまいます。
あと、「当時のドイツ=全てナチの悪党」と思いがちですけど、トップが腐ってるだけで、中にはちゃんとまともな人間もいたんです、というのを訴えるという目的もあるのかもしれないですね。これは、当時のドイツに限った事ではなく、今現在、あなたや私が憎んでいる国があったとして、その国に住む人全員が悪人というわけではないんだよという、言ってみれば当たり前の事を改めて語っているという面もあるのかもしれません。

ところで、トムは以前、日本を舞台とした『ラスト・サムライ』という映画に主演しましたが、今回はドイツを舞台にした映画です。日本もドイツも、アメリカにとっては以前は敵国だった連中ですよ。そこを、「その国の人にとってはよく知られているが、他の国にはあまり知られていない」という、“武士道”や“ドイツ人将校によるヒトラー暗殺計画”を描いた映画を、自分のような大スター主演の世界配給映画として製作する、というのには何か考えがあっての事なんでしょうかね。
何だか、「自国のいい面を世界規模で宣伝してもらってる」とも思えてきて、思わず、トムの好感度も上がっていってしまいそうなものですが、どうもドイツはそれが気に食わなかったのか、製作の段階から色々とイチャモンをつけてたみたいですね(笑)。
まあ、今回は『ラスト・サムライ』みたいなオリジナルストーリーではないですし、しかも登場人物が英語で会話したり、主要キャストにドイツ人がいなかったりとかしてましたからね。ドイツに対する配慮がもっとあれば、文句も言われなかったのかもしれませんな。もし次に、ロシアかベトナムの映画を作る時があったら気をつけてもらいたいものです。

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知ってはならない、真実がある──。 ウォッチメン
<WATCHMEN>

 個人的評価 50点 (50点満点中)

 ◎満足度    ★★★★★ (見終わった後にどれだけ満足感が残ったか)
 ◎肯定度    ★★★★★ (この映画をどれぐらい支持したいと思ったか)
 ◎評価度    ★★★★★ (客観的に評価してみる)
 ◎おススメ度  ★★★☆☆ (他の人に勧めても大丈夫そうか)
 ◎ビジュアル度 ★★★★★ (この映画ならではの評価ポイント)


コスプレ戦隊、ウォッチメン! <個人的感想>
一応、ヒーロー物の映画ですけど、話の暗さや重さ、難しさが「『ダークナイト』と同等かそれ以上」という噂を聞いていたんで、「もしかしたら、私が見て面白い映画ではないのでは」とビビりながらの鑑賞でした。
恐らく、作品のテーマを読み取って、観客が各自で考えながら見ないといけないタイプの映画だと思うんですけど、幸い、クールな演出の格闘シーンなんかが出てきたりと、娯楽方面もそこそこ押さえられていて、「ミステリー風味のストーリーの、マニアックなSFファンタジー系映画」として普通に楽しむ事が出来ました。
多分、この映画を完全に理解するには、アメリカの近代史の知識他、ある程度の教養を必要とすると思われる手強さで、正直、私もよく分からなくてスルーしてる箇所がいくつかあったりしました。でも、そういう、意味の分からないような場面があるにも関わらず、面白く見る事が出来たんですよね。
これは、『ガンダム』や『スター・ウォーズ』のような、専門的な用語がバンバン飛び出してくるお話を、それらを理解してないまま見ても面白く感じられるのと同じような事なのかもしれません。
時々、ついていけないぐらい意味不明な方向に話が進む事もあるんですけど、そのすぐ後に、比較的分かり易い展開が出てきてくれるんですよね。一歩間違えたら、「小難しい映画を撮って悦に入ってやがるんだな、この監督は」と、映画への興味が失せかねない所ですが、いいバランスで話が展開していくんです。
あと、独特の設定や世界観などがある映画なんですけど、それらの説明が小出しにされていくんですよね。なので、前半部分は分からない事がかなり多かったんですけど、監督のビジュアルセンスのおかげで、退屈するという事が無いんですよね。もう、とにかくカッコよくてクールな映像で、作品世界へ惹きこまれていくかのようでした。
で、ストーリーが進むごとに段々と各キャラクターの説明もされ、世界観への理解も高まっていき、当初はよく分からなかった所も分かるようになってくるんです。この、まるで謎がどんどんと解明されていくかのような展開は、見てて引き付けられますね。そう言えば、この間の『7つの贈り物』もこういう感じのストーリー運びでした。
徐々に説明がなされていくウォッチメンのメンバーも、それぞれ非常に魅力的でしたね。あと、原作を知らないから言えるのかもしれないですが、キャスティングも絶妙でした。それぞれのキャラクターに合った容姿の人をキャスティングしてるかのような感じで、何と言うか、非常に、“似合ってる”んですよね。
“世界一の天才”のエリート貴族っぽさなんて、見てて惚れ惚れするぐらいでしたし、“バットマンもどき”がヒーローに似つかわしくない普通っぽい顔立ちなのもキャラクターをよく表していましたし、“ピチピチ衣装の女”も、顔つきから体つきまでエロくて最高でした。
唯一、一回見ただけで名前を覚えられたロールシャッハ(みんな“ロールシャック”と発音してましたけど・笑)は、ほとんど素顔を出さなかったですけど、アンチーヒーローな感じの立ち居振る舞いは渋くて実にカッコ良かったです。やっぱり、キャラクターの魅力がしっかり出てると、ストーリーに入り込み易いですね。

見事なビジュアルセンスで描写される映像と、魅力的なキャラクターが織り成すドラマによって描かれる独特の世界観には虜になってしまいますね。上映時間の長さも気にならないぐらいで、映画が終わっても、「もっとこの世界に浸っていたい」と思ってしまうぐらいでした。少々マニアックで敷居が高い雰囲気もありますけど、そこも逆に魅力に思えてきます。
そして、こんな映画なのに、アクションシーンの振り付けが、「攻撃の後に、決めポーズ的な硬直を入れる」という、いかにもヒーローな感じのものになってるのが実にいいです。多分、このウォッチメンの方々というのが、元々、コミックヒーローに憧れて、コスプレ自警団を組織してるみたいな連中だから、あんな動きで戦ったりするんでしょうね(コスチュームも、どこかで見たような雰囲気のものが多いですし)。 一見、映画的な振り付けなんですけど、意外と現実味のある動きなんじゃないかな、なんて事を思ってしまいました(ただ、ヒーロー達の戦闘能力の高さは実にマンガ的でしたけどね・笑)。


それは、今まで
誰も気づかなかった
幸せになる方法 イエスマン “YES”は人生のパスワード
<YES MAN>

 個人的評価 50点 (50点満点中)

 ◎満足度    ★★★★★ (見終わった後にどれだけ満足感が残ったか)
 ◎肯定度    ★★★★★ (この映画をどれぐらい支持したいと思ったか)
 ◎評価度    ★★★★★ (客観的に評価してみる)
 ◎おススメ度  ★★★★☆ (他の人に勧めても大丈夫そうか)
 ◎「やっぱりジムは凄い!」度 ★★★★★ (この映画ならではの評価ポイント)


キャリー・ポッター <個人的感想>
「やっぱり、ジム・キャリーはコメディ界の帝王だ」と改めて思わされるような、実に素晴らしい映画でしたねぇ。大変面白かったです。
ただ、映画が始まってしばらくの間は、ジム自身も映画そのものも、何かテンションが低めという感じで、見ていてあんまり面白さが感じられないんです。それこそ、「ジムが落ち目だからこんなに面白さが足りなく感じられてしまうんだろうか」と心配になってくるぐらいでした。
でも、ジム演じるカールが“イエスマン”になってから、エンジンが掛かりだしたみたいに、俄然面白くなってくるんです。
ストーリー的にも、ここからカールの人生が劇的に変化していくわけなんで、「カールが自分の人生をあまり面白いと思っていない」という頃は映画自体もあまり面白くなく、カールが人生を謳歌し始めてから、映画も面白くなっていくんです。この、敢えて面白さの落差を付けているかのような演出は、今思うとかなり面白いものでしたね。そういう演出だと分かる前は心配させられましたけど(笑)。
ジムのコメディ演技もかなりハイテンションになってきて、お馴染みの顔芸まで飛び出すぐらいです(残念ながら、全盛期ほどの凄さは無いですけど、もうこちらもそれを期待してないですからね)。
それも、ただテンション高くはしゃいでいるというわけではないんですよね。「ジムが何かアクションを起こすと、場の空気自体が笑いの雰囲気を醸し出し始める」みたいな感じで、もう、見ててごく自然に「面白い!」と思えてくるんです。
一流コメディ俳優は、動きや表情、セリフ(喋り方とか)の面白さが他の人よりも抜きん出ていると思うんですけど、この人の場合、そのどれかが凄いのではなく、全部凄いんですよね。
なので、ジムがコメディ演技で笑いをとるシーンなんかが、私には「ジム・キャリー劇場」が始まったように思えてくるんです。で、この劇場内では、ジムが何をやっても私は笑ってしまうんですよね。まさにスベり知らずですよ。
人によっては、オーバーな演技に思えたり、クドくて気持ち悪いと思ったりという事もあると思いますけど、私の感性ではパーフェクトに見えるコメディ演技なんですよね。

さて。「全ての事に“イエス”と答えていくと人生が変わる」というお話なんですが、元々イエスマンが多いと言われるこの国に住んでいると、その説には納得も賛同も出来かねるものがあります。むしろ、イエスと答えれば答えるほどストレスが溜まっていくみたいな状況ですからね。
劇中でカールに巻き起こる「イエスと言ったおかげで訪れた幸運や転機」なんかも、見てて「こんな事、実際に起こるわけあるか」と思うようなものがほとんどですし、何よりも、全てにイエスと答え続ける生活を全く苦にしないカールのポジティブさとタフさは、もはや人間離れしてるように思えるぐらいのものでした(あと、ある程度の財力も無いと続けられないものでしたし・笑)。
でも、これはコメディ映画なんですから、そういう誇張があってもいいですし、何よりも、イエスと答え続けるだけで幸運が舞い込むという展開が見てて面白くてしょうがないんです。もう、気持ちがいいぐらいでしたからね。
さらに、そのストーリーの中心でコメディ演技をしているのがジム・キャリーなので、このストーリー展開に対する疑問や懐疑心などが全て笑いに変換されていくんです。 と、笑える一方で、イエスと答えるという事は関係なく、「とにかく前向きに生きていれば、人生はこんなに楽しくなる」という事が教訓として伝わってくるような展開なんですよね。
実は、イエスマンになる前のカールの考え方は、私の普段の生き方とかなり似通った部分があるように思えまして、序盤のカールにはかなりの親近感を覚えたものでした。そして、そんなカールが人生に対して前向きになった事で、全てが良くなっていく、というのを見ていると、「もしかしたら、私の人生も楽しく出来るのかもしれない」とか「世の中にはこんなにも楽しい事がいっぱい転がってるのか」といった事が感じられて、映画を見終わった後は本当に幸せな気分になれたものでした。
あと、イエスマンと化したカールがやる行動の多くが「善行」というのも面白いですよね。現実には「何にでもイエスと答える」=「人助けをする事になる」なんて事にはあんまりならないと思うんですけど、この映画では「イエスマン」=「ナイスガイ」になるんです。それだけ、世の人々は他人に助けを求めているという事なのかもしれないんですけど、やっぱり、善行が多く出てくるストーリーというのは見てて爽やかで気持ちがいいものですからね。

ところで、カールをイエスマンにするきっかけを作るセミナーですけど、これがまた、かなり怪しげなものなんですよね。ちょっとしたカルト宗教みたいな感じで。セミナーを主催するテレンス・スタンプの、カールに対する強引な説教とか、見ててほんと厄介だなと思いましたよ。
そして、そんな怪しい教えにまんまとハマりこんでいくカールの姿には、ちょっとだけ空恐ろしいものも感じられたりしたものでした。何だか、洗脳されてるみたいな気持ち悪さがあって(実際、この教えに縛られていく、という展開になっていくんですけど)。
で、こういう教えを広めてる連中や、それにハマってる奴らとか、現実には絶対近寄りたくない輩だなとか思ったんですけど、でも、この教えによってカールは確実に人生が上向きになったわけですし、基本的には、他人に迷惑を及ぼすような教えではないはずです。たまに暴走する奴が出てしまうみたいですが(銀行のガラスを割ったりだとか)、先にも書いたように、カールは人助けをする機会が大幅に増えましたからね。
この、イエスマン教に限った話ではなく、この世の全ての「これに出会ったおかげで幸せになった!」というもの全てが胡散臭く思えてしまい、そしてそれにハマって幸せを感じてる人達を、まるで頭がおかしくなったかのように思ってしまう、というのは、考えてみればおかしな話ですよね。何だか、他人が幸せな事を妬んでいるともとれる考え方ですし、そもそも「幸福の追求」というのは、国民に与えられた権利のはずじゃないですか(それはアメリカの話だったか・笑)。
この映画のテーマとは関係無い方向の話だと思うんですけど、「何かにすがって、幸福を感じている人」を胡散臭く見てしまうのはよくないんじゃないかな、なんて事を思わされた映画でもありましたね。


すべては、ここから始まった。 アンダーワールド:ビギンズ
<UNDERWORLD: RISE OF THE LYCANS>

 個人的評価 35点 (50点満点中)

 ◎満足度    ★★★★☆ (見終わった後にどれだけ満足感が残ったか)
 ◎肯定度    ★★★☆☆ (この映画をどれぐらい支持したいと思ったか)
 ◎評価度    ★★★☆☆ (客観的に評価してみる)
 ◎おススメ度  ★★☆☆☆ (他の人に勧めても大丈夫そうか)
 ◎1作目をより楽しめるようになる度 ★★★★★ (この映画ならではの評価ポイント)


主役に昇格して大ハッスル! <個人的感想>
普通、プリクエルとかスピンオフとかって、主役か、あるいは、主役並の人気を持っているキャラを使って作られるものだと思うんですけど、この映画の場合、何と、一作目の脇役が主人公の話なんです。ポスターでいかにも「私が主演よ」と言わんばかりに写っているセリーンもどきですら脇役というポジションですよ。
もう、この時点でかなりの驚きでしたね。こんな無茶とも思える企画が通るほどの人気シリーズだとは思ってなかっただけに。
ただ、主演のマイケル・シーンという人、『クィーン』でのトニー・ブレア役で評価されていたり、最近も『フロスト×ニクソン』に主演していたりと、ここ数年上り調子の人だったみたいですね。もしかしたら、今回ルシアンが主役になったのにも、「マイケル・シーンが演じていたキャラだから」というのもあったのかも。

さて。私もこのシリーズは好きなんですけど、それは、ストーリーや世界観が好きだから、と言うより、ケイト・ベッキンセールのセリーンがたまらなく魅力的だから、というのが一番の理由になるんで、正直、ベッキンが出ないこの映画を楽しむ自信があんまり無かったんですけど、そんな私でもそれなりに楽しめる映画になっていて一安心でした(ただ、直前に、今年最大級の地雷映画『ドラゴンボールE』を見ていたから、というのもあるかもしれない・笑)。
まず、基本となるストーリー展開が、狼男ことライカンの主人公と、セリーンにそっくりなヴァンパイアの女との「禁断の愛」というものなんですけど、この「身分も立場も、種族すらも違う」という2人の愛のドラマが中々面白かったですね。割とよくあるタイプの話ではあるんですけど、その「基本に忠実」な所は安心して見ていられて、実にいいです。
また、主人公含むライカン達は、ヴァンパイア達から奴隷としてこき使われているという身分なんですが、最終的には反旗を翻していくわけです。で、こういう「奴隷解放」の話も割とよくあるタイプの話じゃないですか。
こういう、お馴染みの展開が軸に入ってる事で、ストーリーが分かり易いですし、のめり込み易いんですよね。もしかしたら、シリーズ中でも、一番間口が広い映画なんじゃないのかと思ったものでした。
思えば、私はこのシリーズは『2』から入ったんですけど、『1』を飛ばして見た『2』はさっぱり意味が分からない内容でした。でも、今回の『ビギンズ』は、シリーズ未見の人でもちゃんとストーリーについていけるような作りになってるようですね。
そして、これが『1』の前の話という事で、ラストには、このままストーリーは『1』に繋がっていくという事を匂わされていたりするわけですよ。こうなると、すぐに続きこと前作が見たくなってしまうんですけど、でも、ここで続けて『1』を見てしまうと、さっきまで主役を張っていたキャラが、終盤のつまらない所で死ぬのを見るハメになってしまうんですよね(笑)。
今回の主役のルシアンというキャラ、『1』を見た時はそれほど重要とは思えないような奴でしたからねぇ。そもそも、私は『ビギンズ』の主役がコイツだとは見るまで知らなかったので、最初に姿を見た時、「ああ、そういえばこんな奴が出てた気がするな」ぐらいの事を思ってしまってました。
ただ、『ビギンズ』の後に改めて『1』を見ると、「ルシアンにはあんな壮大な過去があったんだなぁ」とか思えてきて、何だか、ストーリーに奥行きが出てきたように感じられてきます。
そして、かつて愛した女に生き写しのセリーンの姿を見た時の反応に、『1』だけを見ていた時は気付かなかったような、「驚き」のようなものが出ているように思えてくるんですよね。まあ、ルシアンとソーニャの関係と、ソーニャとセリーンが似ている、という話は『1』でも出てくる話なんで、セリーンを見て驚く素振りを見せるというのは必然的な描写とも言えるんですけど、『ビギンズ』を見るまでは、ルシアンとセリーンは単なる敵同士みたいな認識でいましたねぇ。
何か、今となっては、この2人に何のドラマも絡みも無かったのが非常に寂しく思えてきますね。ただ、セリーンにマイケルを噛むように促す所に、かつて叶えられなかった夢を託してるかのように感じられてきて、『1』のクライマックスがより劇的に思えてきます。

何か、『ビギンズ』の感想と言うより、『1』の感想みたいになってきましたけど、多分、『ビギンズ』の1番の強みは、“『1』をより深く楽しませる効果が含まれている”という所にあったんじゃないかという気がしてきましたね。


別次元の『ドラゴンボール』を目撃せよ。 DRAGONBALL EVOLUTION
<DRAGONBALL EVOLUTION>

 個人的評価 22点 (50点満点中)

 ◎満足度    ★★★☆☆ (見終わった後にどれだけ満足感が残ったか)
 ◎肯定度    ★☆☆☆☆ (この映画をどれぐらい支持したいと思ったか)
 ◎評価度    ★☆☆☆☆ (客観的に評価してみる)
 ◎おススメ度  ★★☆☆☆ (他の人に勧めても大丈夫そうか)
 ◎やっちゃった度 ★★★★★ (この映画ならではの評価ポイント)


激闘!!(笑) <個人的感想>
私は、ハリウッドの「娯楽映画作りの実力」というのを信頼しているので、『ドラゴンボール』の実写化に手を出してしまったと聞いた時も、予告編を最初に見た時も、「きっと、完成版をこの目で見れば、さすがハリウッドだと思うような快作になってるに違いない」と思っていました。
過去に、『スーパーマリオ』や『ストリートファイター』といった問題作もあったりしましたけど、それらを教訓に出来る今、同じ失敗を繰り返すわけはないと。
と、思いながらも、正直な所、かなりの不安感を持って見に行ったわけなんですけど、いやぁ、参りましたね。思わず、「や、やってしまった・・・」という声が漏れてしまいそうな、まさに“過去の悪夢再び”な映画になってしまっているじゃないですか。
もう、「いったい、何でこんなに無理してまで『ドラゴンボール』を実写化しないといけなかったんだろう」というのが不思議でしょうがないです。

ただ、私は原作から改変されてる箇所については別に問題無いと思うんです。例え、アメリカ人が“孫悟空”なんて名前で出ていようが、悟空が高校生という設定だろうが、そんなのは、「映画版ならではの設定」という事で納得出来るんです。そもそも、悟空がイケてない高校生活を送っているという設定は面白いと思いました。思えば、原作でも悟飯にそういう時期がありましたからね。「本当は超人なのに、それを隠して学生生活を送らなければならない」みたいな。
では何が気になったのかと言いますと、この手の映画の一番の見所であるはずのアクションシーンが、ほとんど見せ場として機能してないぐらいのレベルだという事ですよ。
多分、悟空役の人もかなりの訓練を積んで、それなりのアクションを見せてると思うんですけど、冒頭以外のほぼ全てのアクションシーンが何故か暗闇の中で行われていて、アクションに参加してるキャラクターがどんな動きをしてるのかすらほとんど見えない状態なんですよね。
あと、「クライマックスのアクションでCGに頼りすぎる」という、他の大作アクションでも時々見かける手法を使ってきてしまいましたし、もう、「何でこんな事になってしまったんだろう」と頭を抱えずにはいられない有様でしたよ。
ストーリー面やキャラクター描写に関してもイマイチな面が多かったんですけど、私としては、見せ場のアクションさえきっちりしてれば十分だったんです。『ドラゴンボール』のアクションを実写にするなんて、結局のところ「香港アクション+VFX」という『マトリックス』みたいな事をやればいいだけじゃないですか。これこそ、近年ハリウッドが得意としてる分野のはずなのに、なんでそれが肝心の『ドラゴンボール』実写版で出来ないのかと。
これは、絶対、プロデューサーがスタッフの人選を失敗したとしか思えないですね。特に、監督の人選は完全なミスとしか思えません。「『ドラゴンボール』のようなマンガを映画にする」という事に関しての映像面へのこだわりが無さ過ぎです。『ドラゴン・キングダム』の人が監督だったら良かったのに(あの映画にも孫悟空が出てたんで・笑)。

これが、『雷神』みたいに「酷過ぎて笑える」という所まで達していれば、私も「違う意味で面白い」という方向で楽しむ事が出来たんですけど、そこまでは行ってないんですよね。何かが足りないおかげでつまらない映画になったけど、その何かがあればそれなりのものにはなっていたんだろうなという感じで、駄目さ加減が微妙なんですよね。「完全な駄作だ」とケナすわけにもいかず、かと言って面白くもないという、もう、この映画に対してどう接したらいいのかが分からないです。


あなたなら、受け取れますか? 7つの贈り物
<SEVEN POUNDS>

 個人的評価 34点 (50点満点中)

 ◎満足度    ★★★★★ (見終わった後にどれだけ満足感が残ったか)
 ◎肯定度    ★★★★☆ (この映画をどれぐらい支持したいと思ったか)
 ◎評価度    ★★★☆☆ (客観的に評価してみる)
 ◎おススメ度  ★★☆☆☆ (他の人に勧めても大丈夫そうか)
 ◎賛否両論度 ★★★★★ (この映画ならではの評価ポイント)


「今年のお中元、どうすっかなぁ・・・」 <個人的感想>
「最も稼げる男」ウィル・スミスが主演なのにコケたという前情報があり、しかも評価の方も賛否両論。なので「もしかしたら、あんまり面白くない映画なのでは」と警戒していたんですが、ラストではまんまと号泣してしまいましたねぇ。いい映画でした。

まず、映画の構成が面白かったですね。主人公が何者で、何を目的として行動しているのかがよく分からないんですけど、これはもちろん、敢えて謎を残した描き方をされてるわけです。
「主人公は分かってるのに、見てる側は何だか分からない」という状況になるわけなんで、下手したら見ててストレスを感じかねない手法なんですよね。本来なら観客が知っておくべき情報が隠されているんですから、「意味が分からねぇよ!」とか「出し惜しみしやがって!」とか思いかねないところです。
でも、主人公の謎に対してうまく興味を持たせられるようなストーリー運びになってるんですよね。そして、ちょっとづつ謎が解けていく所に面白味が感じられるんです。

主人公の計画は謎ですが、冒頭で、何かに対して後悔してる事は示されてきます。なので、それに対する贖罪か何かが目的なのだろうなというのは想像がつきます。
そして、その後に出てくる主人公の行動が「人助け」。何を考えてるのか不明の、心に深い傷を負ってるらしい謎の男が、知り合いでもない人達に善行を施していく、という展開になるんですけど、何だか、この設定だけで映画が深いテーマを持ってそうな気がしてきてしまいます。
さて、そのベールに包まれた主人公の計画と、ラストの展開ですが、実は私、映画を見る前からだいたい想像がついてました。本編を見る前に、先に見た人の感想を2つ3つ目にしていたんですけど、この映画に対して、ちょっとでも踏み込んだ感想を書こうとすると、どうしてもネタバレのヒントを出さざるを得なくなってくるんですよね。
なので、その感想と、映画の前半までの展開を見ればもう、容易に予想がついてしまいました。ただ、予想がついたのは大まかな部分だけで、実際に映像やセリフで語られるところを見るまでは不明な部分というのも結構残っていました。なので、ラストではまんまと衝撃を受け、感動するなんて事になってしまいましたねぇ。なんていい客なんだろう(笑)。

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